あらすじ
収容者数100万人といわれ、米国務省がいま世界的な人権問題として警鐘を鳴らすウイグル人の強制収容。中国はなぜ彼らを恐れるのか? 中国共産党に忠実で、清く正しい人々。ゴミ一つ落ちておらず、スリもいない完璧な町。だが、この地のウイグル人たちをよく観察してみると、何かがおかしい。若い男性は相対的に少なく、老人たちに笑顔が見られない。観光客に接する女性たちの表情は妙に硬い。いまSF小説の世界にも似た暗黒社会が、日本と海を隔てた隣国の果てにあることを誰が想像しただろうか。さらに共産党による弾圧の魔手は、いまや在日ウイグル人にまで及んでいるという。現地ルポとウイグル人へのインタビューから浮かび上がる「21世紀最悪の監獄社会」の異様な全貌。「一帯一路」という大国の欲望に翻弄された弱小民族の悲哀が浮かび上がる。 ●序章 カシュガル探訪――21世紀で最も残酷な監獄社会 ●第一章 「再教育施設」の悪夢――犯罪者にされる人々 ●第二章 民族迫害の起源 ●第三章 世界の大変局時代における鍵――米中そして日本
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
産経新聞の記者の福島さんによる2019年発行のウィグル問題の解説書。自身での中国で見聞したことや、他の欧米のジャーナリズムの取材を基に要領良くウィグルの問題を扱っている。特に20世紀以降のウィグル独立運動が、覇権国家や中国共産党内の政争とどのように関わってきたかについてはよくまとまっている。
一方、現在のウイグル人の置かれている「この世の地獄のような惨状」に関しては、ウイグル人の手記などもっと生々しいレポートや書籍があるので、そちらを参照しないとこの本からは伝わってこない。
日本はG7の中で唯一ウイグル人などの人権問題などについて非難声明をだしていない国だったが今年4月に衆議院において国会決議がなさている。208回国会決議1号。しかし、その後のアクションがなされているようには思われない。包括的にどのように人権を守っていくのか見守りたい。