あらすじ
想像してみて下さい。ある日、「脳」だけで生かされることになった自分を……何てことをしてくれたんだ!十メートル四方の部屋を舞台に繰り広げられる、前代未聞の衝撃作!
本書は『浮遊』を改題したものです。
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Posted by ブクログ
交通事故で身体を失い、脳だけで生きる(生かされる)ことになった本郷医師の話。
人間とは何か、生と死とは何かという哲学的なことを考えながら読んでいかざるをえない小説。発想自体は昔からあるネタではあるものの、闇と時に苛まれながら自分ではどうすることもできない未来と過去を巡る思考の渦を読んでいるとすぐに引き込まれていき、一気読みしてしまいました。
人間の一番重要な臓器とはなんでしょうか。心はどこにあるのでしょうか。心はハートマークであらわされます。ハートとは心臓です。しかし心臓は血液を体中に届けるためのポンプの役割です。脳は思考し、感情をもたらす臓器です。
進撃の巨人には「心臓を捧げよ」という印象的なセリフがあります。昔の人に取って一番重要なもので心があるとされていたのは心臓でしょうか。心臓を生贄に捧げたという話はよく聞きます。
ただ、それと同じように頭(厳密に言えばもちろん脳ではない)を捧げたという話も聞きます。饅頭の話なんかはその例でしょうか。
それと脳死と植物状態の話も出てきます。いろいろ間違っているかもしれませんが自発的呼吸があるかないか、というところも一つあるそうです。でも現代の医学でも人工呼吸器などの医療器具を用いれば脳死状態でも生命活動は続けることが可能です。その状態は完全な死と言い切ることができるでしょうか。
またこの本の主人公である脳人間、本郷は思考することと周りの音を聞くことは可能ですが、アウトプットすることは不可能です。しかし、それが可能になったら?ブラックジャックの話でもありましたが、脳移植を完璧に遂行できたら?ロボットなどの機械を通して我々となんら変わらない活動が可能だとしたら?それはどこの誰で、生きているといえるのでしょうか?
更に行き着けばSF世界では良くあるように人間の記憶や脳のデータをコンピュータに完全にコピーをすることができれば?それはヒトなのでしょうか。もちろん我々が生きている間にそういったことが可能になるかはわかりませんが・・・
ともかくこの答えのない問に対して真摯に向き合うことが重要なのかもしれません。哲学者ではなくても、普段の生活で大切な人を見る時に少し考える。それが重要なのでしょう。
ところでこれの元の本は『浮遊』というタイトルだそうです。読み終わった後なら元タイトルの方が良いと思いますな。まあでも脳人間の告白っていうタイトルに惹かれて購入したのも事実なのでなんとも言えないです・・・