あらすじ
転籍人事にかちんときた実力副社長、リストラを完遂した途端に自分の首を切られた人事部長、合併銀行の派閥を背景にした熾烈な社長レースなど、「非情人事」を拝命した企業人の複雑な思いと行動を、鮮やかな筆致で描いた短編集。
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Posted by ブクログ
江上剛さんが著した短編集。
銀行に勤めていた著者。銀行というところは非常にドライに捉えられがちな業種ではあるが、その実、減点主義であったり人事制度については非常にウェットなところがある。その中枢部で活躍してきた著者だからこそ描ける、企業内外に絡まる人事、駆け引き、情実。そういったところを、シチュエーションの違う五編の短編小説にまとめている。
そこに通底するのは、企業によるドライな人事と、それを甘受しようとする組織人の葛藤。そしてたとえその人事が間違っていたとしても、従わざるを得ない現実。しかし最後に大逆転劇までは行かないが、ささやかな反抗を潜り込ませる辺りが、著者の人間に対する望みというか希望を表している気がしてならないし、そこが江上ワールドの支持される理由なのだと思う。
非情に面白い。