【感想・ネタバレ】愛する意味のレビュー

あらすじ

日本人が幸せになれないいちばん大きな原因は「愛していない」ことにあります。多くの人たちが「愛すること」よりも「愛されること」を優先してしまっている。恋愛でも、社会に対しても、常に周囲からの評価が気になってしまう。しかし、「愛されたい」「評価されたい」ということへの執着は、あなたをとても不自由にします。――感動のロングセラー『生きる意味』出版から14年。生きる意味の核心である「愛」についての熱い提言!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

筆者の知見から述べられる恋愛論。筆者の幼少期や離婚再婚などの境遇から得られた学びが大杉栄の言葉やアダルトチルドレンの理論などを引いて説明されている。タイトルの愛する意味に対して、何か学術的な理論などを期待していたが、そういう類の本とは違っていた。おじさんの教訓話みたいな感じでライトに読めた。

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2025年06月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

愛する意味

著者:上田紀行
発行:2019年6月30日
光文社新書

1990年の著作で「癒やし」という名詞形を世に放った文化人類学者にして仏教徒である上田紀行の最新本。広辞苑第七版にも、「癒やす」はあるが、まだ「癒やし」は掲載されていない(「卑し」は載っている)。この本は、今時の日本の若者が気にする「愛されたい」感覚、言い換えれば、「愛されていないと不安症候群(北原が作った言葉)」に悩む人たちに、文化人類学というより、心理学の対人認知的な切り口でアドバイスを送る生きるための指南書。僕と同じ年のせいか、彼の主張はどれも当たり前に聞こえる。それだからこそ勉強になった。今の若者はそうは思っていないんだな、と。

同じ対象物について、考え方、見方を変えれば、それ以降の自分の行動が全然違ってくるでしょ、解き放たれるでしょ、という説話を随所でしてくれる。自らの体験、2歳半の時に財産を持って家族を捨てて出て行った脚本家の父親、ミステリー翻訳家の母・上田公子との確執、20代での離婚といった個人的な事情を通して買ったっているが、本来なら恨み、後悔するそうした体験も、それがあったからこそ今の自分があるという解釈をして生きている、というのを大きな実例として語っている。

コップに半分の水を「もう半分しかない」と考えるか「まだ半分ある」と思うか。

私たちは愛について相当の欠陥商品。ほとんどの人がゆるぎない自分への自信もないし、見返りを求めずにどれだけでも愛を送るというほどの度量もない。多くの人が愛の不毛を感じているが、そこから愛のある生活をみな立て直していく。

誰の人生にも「神さまの穴ぼこ」がある。病気、家族関係の悪化、社会的騒動への巻き込まれ・・・避けられないが、そこに落ちるおかげで気づきや出会いがある。

恋愛結婚は、情熱がマックスになるのは結婚式と披露宴。愛のエネルギーが高まりフルチャージが近くなると結婚を決断し、ハイパーインルレ化もする。しかし、本来はそこから始まる結婚生活こそが人生の彩りなので、エネルギーを使い切ってバブル崩壊を起こしてしまってはいけない。

日本の伝統的挙式スタイルと思われている親善結婚式が始まったのは明治33年。

人には「人生の癖」がある。「私と世界とは違う」という分断線が入った時、それは生まれる。例えば、弟や妹が生まれて「あなたはもうお姉さんだからそんなふうに甘えないでしっかり」と言われた時。「いつもこう言ってします」「こうするしかない」とやむにやまれずはまり込んでしまう言動にこそ、「人生の癖」が隠されている。恋愛結婚の相手に「こんな人じゃなかったはず」と思うのは、自分自身の「人生の癖」を知らず、自分自身を知らないのに、ぴったりくる相手など見つかるはずがないから。

「この場ではこういう私だけど、家庭の中の私とは違う」「フェースブックではこう書き、子供のPTAのLINEではこう書き、彼へのメールにはこう書く」と人格を使い分けることへの罪悪感のなくなっているかもしれない(→平野啓一郎の「分人」につながる?)

プラトンのイデアは「真善美」。真実の美と愛を追い求め続けるのが愛の目標だとした。

男性社会は自分たちが何の命も生み出せないという無力な現実から逃れるため、男性の方を優位にする試みをしなければいけない。
神様は一つの性にのみ産むという行為を授けた。でもそのことをあまり強調すると男性がいじけるので、男性を何かと文化的に持ち上げて女性を劣位においたのだという考えた方がある。

欧米では子供は別部屋で寝かせ、夫婦はセックスを含めて愛の交換をする。横のラインを重要視する。
日本は親子で川の字で寝て、縦のラインを重んじる。
熟年離婚が増えている背景には、社会制度の変化などによって、家庭にあった縦のラインが崩壊し、そこではもう満たされなくなっているという状況がある。

スリランカは、イギリスの植民地であったことから西洋医学もしっかり導入され、しかも公立病院の医療費はタダ。しかし、農村部には徹夜で行われる悪魔払いの儀式が残っている。治療というより、その人が背負ってしまった心の痛手を悪魔のせいにして祓ってしまう儀式。

日本各地にもまだ狂ったように踊ったり、神輿を担いだりする祭りの風習がある。しかし、全体的には祭りが持つ狂気を管理する方向が見え隠れする。狂気を許さない社会は歪んでいる。

テレビで頑固親父キャラのタレントが若者を叱ると、「おじさんだてそんな怒るキャラで儲けているんでしょ」と言う。若者は自分たちを「存在」ではなく、「役割」と考えている。

著者は講演で年配者によくこう言う。「あなたたちの人生の運はもう使い切ったので、のこりの人生は若い人たちにいかに幸せに生きてもらうだけを考えて生きてください」。日本経済があんなに右肩上がりの時代があったこと、そこに生きてきたことは、運そのものだから、もう使い聞いているはず、という論法。

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2021年03月29日

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