あらすじ
「デジタルエコノミー」や「データ・ドリブン・エコノミー」といった言葉への言及が顕著になる昨今、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドットコム)や、BAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)など、大量のデータを収集・蓄積し、活用している企業が、グローバル経済に大きなインパクトを与えている。
激変する環境の中で、企業成長における本質要因を解明し、データを価値に転換する者が生き残る「エコノミー・オブ・ウィズダム」の時代の戦略の真髄を豊かな展望と洞察のもとに描き出すのが本書である。
神戸大学大学院経営学研究科の三品和広教授(第1~2章)は、本書において、近年盛んに喧伝されている「第四次産業革命」について冷静に捉え直し、産業革命を例に、それが戦略と不可分の関係にあることを明示する。同時に、過去の経営戦略論、複数の企業が浮沈した事例をひもときながら、事業の命運が事業立地の選択によって左右されるとする。
前二章を踏まえ、NTTデータの山口重樹代表取締役副社長執行役員は、デジタルエコノミーの本質とビジネスや経済、社会システムに中長期的にもたらすインパクトを正確に見極める必要があるとし、デジタルがつくり出す仕組みとデータを活用する智恵、「デジタルウィズダム」の力を高めていくための視点を大胆に提示する(第3~4章)。そこでは「財・サービス」「プロセス」「認識」「意思決定」の四つの要素のデジタル化がビジネスの進化の重要な契機をなすとし、デジタルが創り出す仕組みとデータを活用するウィズダムを合わせ持ち、イノベーションを牽引する企業の事例を効果的に引きつつ、新たなテクノロジーをいかにビジネスに適用していくべきかを示す。
最終章では、三品・山口両氏による対談において、経営者は何を思考し、いかなる戦略を実行する必要があるかなどを議論する。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
Enabler of Platform
産業革命の裏には黒子となり牽引した産業がある。
今はGAFA初めプラットフォーマー全盛の時代だが、その黒子になるものこそ勝者になると言える。
■概要
今は第4次産業革命が始まったばかりで、どのような技術がどう転生し、どう帰結するかは全くわからない。結果をみるのは50-100年後だと三品教授は説く。実は第3次産業革命(制御革命)の勝者もGAFAらプラットフォーマーと思われがちだが、そうではなく、プラットフォーマーが提供する情報の「信用性」を担保できる黒子のプレーヤーが鍵となる。情報の信用性を担保するには情報を「読む力」=wisdomが必要であり、常に学ぶ者が身につけられる。
■所感
・やはり大局観が凄まじい。誰もが今の世の中の勝者をGAFAらプラットフォーマーと見る中で、GAFAのさらに土台となる黒子の存在を指摘することは容易ではない。確かにUberなどプラットフォーマーの登場によって消費者の選択の自由が広がることが、データの信用性の必然性が高まることは間違い無いだろう。それを歴史から見て解説しているので、確かにGAFAが第3次産業革命の勝者とは言えないかもしれない、と思える。
・読む力=wisdomと言葉を変えているが、結局は「観」の話なのではと思った。Howに乏しいので批判も多いだろうと思うが、第4次産業革命というバズワードを問いなおすのは圧巻だった。イノベーションという多義語の再定義を試みたリインベンションと同様に、これからの経営を考える上では避けては通れない理論の整理だったはず。
・3,4章は事例紹介とデジタルの概念整理が中心で他書でも代替可能ではあるが、用語がわかりやすく整理されていた。
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■詳細
・産業革命を問いなおす
- 革命は静かに小さく起こり、1世紀後に事業になる
- 革命を補完する黒子たちが利益を得る
- 第4次革命の前にまだ第3次革命の顛末もわからない
(GAFAは強力で花を咲かせたているが、本当の果実を刈り取るのは別のものたちか?)
- 第4次革命と言われるものは第2第3次革命の組み合わせにすぎないものが大半
・産業革命の系譜
第1次|動力革命 水蒸気機関→電車や自動車の交通へ
第2次|通信革命 モールス電信→電話・テレビ・インターネット
第3次|制御革命 トランジスタ→???
・Enabler 黒子は誰か
第1次|動力革命 交通網整備に必要となる莫大な資金を供給する金融業
第2次|通信革命 大量消費を可能にする広告業
第3次|制御革命 ※データの信用を担保するもの
Posted by ブクログ
三品教授の章は、出口治明氏が言うような「たて・よこ・算数」で産業革命を見直す議論で、そうするとまたちょっとこれまでと違った世の中の見方ができた。
山口氏の章は、デジタル化を4つの要素で分解して議論しておりわかりやすい。デジタル化の本質とは何だろう?と考えつつ、実務的にはどの部分の議論につながるかを理解できた。
最終的にはデータを「読む」ことの重要性が語られる。ここはAIにはできない、人間にしかできないことだと。データは過去のものであり、それを基に未来の筋を読むのは人間の仕事。ただ、それも含めて、パーソナライズだったり、求められるものは一にも二にも「勉強」だったり、まあ、それはそうなんだけど、でも本当か?と突っ込みたくなるところも。