あらすじ
夜、親のいない子どもたちの多くは、待機児童にさえなれない型破りな保育を続ける夜間保育園に密着ルポ。
博多の繁華街・中州の程近くに、その保育園はあった。
モダンな建築、モンテッソーリ教育や地元産の食材をつかったこだわりの給食など、意識の高い保護者をひきつける要素を備える一方で、飲食業や風俗など夜に働く親たちを積極的に支える夜間保育園という貌もあった。
親が休日の日にも子どもを預かる/深夜働くために朝登園できない親子を自宅まで迎えに行く/週末には理事長が自宅で子どもを預かる……その型破りな保育に、2年間にわたり密着取材。同時に、夜間保育園がなかなか増えない理由、ベビーホテルの抱える問題などにも切り込んだ。夜に働く親たち、夜に親のいない子どもたちを支えたい――そんな人々を思いを活写したルポルタージュ。
(目次)
序章
1章 中洲の夜間保育園
2章 真夜中の親子
3章 ベビーホテル
4章 見えない子どもたち
5章 防波堤
6章 陽だまり
著者プロフィール
三宅玲子(みやけ・れいこ)
1967年熊本生まれ。ノンフィクションライター。
オンラインメディアや週刊誌で「ひとと世の中」を取材。
2009年より5年ほど北京へ。
2011年より日本人と中国人のゆるやかなプラットフォーム Billion Beats を運営。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
博多の夜間保育園「どろんこ保育園」への取材を綴る本書。
前半は夜間保育園に預ける親や保育士について書かれており、ただ、大変さが分かるぐらいでしたが、後半の日本の保育の辿ってきた道のりは、壮絶で過酷であり、今もまだまだ発展途上であることが痛感させられました
Posted by ブクログ
本当にサポートが必要な人は福祉の網の目からこぼれ落ちている。子ども達、そして親達をも型破りな取り組みで支える規格外の保育園のルポ。
子どもが亡くなる事件に胸がつまる思いをしている人に、育児が辛いという感情がよぎったことがある人に。
本に登場する人達は、子どもも大人も言葉にできない気持ちを抱えている。それを丁寧に取材を重ね、汲み取って世に送り出してくださった三宅さんを心から尊敬します。
この本が広く読まれますように。
「しっかりしてなくてもいいんですよ。ダメなおかあさんでいいんです」
Posted by ブクログ
夜働く人がいるんだから夜間保育が必要な子どもも当然いる。そんな当たり前に気付いてなかった。
行政支援が行き届かないなか奮闘するパイオニア事業者、心ある政治家、行政、記者たちの姿が胸を打つ。心意気が少しずつ世を良くしてく。
読後、ルポの舞台、博多中洲どろんこ保育園のNHK72時間を観た。
夜中まで子どもを預けるなんて…と思う人(私もそうだった)はぜひ読んで/観てほしい。創始者であり理事長先生の言うとおり「おかあさんたちは、それはもう、実に一生懸命でした」。もちろんおとうさんたちも。
そして、前書きに出てくる関西大学山縣先生のコメントがあらためて胸に迫る。
「シングルペアレントや若年出産は確かにリスクが高い。でも頼れる友人や家族、制度等のプロテクト要因が上回ればレジリエンスが強化されリスクを回避できる」。
どろんこ保育園はめちゃ強力なプロテクト要因として、子どもを、子どもがいる家族ごと支えようとする。どんな境遇でも親を責めない(叱りはするけど)。その懐の広さ愛の深さに何度も涙が出た。
Posted by ブクログ
自分の知らない世界の入り口を開けてくれる本が好きです。この本もそんな一冊。夜間保育園の存在、重要性について考えたことなんて人生で一度もなかったけれど、読後の今では何故こんなに認知されていないのか不思議なくらい。
どんな子どもたちも等しい保育サービスを受けられる社会に向けて、自分のリソースを使い道を切り開く天久さんの生き様に刺激をもらった。
またどんなにサービス・仕組みを整えても、本当にそれを活用してほしい層にはリーチできないという山懸教授の話も興味深かった。今後の資格試験勉強の中で、こういった活動の現場に行けるようにアンテナを張ってみようと思う。
Posted by ブクログ
ユミエさんとカズくんのストーリーでリアルを描きつつ、園の歴史とともに夜間保育はもちろんのことそれを取り巻く社会を描く。筆の強さと情報の確かさを感じる一冊。
今日も複雑な思いを抱えて夜を生きる母親と子どもがいること。同じ日本にも自分の知らない世界があること。世の中の奥深さと多様さを教えてくれて向き合う必要を突きつける、これぞルポ、でした。
Posted by ブクログ
夜間保育園を営む方とその利用者のリアルな生活を垣間見ることができました。そして夜間保育園ですら捕捉できないベビーホテル利用家族のことも知ることができました。