【感想・ネタバレ】パーフェクト ストーム 迫りくる世界同時「大不況」 黄金の相場予測2019のレビュー

あらすじ

1ドル65円、NYダウ8701ドルの衝撃!
大不況の入口に立ついま、2023~24年の大底までに、何にどう投資したら勝ち残れるのか?

リーマンショックは21世紀大恐慌の本番ではなく、2019年7月から米国、中国、EU、日本で同時に始まる世界同時「大不況」こそが本当の大恐慌=パーフェクトストームである、と相場予測のゴッドハンド・若林栄四が喝破します。

すなわち、

・奇跡の成長がついに終わって共産党が抑え続けてきたリスクが示現する〈中国〉
・新自由主義40年の宴の終幕にトランプが登場してバブルの最終局面を迎えている〈米国〉
・低金利政策と株式ETF購入という世紀の愚行で円ショート爆弾を世界にばらまく〈日本〉
・倒産株価以下で推移するドイツ銀行リスクがユーロ崩壊の引き金を引くことになる〈欧州〉

という要因が黄金律の日柄で同調するのが2019年から2024~25年です。

本書では、それぞれの国の状況を歴史的大局観を織り交ぜつつロジカルに分析するとともに、オランダのチューリップ・バブル以来、これまで経済史上で繰り返された恐慌の歴史に遡り、いままさに迫りくる世界同時「大不況」の実像について、その時期と相場の水準を具体的に描きます!

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Posted by ブクログ

10年以上に渡って新刊が出ればすぐに買って読んでいる若林氏の本ですが、ネットで確認したら2019年に出されたこの本だけ読み忘れていました。ちなみにこの本が15冊目となります。

彼の本は株・為替・金価格がどうなるかを、具体的な日時を示して予測することに特徴があります。今回は出版されてから5年も経過しており、彼の予測がどの程度当たっているかを確認しながら読むことになりました。

筆者の若林氏が原稿を書いた頃には、何年にも渡って経済に大きな影響を及ぼした「コロナ」については全く予想できていないので、彼の予測はその分ズレて(遅く)成っているかも知れません。彼は2019年に大恐慌が来るとしていますが、本の中に2024年も危ないとも書かれていました。

様々な人が本で書かれているように、今年の米国大統領選挙が終わる今年の年末、もしくは来年初頭にかけて日本が巻き込まれるような大きな動きがあることを念頭にして心の準備はしておく必要があると思いました。

以下は気になったポイントです。

・2019年現在、生活実感は改善していて、その結果現状に満足している人の割合が増えている、ところが、その見せかけの繁栄は、デフレ経済の中で中央銀行が絶望的なデフレとの戦いを制するために巨額のフェイクマネーを経済に注入したことの副作用である。実体経済が必要とする以上のカネを撒き散らした世界の中銀のまやかしの詐術は、実物経済に見合うカネの量への回帰を必然的に将来するはずである(前書き)

・中国社会の特徴はあらゆる行政機構が、共産党と政府の二重構造になっていつことである。地方行政府の長とは別に地方共産党委員長の書記という権力者が存在する(p30)中国の不動産開発バブルはさらに膨らみ、これ以上は膨らむことができないレベルまで到達したのが2018年である、黄金率で見れば、天安門事件から29.5年目の2018年後半である(p31)中国の政府発表の6.6%というGDP成長が実は1.67%でしかないという報道もあるとおり、この国の公式統計は誰も信用しない(p34)

・中国の地方政府の隠れ債務(中央当局は、地方融資平台は認めてない)は少なくとも公表債務の4倍はあると言われている、2018年6月末の公表債務の額は16.6兆元なので、合計で1300兆円を超える天文学的な数字になる(p36)

・レーガンアジェンダ(規制緩和、減税で大企業の成長を促進し、結果として国民福祉が増大する)の賞味期限が2020年には到来して、2021年以降は新しい政治思潮が支配する米国となる。トランプ氏は再選されないだろう、リベラルアジェンダの最後の大統領であった民主党のカーターが再選されず1期のみに終わったのと同じである(p41)強欲資本主義(自社株会により株価上昇など)の行き過ぎの反動により新しい資本主義を標榜する社会民主主義的な動きが始まると信じている(p65)

・米国株市場において、時価総額という徒花で見ると比較が難しいが、PBR(株価/純資産倍率)という物差しで測ってみると、明らかに米国株の大幅割高(日本:1.3,英国:1.7,ドイツ:1.5,中国:1,8に対して、米国:3.4)を示している(p61)

・米国の保険制度は、老齢者用のメディケア、貧困者対象のメディケイドは政府管掌だが、それ以外はプライベートセクターの保険会社であり、その保険保持者は1億8000万人でそれに満足している人も多いので、それを放棄して政府管掌1本にするということに抵抗する国民は少なくない、そうすると10年間で32兆ドルの経費がかかると言われ、税金も上がることになる(p79)

・最近のニュースで一番気に入ったものは「経団連、通年採用に移行」で、新卒一括採用見直しとなり、2022年春入社から通年採用に変更する旨で経団連と大学側が一致した(p104)

・なぜ日本がジャパン・アズ・ナンバーワンと言われた昔日に戻れないのか、日本人が偉いからでなく、日本の制度が素晴らしかったからでもない、官僚が優れていたからでもない、勤勉だったからでもない、もし戦略的に動いてナンバーワンに成ったのであれば、再びなれるかも知れない、しかし日本人は所詮、戦術の人たちで戦略の国民でない。太平洋戦争など、戦術と戦略を混同した失敗の好例である。では何が成功の原因か、グランドデザインもなく、ひたすら外界からの刺激に対して戦術的に対応してきただけである、たまたまそれが世界的な景気拡大の下で、フィットしただけである(p108)

・イタリアのジェノバでは1610年から10年間ほど2%以下の低金利が続き、1619年には1.125%の超低金利が記録された、それ以降、1997年に金ギラ2%を下回ることは文明世界ではなかったから、この数字はまさに「資本はあるが使い道がない低金利のどん底」でアタ、その後、金利は上昇に転じるがその背景には、1618年から始まる30年戦争(カトリックとプロテスタントの宗教戦争)による戦費調達(傭兵なので金がかかった)の必要から資金需要がで始めたことがあった、さらに1700年代に入るとイギリスから始まった産業革命で資金需要が逼迫した(p138)

・1619年はキリスト生誕1619年目で黄金率1618年の誤差範囲、1637年はその黄金率540年前の1097年に第一次十字軍とセルジュクトルコとの十字軍戦争が開始されていて、キリスト教世界では重大な出来事である、この十字軍の成功により、それを主導したローマ法王の権威はその後200年に渡って増大した。文政の経済史の中で、この2つの時間が大きな起点になっている。1637年は、その後のバブル崩壊の起点になる最重要時間帯である(p140)

・金利は1984年に(13.95%)となり最低金利から365年の日柄であった(p141)1984年5月を正当な金利高値とすると、40.5年の日柄を踏む2024年が金利の底とも考えられる、1619年からの日柄の正当性では、2024-25年が21世紀の大恐慌の底の時間帯ではないかとみるのが正解だろう、これは株価の底を意味するものではなく、金利の底・景気の底という意味である(p147)

・ほぼ1世紀に一回登場するバブル天井の21世紀分は、実は2019年に出現する、2008-09年のいわゆるリーマンショックでは「100年に一度の大不況」という言い方がなされ、その後景気も株価も回復したので、これで当分酷いことは起こらないと信じる業界人も多いが、そうではない。これから本当のすごい奴がやってくる、1世紀に1回の恐慌が始まるのである(p148)

・1873年とは世界経済が第二次産業革命に邁進中で、まさに近代資本主義経済の「とば口」にあるタイミングであった、この時世界中で鉄道建設がブームの時代で、宅地や商品皿には鉄道株に対する過剰な投資が大恐慌の原因である(p149)そもそもこの恐慌の直接の原因は、1873年4月に米国が金銀二重通貨制を廃止、銀を本位通貨から外したことによりマネーサプライが減少し、過剰投資でストレッチし過ぎていた経済の腰を折ったからと言われている、これにより英符も経済の実態を掴む必要があり、失業率という統計を考慮したと言われている(p150)

・今でこそ1兆ドルを超える外貨準備を誇る我が国だが、昭和20-30年代の日本(1ドル360円をの対ドル平価を守ための外貨準備20億ドルの壁があった)は慎ましいものであった。少し景気が良くなって輸入が増えると、外貨準備が20億ドルを割りそうになると日銀が引き締めをやる、すると輸出超過となり外貨準備が増えるので、引き締めを解除すると景気がよくなり、また外貨準備が20億ドルに接近する、こういうことを繰り返していたが、外貨準備の心配なしに金融政策できるようになるのは、外貨準備が40億ドルを超えてきた1960年代の半ばを過ぎたあたりからである(p172)

・保たれてきた戦後体制が揺らぐのは、1968年の金二重価格制の採用からである、米国がインフレと貿易赤字で1オンス35ドルの兌換が不可能になり、一部の取引で自由市場で金が取引できるシステムが始まる。これによりドル対平価が揺らいだので、ローカル通貨(円など)の対金価格が不安定になった、これが1968年3月から始まった金二重価格制である。この時から各国の通貨は、金の錨(いかり)から外れ、漂流し始めることになる、通貨コントロールは各国中央銀行の恣意に任されることになった(p173)

・金本位制が正式に採用されたのは、1844年5月イングランド銀行によるものである、この年は、ジェノバの文明世界最低金利1619年からの黄金率225年目である(p174)さらに黄金りつの365年の1984年に米国金利は13.95%の高値をつけて、その後大きく下落する、そして2016年7月には1.31%を記録する、1619年からの405年目、1984年5月からの40.5年目に当たる2024年が、金利の底、恐慌の底となることが黄金律から推論できる(p175)20世紀恐慌のバブル頂点1929年からの黄金律95.5年(=59+36.5)とすると、大きな底は、2024年ということになる(p176)金利の底と株価の底がほぼ同時に2024年にやってくるということで、やや異例だがそうしたことが起こらないという保証はない(p178)

・先進各国の金の準備資産と名目GDPの比率は、2.5%となり、金に対する世界のGDPレバレッジは40倍となっている。(p179)これはいくら何でも通貨の過剰発行である、いつ通貨の信認が崩壊してもおかしくない状況だと言える、40倍のレバレッジを10倍に落とすには、菌価格が4倍になる必要がある。日本の場合はレバレッジが100倍以上でこの面からの円の暴落が起きる可能性が高いが、タイミングとしては第二次ブレトン・ウッド体制の前からだろう。それはいつから始まるか、1844年の金本位制の正式採用から黄金律36.5単位の182.5年である、2027年ではないかというのが文明史から得た推論である(p181)

・1994年初め113円だった相場が、1995年4月には80円割れまで円高が進行している、それと同じことがこれから数年で起きる。米国株が暴落するから、最終的には2023年に65円まで円高が進行する(p185)そして、2024-25に一度ドルの高値を見て、2027-28年にドルの安値を見るのが一般的な味方だろう(p188)

・日本株は、底値から67.5年で戻り天井(24000台)を見た相場は、大天井1989年末の3万8957円からの33.75年となる、2023年9月に向けて大幅反落することは避けられないだろう(p199)

・デフレは金高である、金は通貨としての本源的な性格から常にドルの裏返しである、従ってドルが下がる時には金が上がる、ドルが上がる時には金が下がるということになる、ドル円の価格シグナルは過剰な政府介入で信用できないので、通貨価値の面で絶対的な信頼感を誇る「ドル/マルク」およびその後継である「ユーロ/ドル」でドルの動きを見ると、その裏返しが金価格の推移であるとわかる(p207)これから金が暴騰するかどうかは、インフレとは関係なく、ドルが対ユーロで暴落するかにかかっている。米国が強硬に入ることにより、ドルが対ユーロで暴落するかが今の命題である(p212)金急騰は遅くとも2019年8月前後から始まるのではないか、この金相場は、ユーロは2024年10月までは上がり続ける=ドルが強硬で下がり続ける、となると、2024年いっぱいは上昇基調である、計算すると3000-3500(注:2024.9現在で2694)ドルとなる(p213)

2024年9月28日読破
2024年9月29日作成

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2024年09月29日

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