あらすじ
「彼女とセックスできる理由を話して」
性的不能だと信じていた夫の愛人は、醜く太った中年の女だった。
専業主婦の日奈子のもとへ、ある日、夫の愛人と名乗る、太った中年女性がやってくる。
夫のユキは長らく性的不能だったはずで、日奈子とはセックスレスの日々が続いていた。
いったいいつから、私たちの関係は、こんなにも不安定なものになってしまっていたのか――。
日奈子は、衝撃のなかで、ある行動に出る。
どんな夫婦にも訪れ得る、あやうい瞬間。
繊細な描写で、残酷なまでにむき出される心の機微を描く。
解説・東直子
※この電子書籍は2016年3月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
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Posted by ブクログ
自分に重ねて、
吐き気がするほど、
身に染みる話だった。
大好きだよ。君しかいない。
と、言うのに、
欲情されない辛さ。
「不能」を責める事は
パートナーであれ、タブー。
自分の知らないところで
"気持ちは無い浮気"をされる裏切り。
それならば。と、
自分も暴挙に出ざるをえない、
心の切迫感。
読み進めながら、なぜタイトルが
「アンバランス」なのか、
度々考えていたけれど、
最後のP204以降、ラストまでの
築いてきたもの総崩しにする
主人公、日奈子の叫び。
「オセロが白から黒になるように。」
まさに。
妙齢の女性の心理を描くのが、
本当にお上手でした。
Posted by ブクログ
登場人物が少ない分、終始日奈子の気持ちに寄り添いながら集中して読むことが出来た。
夫婦間と言えども相手を思いやるが故に話せない、夫婦だからこそ話して行きたい、など色々考えさせられました。
セックスなんて、しなくても生きていけると思っていた日奈子だったけれど、最後に由紀雄に取ったアクションは本当に切なく、二人のその後が気になるラストは余韻が残る。
タイトルの「アンバランス」がしっくりと来る作品。
Posted by ブクログ
加藤さんの長編、久々に読んだ。
この夫婦は最後どうなっていくんだろう。続きが知りたかったけど、この終わり方がよかったのかも。
急に突き落とされた絶望から、歪なまま、少しずつ日常に戻っていく。そして最後、バランスを崩し音を立てて崩れていく。この中で揺れ動く心情の表現が素晴らしかった。