あらすじ
イタリア統一、パリ・コミューン、ドレフュス事件、『シオン賢者の議定書』……すべてに関わるひとりの男がいたとしたら? 知の巨人が描く憎しみのメカニズム。ユダヤ人嫌いの祖父に育てられ、法学を学んだ青年、稀代の美食家シモーネ・シモニーニは、祖父の死後、ある公証人のもとで遺言書等の文書偽造の仕事を任されるようになる。陰謀渦巻く、混沌とした19世紀ヨーロッパを舞台に、偽造の腕を買われた彼は各国の秘密情報部との接点を持つようになり、その守備範囲は遺言書や証明書等の個人的な書類から政治的な文書へと広がっていく。そして、行き着いたのは史上最悪の偽書と言われる『シオン賢者の議定書』だった。捏造であることが判明した後も、ナチのホロコーストの根拠とされ、アラブ世界ではいまだに読まれつづけているというこの文書の陰に、シモーネ・シモニーニの存在が……。本書の登場人物中、彼以外はほぼ全員、実在の人物である。
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Posted by ブクログ
「シオンの議定書」成立を描く歴史小説。
19世紀後半のヨーロッパの歴史が良くわかっていないので、何が史実で、何がフィクションかがわかりませんでしたが、宗教派閥闘争、ユダヤ人排斥、国間紛争などが絡んでややこしいながらも面白かったです。
視点が、偽書作成の天才のシモニーニ、その二重人格と思われるピッコラ修道士、著者と思われる「書き手」の3人で、日記形式で歴史の裏側を語っていくのが、みんな同一人物だと裏を読みつつ、実は「書き手」は著者視点でした。
それにしても、上記の語り手以外は、全て実在の人物というのが信じられないほど、癖のある人物たちばかりで社会権力の怖さを感じました。
分厚い本で、読み難いながらも引き付けられるものがあり、読み終わった後の達成感と現代社会にも通じる裏事情の複雑さが心に残りました。