あらすじ
NHKのアナウンサーとして順風にキャリアを重ね、東京勤務になってからは夕方5時の帯ニュース番組を担当し、「さあこれからだ!」という矢先に違法薬物で逮捕。さらに違法という自覚も無く、自分自身で製造まで行っていたという。そんな氏が、そもそもなんで薬物に手を出したのか、依存するようになったのか。後悔と懺悔の独白および、底からのリカバリーなど、自身の経験をこと細かに独記し、薬物使用に対する警鐘本とする。
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Posted by ブクログ
内容は題名のその後について。
NHKのアナウンサーだった人だから言葉や表現を大事にしているんじゃないか。
何度も逡巡して推敲して書かれた本なんじゃないかと感じて大事に読んだ。
人当たりがソフトで美意識が高くて素敵な人なんだろうなとちょっとうっとりしながら読み進めた。
選ばれた企業、職業。プライドと向き合うのは大変だっただろうなあ。
向き合ったからこそ今の素敵な塚本さんがいるんだろうなあ。
ラスト1ページで涙が。NHKを辞めた後でも、夢だった仕事をやり続けている人生について想いを馳せて書かれている。
喪失感でしんどかっただろうなあと失われた「あったはずの人生」を思って悲しくなった。応援しています。
Posted by ブクログ
NHKのアナウンサーが薬物で捕まったというニュースはぼんやりと覚えていたが、顔も名前もよく知らない人だった。その塚本堅一さんが自身の経験を吐露しているのが本書なのだが、この本を手に取ったきっかけは毎日新聞の一面にドンと載った記事だった。なんとも普通な容貌の男性で、この人が薬物で捕まったとは思えないが…と記事を読んでいくと、自分をさらけ出し前に進もうとしていることが伝わってきた。さらに彼のことを知りたくなった。
塚本さんはラッシュと呼ばれる近年危険ドラッグに分類されることになった薬物をたまの褒美に使っていたという。怪しげなサイトと思いつつも合法をうたっていることから手を出してしまい、結果的に逮捕されNHKを解雇される。逮捕から勾留期間の様子はとても具体的で興味深く、元アナウンサーの菊間千乃弁護士との出会いは勾留生活の原動力になったらしい。
本書で何度も繰り返しているが、彼自身や医者も依存症ではないと言っている通り、読んでいてもそう感じる。そもそも逮捕に繋がったラッシュは「効果」もほとんどなかったそうだ。
その後、彼自身は依存症でないものの、テレビでもたまに見かける松本俊彦医師の薦めで依存症回復施設へ通うことになる。依存症ではないのに…という葛藤や依存者への偏見を捨てきれないが、自助グループで自分をさらけ出していくことで塚本さん自身も救われていく。
薬物報道ガイドラインでは注射器の映像を使わないなど定められているらしいが、現実に依存者がそうした映像でスイッチが入ってしまい再度手を出すことがあるのだという。塚本さんの逮捕時もラッシュとは全く関係のない注射器の映像が流れたらしい。
依存症だとか違法薬物だとかということは他人事だと思っていたが、依存するモノが合法というだけで、飲み続ければ確実に身体を蝕む酒を止められないのだから、本書に書かれている話は決して他人事ではない。
違法薬物に手を出して一発アウトという社会にあって「復帰」がこんなにも大変なのかと思ったし、厳しくするだけで更生する機会を与えないのは負の連鎖でしかない。
そうした社会を少しでも変えたいと本書で全てをさらけ出した塚本さんには拍手を送りたい。