あらすじ
これが『なつぞら』のリアル。ドラマを超えた劇的ストーリー登場! 朝ドラ『なつぞら』でヒロイン奥原なつ(広瀬すず)のヒントとなった故・奥山玲子氏。同作でアニメーション歴史考証をつとめた小田部羊一氏。ふたりは「おしどりアニメーター」として活躍したご夫婦です!アニメーションの草創期を開拓した奥山さんと小田部さんの長く幅広い活動にスポットライトをあてた「ドラマを超えた劇的ストーリー」が満載。ふたりは「東映動画」を皮切りに、様々なスタジオ、様々な名作に関わり、それぞれが銅版画家として、任天堂ゲームキャラクターのデザイナーとしても活躍しました。本書は小田部さんに2回のロングインタビューを実施。さまざまなエピソードが明かされます。またご提供いただいた秘蔵写真・イラストを多数掲載しています。さらに、ご夫婦の人柄や業績を知る演出家やアニメーターたちに「ふたりとの創作と日常の舞台裏」をインタビュー。名作・傑作の創造の秘密や、東映動画の職場結婚・出産、共稼ぎの先駆者となった夫妻の知られざるエピソードがあふれています。そこには、「アニメーションの舞台裏」にとどまらず、今も昔も変わらない「働いて、生きることのリアル」も明かされています。(1)小田部羊一インタビュー(2)演出家たちの証言 ・池田宏…『空飛ぶゆうれい船』『どうぶつ宝島」、任天堂に小田部さんを呼んだワケ ・勝間田具治…『アンデルセン童話 にんぎょ姫』日本初の女性作画監督との仕事 ・葛西治…『龍の子太郎』いにしえの東映動画が蘇った『龍の子太郎』の熱き共同作業(3)アニメーターたちの証言 ・ひこねのりお…妖しい踊りと結婚の告白 ・山下(中谷)恭子…寄稿「懐かしい奥山玲子さん」 ・宮崎(大田)朱美…女性がアニメーションの世界で結婚・出産し働き続ける先駆者(4)フォト&イラストギャラリー等◆奥山玲子(おくやまれいこ)1935年、宮城県仙台市生まれ。宮城学院高等学校卒業。東北大学教育学部中退。58年東映動画入社。『白蛇伝』動画、『わんぱく王子の大蛇退治』原画、『太陽の王子ホルスの大冒険』原画、『アンデルセン童話 人魚姫』作画監督、『龍の子太郎』作画監督補、『注文の多い料理店』原画。85年より東京デザイナー学院アニメーション科講師。88年より銅版画制作。
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Posted by ブクログ
共にアニメーターであった奥山玲子・小田部羊一夫妻の互いに強い信頼で結ばれつつ精神的に自立し互いに尊重し合う生き方、そしてアニメーションという仕事への思いの強さとが軸になっている一冊。
印象に残ったのは、小田部さんがスイスに『アルプスの少女ハイジ』のロケハンのため旅立った時、2人で働きながら懸命に育てていた幼い息子さんが入院中であったにもかかわらず奥山さんは黙って送り出し、しかしスイスの話は以後家族でスイス旅行を果たすまでの25年間、家庭内でタブーになったというエピソード。決して綺麗事ではないけれど困難を乗り越えた家族の絆と、そうした状況下で生み出されたからこその、ハイジという美麗な作品のかけがえのなさと。それぞれに重みが感じられたお話でした。
そのように感じられたのは、インタビューから滲み出る、小田部さんの一見控えめでありつつ、実は奥山さんと同じかそれ以上の意思の強さを秘めたお人柄ゆえでもあると思います。
なお、今更ですが、奥山玲子さんは朝ドラ『なつぞら』のヒロインのヒント(モデルではない所がポイント)となった方でもあります。朝ドラでその周囲に恵まれた強運ぶりと周囲に忖度しない押しの強さとが叩かれがちなヒロイン像と、夫の小田部さんを含む近しい仕事仲間の方々の口から語られる、実際の奥山さんの強い意思に裏打ちされた当時にしては奔放な生き方とを引き比べると、
「いやあ、ドラマコードの制約と、平均的朝ドラ視聴者と目される存在、それに女優さんのイメージとに総合的に配慮してヒロイン像を形成せざるを得ない朝ドラって、本当、作るの難しいよね」
と思わずにはいられないのでした。