あらすじ
昭和23年6月、入水した太宰治と山崎富栄。天才作家と日本初の美容学校創立者の令嬢は、どのように出会い、恋に落ちていったのか……。いまだ謎に包まれる情死の真実とは!? 二人の生涯、太平洋戦争、恋と創作の日々、残された家族の思いを、徹底した取材で描き、スキャンダル「玉川上水心中」の真相にせまった愛の評伝小説。第29回新田次郎文学賞受賞作。
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Posted by ブクログ
第29回新田次郎文学賞受賞作
太宰治の最後、山崎富栄との玉川上水への入水自殺。
そこに至る経緯を、徹底的に取材して書かれている。
今まで、山崎富栄という女性を
ただ太宰治と最後に死んだ女性としてだけ知っていた。
しかもその面影は、日本髪に和服の楚々とした美人。
なんとなく、太宰のそれまでの経歴から
カフェの女給さんとか芸者さんとかだと思っていた。
ところが、実際は全く違った!
よく使われる日本髪の写真は、
冨栄が18歳(亡くなる10年前)の写真で、
日本髪のモデルをした時の写真だった。
というのも、富栄の父親は美容洋裁学校の創立者で
立派な教育者、成功した実業家だったからで、
富栄はその後継者となるべき人物だった。
富栄自身も、美容師としての立派な経歴をもつ
テキパキとしたキャリアウーマンだったのだ。
そんな富栄さんが、どうしてあんな最後を?
不思議さがすごく膨らんだ。
関東大震災、その後の第二次世界大戦という
大きな歴史的不幸が関係している、と言えば大げさか
大震災でまず学校が焼失するという1回目の悲劇
戦争でさらにパーマを含め事業ができなくなる悲劇
富栄自身も、結婚後1週間で夫が出征しそのまま他界する
これらの不幸がなければ、きっとあんな最後はなかった
と思う。
人間失格で見るように、
ずっと不安定だったらしい太宰治と違って
富栄は合理的で、積極的で、実力のある女性だったはず
それが、太宰の才能を支えるという一念からなのか、
人を一途に恋する不思議な力のせいなのか、
太宰を最後まで支えるために、一緒に死ぬという。
不思議で、不思議で、
私には全然理解できなかった。
ますます謎が深まってしまった。
それが「恋」なのだろうか?