あらすじ
※本書は、2020年10月24日~2023年12月12日まで配信していた単行本版『作家の贅沢すぎる時間―そこで出逢った店々と人々―』を文庫化した作品となります。重複購入にご注意ください。
ペンを手に原稿用紙と対峙する。机に向かい、ひたすら物語を紡ぎ続ける作家にとって、一日の疲れを癒やし、明日への活力を得るのは、いつだって贔屓にする飲食店だった──。銀座、浅草、六本木、横浜、京都、大阪、……伊集院静がこよなく愛した名店の数々を、その思い出とともに綴った初の「食エッセイ集」。一度は行ってみたい「名店」から庶民的なお店まで、全72店舗を紹介する。
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Posted by ブクログ
何気なく書店で手に取った一冊。筆者が好んだ各地の料理店についても、もちろん記載があるが、そこよりも筆者の為人や(あまり想像も及ばない)店主との関係性を気軽に楽しむことができた。未だ筆者の小説を読んだことはないが、背景情報(かなりの博打好き等)を入れた上で書籍を読むと、また違った楽しみ方ができるのでは、とも思う。
特に印象に残った箇所は以下の通り
・「「おまえ、連絡を何度もしいへんでええで。便りがないのが元気な証拠言うやろう。連絡がなければ、俺の中でおまえはずっと生きとんねん」」(p.70)
・「それでも若い時にだけ、将来のことは見えなくとも、前に踏み出さねばならない時がある。その行動をするかしないかと、後になって後悔すると言う人がいるが、そうではない。後悔などすることはどうでもよくて、大切なのは、そこで踏み出すかどうかは、己の人生の時間を見られるかどうかにある。機を失うと、再び、そういう機会が来るということはまずない」(p.110〜111)
・「「さあ、どうしてなんだろうかね。私にもよくわからない。でもひとつだけ言えるのは、これまで書いたどの小説も、不安というか、果してこの作品は最後まで書けるんだろうかと、ひと文字、ひと文節を手探りで進めて行った方が、何かとぶち当たることが多いのはたしかなんだ。ずっとその理由がわからなかったのだけど、もしかして、不安や恐れの中にしか核心は潜んでないのかもしれないね...」」(p.194)
・「書くしかないんだよ、小説は。とやかく言う前に、あれこれ考える前に、書くしかないのが小説なのである」(p.254)