あらすじ
グローバル経済の行く末は、ますます不透明になってきた。ブレグジットやトランプ大統領の誕生で、米国と欧州は傷ついた巨人としてもがき苦しんでいる。低成長に喘ぐとともに、格差の拡大で社会の足場が大きく腐食されているのだ。
本書の著者、ダニ・ロドリックは『グローバリゼーション・パラドクス』でこうした展開を正確に予測していた。本書は、『グローバリゼーション・パラドクス』以後の世界を展望した最新刊である。
本書によると、米英を中心とした自由主義陣営と中国を中心とした重商主義陣営が相互に共存できる時代がここ数年で終焉したという。先進国においても雇用や輸出が重視され、米国が重商主義に改宗しようとしているのは象徴的だ。
成長の核になる途上国の未来も暗い。グローバリゼーションとテクノロジーの進展は、貧困国に十分な産業化の時間を与えず、「早すぎる脱工業化」が世界を蝕んでいるのだ。
ポピュリズムや「怒りの政治」はこうした事態を栄養源として成長してきた。自由主義と重商主義の攻防にどう向き合うのか? 中道左派はいかに国民の信頼を取り戻すべきなのか? 資本主義を再構築するための新たな提言!
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
グローバリゼーションはやりすぎ
従来通り国民国家に大切なことの決定権を残したまま、温暖化など本質的にグローバルな問題への対処に集中しよう
グローバリゼーションの問題点も指摘しないと、ポピュリストが増える
Posted by ブクログ
ー こうしたトレンドの裏には、テクノロジーと貿易の両方がかかわっている。世界的に急速に進んだ製造業の技術進歩によって、サービスと比較した工業製品の相対価格が低下したことで、発展途上国の企業にとっては新たに市場に参入するインセンティブが低下している。同時に、製造業がより資本集約的、技術集約的になったことで、農業や非公式経済出身の労働者を吸収する潜在力が著しく低下した。貿易の面では、中国など成功した輸出国との競争や世界的な貿易障壁の解消によって、いまでは国内消費向けの単純な製造業を発展させる機会すらほとんどの貧困国には与えられていない。 輸入代替による産業化の余地がなくなったのだ。
我々がこれまで親しんできたような形の産業化を経験するのは、東アジアの虎たちで最後になるというのもありえない話ではない。もしそうなれば、これまで説明してきたような理由から、経済成長にとっては悪いニュースだ。発展途上国においては、バンカーや経営者と小商いや家事手伝いなど非公式経済で働く人々との間の収入や労働環境の格差は、かつてないほど大きくなっている。 人的資本や制度の機能を十分に蓄積する前に早期にサービス経済に移行したことで、先進国でさえ対応に苦しんでいる労働市場における格差や排除の問題をさらに悪化させたのだ。 ー
安易に内側に閉じこもり、ブロック経済化を招くのではなく、新しいグローバリゼーションのあり方と向き合わなければならない、ってそんな話。
Posted by ブクログ
「グローバリゼーション」という言葉をよく耳にするが、世界経済に対しては必ずしもグローバル化が良い影響与えるとは限らない。経済学者が唱える「自由貿易」に対し、違ったアプローチを示した本だった。
ー環境問題などはグローバル・コモンズである一方、世界経済はそうではない。ー