あらすじ
中・高生から絶大な支持を集め続けている人気小説家が、シェイクスピアの戯曲『マクベス』を題材に行った、10代につよく響く特別授業。そこで語られたのは、感性を研ぎ澄ませて生きることや自分の頭で考え続けることの大切さ、そして読書が人生を切り拓くこと──。自作のベストセラー『NO.6』シリーズに大きな影響を与えた『マクベス』の世界から見えてくるものとは?
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Posted by ブクログ
あさのあつこさんが特別授業として真っ先に思い浮かべたのは『マクベス』だった。2018年10月、東京のちょっと優秀な中学生(桜修館中学)相手に、いっしょに読もうと選んだ古典である。おかげで、年末に『マクベス』を再読したけど、再々々読した気分になった。古典の内容を、あれやこれやこねくり回すって、楽しい。
先ずは予習で読んでいるはずの生徒に向かい先生(あさのあつこは作家になる前は小学校の先生だった)は、「印象に残ったセリフ」を聞く。生徒の返事は見事に重ならない。次に「色で表すとしたら『マクベス』は何色ですか?」と聞く。直感でいいから。
ー暗い紫。ー濁った赤色。ー暗い赤。ー真っ黒。ー緑で物語が進むごとに赤色が混ざってゆく。等々等々。あまり重ならない。
私は?と思いついてみる。何か見えそうな白色。つまり霧の色です。冒頭の魔女が登場する直前の色。これが『マクベス』の総てだから。
やっぱり人を殺す物語だから、血の色を連想する生徒は多い。私も中学のとき読んでいたらそうだったのかもしれない。大人になって、ちょっと捻くれ過ぎている可能性はある。
先生は、初めて読んだ時には暗い話で嫌だったらしい。けれども『No.6』を書く為に再読すると読後感が一変する。それがあまりにも鮮やかで、生徒たちにも一生懸命それを説明していた。「 『NO.6』という世界は、そのとき読んだ『マクベス』から受けた衝撃みたいなものに、引きずられているというか、大きく影響されて筆が進んでいったという部分が、後半は特にあるような気がしています」
『マクベス』について、私が初めて出会った「視点」は以下。
「これはマクベスと、マクベスによって殺される将軍バンクォーの、〝二人〟の物語だ!」バンクフォーは光だ、と先生は言うのです。光は眩しいから、だから、戯曲としては詳しく描かれていない、なおかつあっさり殺されるのである。「(略)みなさんの中にもいるかもしれません。あるいは、これから、出会うかもしれません──絶対勝てない、敵わない相手。その存在に打ちのめされるという体験。でもそれは少しも恥じることでも忌むべきことでもなく、自分の中にいるマクベスをエネルギーに変えることだってできると私は思っています。」そう、先生は生徒に説明します。
ビックリです。
でも、こういう見方も成立するから古典は楽しい!
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受講した生徒さんたちには、素晴らしい体験だったと思う。羨ましい。『マクベス』の読みも深まったと思うが、それ以上に本がもたらすものについて体感できたのではないだろうか。
Posted by ブクログ
読書会の課題図書だったので読んだ。
他の人が選んだ本を読むことから得られる刺激、栄養が心地いい。
そもそもマクベスを知らないので、シェイクスピアの作品ということを知れて勉強になった。
あさのさんの読書の授業も素晴らしい。
何が素晴らしいのかと言われると難しいけど、面白いし受けてみたいと思った。
好きなところや印象に残ったところを聞く、作品を色に例える、セリフを読むなどなど。
あさのさんも学生さんも作品からいろんなことを感じ取り言語化されているのも素晴らしいし、私もそうなりたいと思った。
Posted by ブクログ
東京の私立、桜修館という学校で20名ほどの中高生に作家である著者が授業をした記録。シェイクスピアの四大悲劇の一つ、『マクベス』の読書後の印象や感想を共有しながら、10代で本を読むことの意義について語られる。
本当にたまたまだけど、この前に読んだ本、『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』という本も、専門家が中高生に授業をした記録、という体裁が共通していて、比べるものではないけど比べてしまって、正直こちらの本の内容の薄さを感じてしまった。もちろんページ数も比べ物にならないくらい薄いのだけど、自分もマクベス好きなので、もっとマクベスの解釈とかシェイクスピアの見せ方とか当時の時代背景とか、何かそういう話が見えてくることを期待していたが、確かに著者のオリジナルの解釈や見方は示されるものの、テクストから何らかの根拠が示されるというよりは感覚的な話なので、マクベスを読んだ人たちの感想を共有する、という程度に留まっている点、どうしても物足りなさを感じてしまった。
どちらかというと、著者個人の読書体験、読書に対する思い、というものが話の中心だったが、その中でも印象に残ったところのメモ。若い時は見栄もあってたくさん読まないと、みたいな感じだったが、「ああいう読書は、もうできないですね。生き急ぐように読み急げるのは、若さの特権でしょうか。老境に入りかけた私は、出会えた本とじっくり、ゆっくり、芳醇で濃密な時間を過ごしたい。そういう意味で、人と本はよく似ていますね。たくさんの人と出会い、たくさんの経験(すてきなことも嫌なことも)とぶつかる時代も、この人はと定めた相手と時を共有する時代も人には必要なのですから。」(p.5)というところは面白かった。ただ自分はまだ読み急いでたりするので、この著者の領域には全然達しないけど、いつか自分にもそういう時は来るのだろうか。「本に対峙することで、自分が変わったことを知るんです。本は変わらない。本を合わせ鏡のようにして、自分がどう変わってきたかということが、そこに照らし出されるのです。(略)四十代になって感じ取るものとは何か。あるいは五十代になって感じ取れなくなったものは何であるか。本をバロメーターにして自分で知ることができるという意味でも、『十代の読書』というのはとても大切だと思うのです。」(pp.68-9)、という部分はその通りなんだろうなあと思った。ただおれは中高生で全く本を読まない人だったから、なんかそういうことが出来なくて、残念。でも確かに映画とかを結構中高生の時に見ていて、久々に見たら全然感じ方が違ってた、というのもあるから、読書に限らず十代でいろいろ経験しておくのは重要だと思う。「手軽に役立てようとして読んでいる人には得られない何かが残ります。一冊の本を読んで、閉じて、そのまま忘れたにしても、まるで伏流水のように、いつかじわっとにじみ出てくることがある。全部の本ではないけれども。」(p.88)という部分は信じて、おれも読書を続けたい。あとは「埋没してしまえる心地よさという恐怖」(p.107)の部分は、よく言われることで、なんかトランプの演説とかを見ていて、確かにこれの支持者は居心地がよさそうだな、とか思った。
すぐ読める本だが、この本を読む前にまず『マクベス』を読むべきだと思い、その点で、『マクベス』のあらすじや魅力、ポイント、読む意義を紹介する、テレビの「100分de名著」とはちょっと違うんじゃないかな、と思った。(25/01/20)
Posted by ブクログ
中高生への特別授業のため、『マクベス』の考察と言うより、あさのさんの読書への向き合い方や若者に伝えたいことなどに重きを置いている本書。最近は読みたい本が多すぎて冊数消化のために読んでいるので、じっくり咀嚼するように読むことをしなくなったな、と少し反省。来年は、あの場面の彼の心情はどうだったか、などと反芻しながら読むことも心がけたい。
マクベスとバンクォー2人の物語だという考察に納得。
Posted by ブクログ
読書感想文を書く機会がある人(未だにあるんだろうかそんな機会)におすすめ。ひとつの物語からどれだけの要素を抽出し、問いかけを作り、自分の感性や考え方に結びつけられるかというフローがわかりやすい。あさのさんと生徒さんたちのやりとりが良い例になっている。授業形式の強み。
最後にあさのさんオススメの本がリストアップされているのでそちらも是非読んでみたい。