あらすじ
「生きていればこんなめにもあう」。理不尽なことも呑み込まなければ「普通の人間」は生きていかれない。22歳で召集、フィリピン、ビルマ、カンボジアなどを転戦、ラオスの俘虜収容所に転属され敗戦となり戦犯容疑で拘留。著者の冷徹な眼が見た人間のありようは、苛烈な体験を核に、清澄なユーモアと哀感で描かれた。芥川賞受賞の表題作ほか「白い田圃」「蟻の自由」「七ヶ宿村」など代表作9篇。
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Posted by ブクログ
感想を書くまでにすこし時間が空いてしまった。9篇あるなかで、どれも戦争を題材にし、フィリピン、ビルマ、カンボジア等の戦場での戦いの様子や戦犯容疑で拘留されたという自分の経験を書いている。作品のうち経験の重なっているものがあり、実体験を小説に落とし込むときの取捨選択というものを、九作品を読んだからこそ見れた気がした。戦争当時に自分の見た戦場の風景をこんな風に整理して書けたのはすごい。
プレオー8の夜明けがやはり一番よかったように思われる。戦犯容疑で拘留されている主人公たちの監獄での様子を描いたもので、戦争を古山高麗雄が描こうとするときに一番適した枠組みだった気がする。
結婚して四十年経った妻との七ヶ宿村という作品が最後に載っていて、作品としてはすらっと読んだものの、中に描かれている夫婦の関係がおもしろかった。ここに焦点を当てた古山高麗雄の作品が他にもあったら読みたい。