【感想・ネタバレ】もうひとつの曲がり角のレビュー

あらすじ

野間児童文芸賞、小学館文学賞、産経児童出版文化賞大賞、IBBYオナーリスト賞など数々の賞を受賞する岩瀬成子氏の最新長編作品。

柵には半開きになった木の扉がついていて、その扉に「どうぞお入りください」と青色のマジックで書かれた板がぶらさがっていた。
「いやだ。あたしはそんなところへは、ぜったいに入らないから」ときこえた。
えっ。どきんとした。
庭木のむこうからだった。わたしにむかっていったんだろうか。
わたしは耳をすまして、木々にさえぎられて見えない庭のようすをうかがった。
しんとしていた。
だれがいるんだろう。
わたしはぶらさがっている板をもう一度見た。
それから足音を立てないようにして、そっと扉のあいだから庭に入っていった。しかられたら、すぐににげだすつもりだった。ちょっとだけ、のぞいてみたかった。──本文より。

小学五年のわたしと中一の兄は二ヶ月前、母の理想の新しい家、市の西側から東側へ引っ越してきた。この町で通い出した英会話スクールが休講だったので、わたしはふと通ったことのない道へ行ってみたくなる。道のずっと先には道路にまで木の枝が伸びている家があり、白い花がちらほらと咲いて・・・・・・。

日本絵本賞、講談社出版文化賞、ブラチスラバ世界絵本原画展金牌、オランダ銀の石筆賞など受賞の酒井駒子氏による美しい装画にも注目!

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Posted by ブクログ

ネタバレ


『そのぬくもりは消えない』
『マルの背中』
どちらも大好きだったけど、
これはまたすごく面白い!!
ちょっと不思議な女の子、不思議な物語なら、
駒子さんの繊細な表紙がすーっとそこに連れていってくれるんですよねぇ。

お兄ちゃんの中学進学に合わせて、市の東側のちいさなマンションから、西側の中古住宅に引っ越してきた朋の家族。ママは新しい家、新しい職場、一人暮らしのおじいちゃんのお世話にとにかく忙しい。

朋はママの勧めで英会話スクールに通うことになる。
いつものように土曜日の午後、英会話スクールに行ってみると、その日は塾はお休みだった。

なあんだ。と、家に帰る前に寄り道をしてみる。
英会話スクールと郵便局とのあいだにある道の先、
その曲がり角を曲がると…

喫茶ダンサーと、庭先で朗読をしてくれるオワリさん。
その不思議な魅力と、英会話スクールでの違和感に、
また次の週も英会話をサボって曲がり角を曲がってしまう…。

ふしぎな曲がり角で出会う、もう1人の少女みっちゃん。
同じ英会話スクールに通う同級生の麦野さん。
朋も、どうやらお兄ちゃんも、学校には馴染めていないよう。

お兄ちゃんは、野球部を、朋は英会話をやめたいという気持ちをそれぞれの方法でママにぶつけていく。

朋はママを傷つけたくないけど、お兄ちゃんはすっかり反抗期。大人になってしまった。
パパとママの夫婦喧嘩も、この家に引っ越してから増えてしまった。

子どもたちの声に耳を貸そうとするけれど、空回りするママの姿にはイライラさせられる。

パパの家庭での在り方もとてもリアルだ。

そのリアルさと、少女の心の味方である曲がり角の世界と、岩瀬成子さんのお好きな、タイムファンタジーの世界になんともうまく誘われてしまうのです。

そしてあっという間に読み終えて、ビックリしてしまう。。

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2021年10月09日

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