あらすじ
◆たとえばアップルの製品のように、アメリカで研究開発され、日本や東南アジアで作られた部品が中国に集められ、組み立てられて全世界に輸出されるといった複雑な国際分業体制があたりまえの時代になりました。その結果、通商問題は中国からアメリカにどれぐらい輸出されているかといった単純な問題ではなくなってきています。
また、単純な部品は途上国、高付加価値品は先進国でつくるといった国際貿易の前提も崩れました。途上国に最新鋭の工場が作られ(しかし、その国に必ずしも富は落ちず)、一方で先進国で失業問題が深刻化するといった複雑な新・南北問題が起きています。
◆このような複雑な国際生産分業ネットワークがどのように張りめぐらされ、どの段階でどれぐらいの付加価値が付くのかを膨大なデータを駆使して分析する最新の手法がグローバル・バリューチェーン(GVC)分析です。本書では、東アジア経済の一体化や、米中貿易戦争、第4次産業革命の影響といった国際経済の構造とダイナミックな動きを明らかにしていきます。数式はほとんど用いず、ビジュアルを工夫した図表で直観的に理解できるように解説します。
最先端の研究成果をもとにしながら、グローバルに事業を展開している企業のビジネスパーソンにとっても、知的刺激を受けながら読み進められるわかりやすい内容になっています。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
ー 第1章では、グローバル・バリューチェーン (GVC)とは何かについて、本書における概念定義を行った。 GVC研究は、国際生産分業の構造と、生産活動が生み出した付加価値の分配メカニズムとの関係性を考える学問である。
平たく言えば、経済グローバル化の勝者が誰であり、またその勝因は、そして勝利のコストは何かについて突き止めることである。そこで、まずは生産分業のメカニズムを確認し、その上で国際生産分業が発展するための要件について説明した。それは、①各国の比較優位性 ② 製造拠点を連結する諸機能へのアクセシビリテイ、③スケールメリットを十分に活かせる市場の存在、の3点である。
次に、国際生産分業と付加価値分配の関係性を探るため、サプライチェーンの統治構造について考察した。なぜなら統治のあり方は当事者間の力関係を反映しており、また、究極的にはこの力関係こそがゲームにおける価値配分の大きさと方向性を決めるからである。そして、この見解に基づき、本書ではGVCを「価値創出/分配のグローバル・ゲームとして見た生産・消費ネットワーク」として定義した。 ー
学術的なアプローチで分かりやすく勉強になった。
GVCがグローバルレベルでバリューのチェーンになってしまうそもそもの世界的な構造の問題への対処は書かれていないので、それを考えないといけない。