感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
読書備忘録550号。
★★★★★。
物語はメールのやりとりから始まる。
クサヴァー・ザントなる男性から、マチルダ・カミンスキなる国語教師へ。どうやら、学生時代恋人の間柄だったようだ。
クサヴァーは売れっ子作家で、マチルダが教師を勤める学校で創作ワークショップにゲスト講師として招待されるという構図。クサヴァーはマチルダとの再会を楽しみにしているのだが、一方のマチルダは過去の恨み事を書き連ねる。
16年間付き合っていたにも関わらず、ある日突然クサヴァーは消える。そして、別の女性と結婚したことがスクープされた。マチルダはその事実を受け入れらず長年苦しんできた、ということらしい。
小説の構成は「ワークショップ前に二人が交わすメール」「二人の過去」「ワークショップの前日の再会」「そして二人の新たな小説の創作」という4つの場面が繰り返し切り替わる。それぞれは短く、飽きさせない構成。引き込まれます。
そして、この物語の重要な役割として物語があります。クサヴァーを売れっ子作家にした「天使三部作」。この作品はクサヴァーとマチルダの共同作業で創作されたようだ。だから尚更切り捨てられた恨みは大きい。
そして、再会して二人は自分たちの体験をベースに構成される「国語教師」という作品を創作する会話を楽しむ。昔に戻ったかのように二人の会話は弾む。
そして、悲しい結末・・・。
この作品のテーマは愛、裏切りと憎しみ、そして愛と死。
いやはや、久しぶりにこういうのを小説って言うんだよな、という作品に出会えました。
新聞の書評って重要。
Posted by ブクログ
かつて恋人どおしだった作家のクサヴァーと国語教師マチルダ。
マチルダの勤めるギムナジウムで開催を希望した「生徒と作家の出会い」ワークショップで2人は偶然の再会を果たすことになる。
再会までのメール、過去の2人の過ごした時間、再会後の2人の会話、2人の語る自作の物語で構成される本書は結末に至るまでの紡ぎ方、真相の剥ぎ方が秀逸。
歪んだ狂気、怨念すら感じる前半のマチルダ。
その不気味さは後半で次第に矛先が変わり、終盤では物語の根底自体が二重底だったことが明らかになる。
ダニット系のミステリではないので真相の意外性は強くないもののサスペンス的な要素を十分に備えた、愛と決断をテーマとしたドラマを描いた良書。
Posted by ブクログ
謎解き部分は浅い、これじゃミステリーじゃないやん…と思った。しかし、実は謎解き部分がミステリー核心じゃない、犯人捜し事件の真相に迫っていく2人のやりとりの過程と結果が見事な、実に見事なミステリーという…
自分でも何を言ってるのかよくわかってないが、とにかくこういう機軸でミステリーを構成できるのか!とビックリさせられた1冊。しかも技巧だけではなく、感動の恋愛小説としてもきちんと読めるのがすごい!
日本人だと、湊かなえあたりがこういう小説を書きそうだが(もう書いてるかもしれない、読んでみたい)、ほんと上手いなぁ、と思った。
Posted by ブクログ
思っていたのと、いい意味で全然違っていて、まずは読んで良かったです。新しい作家さんとの出会いを嬉しく思います。
元恋人同士の男女の再会。男の方が正直最低で、何だこの男という感情を最後までぬぐいさることができなかったです。それにひきかえ女性(マティルダ)のなんと献身的というか最後まで無償の愛を貫いたというか…。感動のあまり昼休みなのに泣いてしまいました。途中、子供の誘拐のくだりはほんとにやったのかとゾッとしつつも、そのくらいしても当然!よくやったとさえ思いましたが創作でしたね。なんというイマジネーション!マティルダという女性の素晴らしさが心に残る1冊でした。
自分のモティーフはなんなんだろうとちょっぴり考えましたが、分かりませんでした。
Posted by ブクログ
文芸ミステリと帯にもあるが、文芸色が強いためか私のミステリ新作探しの網にかからず危うく読み逃してしまうところだった。
昔の恋人に執着する度合いは男の方が強いらしいが、納得させてくれる内容だった(個人差があります)
両親、祖父母の人生をたどる中でのさまざまな人びとの家というものへの執着、あり得たはずの人生への執着、物語への執着…ねちっこく普通ミステリではここまで深掘り出来ないだろうというところまで描いているところが文芸ミステリと言われる所以か。
読めて良かった。
Posted by ブクログ
過去に恋人だった男と女が十数年後に偶然(?)出会い過去の感情のすれ違いや事件についてメールのやり取りや語り合いを重ね、そして真実を知ってゆく。
Posted by ブクログ
16年ぶりに再会した50代の元恋人同士の二人。
男は再会に喜び浮かれ、女は男の不実な過去を蒸し返しては男を責める。
初めは、いい歳して大人げない…と国語教師の女の態度に呆れた。
けれど二人の過去を少しずつ紐解き、未解決の暗い事件の謎解きをする内にぐいぐい引き込まれる。
二人が語っているのは架空の物語なのか、それとも真実なのか。
そして二人で創り上げた物語『国語教師』。
事の真相に驚かされると共に、二人が辿り着いた結末に驚かされた。
若い頃に決断した選択に後悔し懺悔する男の浅はかさには呆れるけれど、何故か憎めきれない女。
そんな女の気持ちが痛いほど伝わる。
そして胸に秘めた僅かばかりの希望。
その希望を果たした二人の姿にちょっと泣けた。
それは紛れもない二人だけの真実。
全くしょうがない二人…でも良かったね、と二人のラストに安堵した。
とても切ない物語だった。
Posted by ブクログ
読んでいて、とても不思議な感覚。
”再会前に2人が交わすメール” ”2人が付き合っていた頃(過去)” ”再会しての会話” ”2人が互いに語る物語” の4つの場面(時間)が入れ替わり立ち替わり現れるので、時系列と虚実があやしくなっていく。更にエピローグも付く。よく出来た構成。メール、過去、会話、創作…と、動きはほとんどなく、密室劇のよう。それもかなり濃密な。16年付き合い、別れて16年て、そりゃ関係自体濃密でないはずはないが。
個人的には、この男にそんなに執着するものかなーと思うけれど、そこは個人の問題なのでなんともしょうがないね。