あらすじ
いくら身体を重ねても、完全に満たされることはない。だから俺は、今日もまた会いに来てしまう――。高校二年生の瞬の前に現れたのは、20歳以上の年の差がありながら、まるで魂を分けあったかのように心が通じる女性、那知だった。那知がかつて諦めた夢を叶えるため、気持ちをひとつにした二人はしだいに強く惹かれあう。だが、それは互いを失うかもしれない怖さを孕んだ日々の始まりでもあった。運命的な愛に揺れる少年の姿を、繊細な筆致で描いた著者会心のデビュー長編。
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Posted by ブクログ
〇ある眼鏡屋をめぐる、高校生の青春哲学物語。彼は何を見つけるだろうか?
メガネ男子・白砂瞬は、大学受験が近づく中父親の経営する眼鏡店で店番をするのが放課後のもっぱらの過ごし方だった。あるときそこに来た、メガネを作りに来たひどい視力の38歳女性・一村那知がパートとして働くことになる。絵のうまい彼女と古いマンガで意気投合し、そしてマンガアシスタントをしていたと知った瞬は、マンガ賞へ応募することを提案し手伝うと言い出して執筆がはじまるが・・・
白砂家は、恋愛結婚だったのに母が父をこきおろし、妹は生意気。その長男が瞬。どこにでもありそうな家族だが、なんだかいびつに読者は感じるはずだ。
一村家は、昔仕事していた那知が結婚し子どもを産んだときに、子供を守り切れず悔やんで離婚する。
その2つの家族にはさまれる瞬の、思春期最中の葛藤やうっとうしく思う感じは、なんだか懐かしくさえ感じるのではないか。友達にいたとか、自分もそうだったとか。
白砂家のいびつさは、最後に破裂する形で明かされるが、そこまで読者の興味をひっぱってやまない。
瞬がある女性に惹かれてしまうが、それはなぜだろうか。家族にヒントがあるのかもしれないが、瞬の家庭での抑圧、やりたいことを見つけられていない苛立ち、瞬のやさしさ、すべてが複雑に絡み合って、物語を作り上げる。
ここに紹介していない様々な登場人物のエピソードも面白く、高校生が「哲学」する様を見せつけられながらも、ずっと飽きずに読ませる小説になっていると思う。
結論は残念だったが、登場人物それぞれが成長できたという点ではハッピーエンドなのでは?
Posted by ブクログ
高校生男子・瞬。その高校生らしい行動と、脳内で繰り広げられる哲学的な思考の混じり合いが、とても面白く、共感できる。
彼が恋に落ちる年上の女性・那知さん。こちらはちょっと掴み所のない天然ボケな人だけど、一つの才能が露顕すると共に、どんどん魅力溢れる女性になっていく。
これは瞬の目線で那知さんを好きになるよなぁと読み進めていくが、すぐ恋に落ちるのでなく、同じ目標に向かって行動を共にするという展開がうまい!そして、同士から恋人へと変わる次の展開がまた見事!
二人の恋を多くの読者はどう捉えるだろう。
僕は100%応援してしまった。
映画のようなメリハリある展開で、一気読み。
いやぁ~、すごく好き!
Posted by ブクログ
息子の同級生を好きになる、という
なかなかの設定でした。
人を好きになるということに年齢は関係ない
というか、恋愛というものを越えたような関係として
描かれていたような気もします。
「ツインフレーム」という言葉も初めて聞きました。
主人公がこの先、普通に恋愛をするのか
ちょっと見てみたい気がしました。
私の中でイメージとして膨らんだ「那知さん」は
表紙の絵とそっくりで、良いイラストだなと思いました。
Posted by ブクログ
評価:3.7
誰がどう手を施せば事態を免れられたのだろう。世間体を気にしない不純な関係に陥ってしまった瞬だが、これはどうしようも無かったと感じる。
シラクミが、もっと過程を省みて自分のエゴを息子に押し付けなければ…と感じた。不純な関係に至ってしまう社会問題は枚挙にいとまがない。それについて考えさせられる題材だった。
ただ、どうも男性作家の突発的な性衝動は苦手だ。欲望を忠実にオブラートに包まずに描写しているから。
Posted by ブクログ
色々設定に凝っているが、簡単に言うと、同級生の母親と燃えるような恋をして、破局した男子高校生の物語。
残念ながら、好みの話ではなかった。恋は盲目だというのがメインテーマだろうが、どうもこういうストーリーのために不幸を装う体があからさまな小説は苦手。
好みはともかく、思春期の少年が禁断の恋をする物語を描きたかったのか?それなら漫画の部分は不要だと思うし、それ以外にも少々荒っぽい展開もあったのが残念。
作者は俺と同年代(たぶん同学年)、だからこその小道具(マカロニほうれん荘)なんだろうが、俺ら世代でこの物語を描けるのは、エエ意味にも悪い意味にも気持ちが若いなぁとは思った。