【感想・ネタバレ】彼女たちが眠る家のレビュー

あらすじ

九州の離島に、この家はある。ある共通の過去を抱える女たちが、世間から離れ、静かに共同生活を送る「グループホーム」。互いの本名や出自も知らないまま、厳しい禁忌のもとに行動する彼女たちの家に、ある奔放な親娘が入居したことで、その日常が大きく崩れていく。女たちが迷いと衝突、葛藤の先に見る地平とは――。話題作を次々ものする著者が放つ、感動長編。(『虫たちの家』改題)

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Posted by ブクログ

ネタバレ

ある出来事が起きたとする。
それに複数の人が関わったとしたら、
事実はあくまでもひとつなのだけれど、その事件が彼らに与える影響はそれぞれだ。

マリアとテントウムシは、小さな離島に住んでいる。それからミミズとオオムラサキが加わり4人になった。そこはネット被害にあった女性たちが、世間の目から逃れて共同で暮らすグループホームだった。
ある日、そこに親子が入居することになる。母親はミツバチ、美しい高校生の娘はアゲハという名前をマリアからもらう。

最終的に、テントウムシはその親子に追い出されることになる。彼女が何があっても守ろうと決めた、自分の終の棲家になると思った『虫たちの家』から。
実はミツバチはテントウムシに復讐するため、娘をリベンジポルノの被害者に仕立て上げてまでここにやってきた。娘のアゲハは母親が何よりも大切なので、そのことに疑問は持っておらず、母親と同じようにテントウムシを憎悪している。


人を憎むのってエネルギーがいると思う。その憎悪の炎が消えないように気持ちを持続させるには相当な気力が必要だろう。だからミツバチは体が弱いのかな。憎むことに生きる力を使い過ぎたから。
かつてわたしも人を憎んだことがあった。でも結果としてそれは何の救いにもならず、そのことに固執し続けることにより、かえって自分自身を傷つけることになった。
自分の思いが通じずに、もどかしい気持ちになる。
本当のことが相手に伝わらずに、誤解したまま遠い存在になってしまう。
生きているとままならないことがたくさんあるけど、それでも強くしなやかに生きて行きたいと思う。なぜなら誰もがきっとわたしと同じ気持ちを抱えながら生きていると思うから。
この小説を読んで、あらためてそう思った。
出来過ぎだなと思う部分もあったし、もやもやってするところもあったけど、全体的によい話だった。あまりにも読みやすい文章が、物語をさらりと読ませ過ぎて、大切な部分を流してしまいそうになるのが残念なところではある。

0
2020年03月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

改題する前の「虫たちの家」の方が内容にもしっくりくる。
ネット、特にリベンジポルノなどで傷つけられた女性たちがひっそりと暮らす家に美しい娘アゲハとその母親であるミツバチが加わったことで急激に平穏が崩されていく。
アゲハの言動に翻弄される主人公テントウムシ。しかし病弱で部屋にこもっている母親にも何かある...
いったいなんだろう、何が目的なのだろう...とざわつく気持ちを抱えつつ、唐突かつ断片的に語られる誰かの古い記憶とテントウムシの過去、アゲハの情報を繋ぎ合わせていくドキドキ感がたまらなかった。
これ以前に2作品読んだが、どれもスカッとは終わらなかった。
この作品も然り。
そこが原田氏の持ち味なのかな、と思うし嫌いじゃない。

0
2020年01月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

虫たちの家。インターネットにあられもない姿を晒され日常生活を送れなくなった女たちがひっそりと暮らす場所に、新たに加わったアゲハとミツバチが島での日常にゆっくりと影を落とす。

テントウムシの視点での物語と、誰かの幼少期のカウンセリングの回想が交互に書かれて進んでいく。回想で語っているのが誰なのか気になってしかたなかった。復讐のために嘘をついて虫たちの家へと行くのではなく、本当にリベンジポルノを起こしてまであの島に行こうとするのが執着の深さを感じられた。
アゲハが何故事件の前に学校であんなことをしていたのか、理由は母親の影響で歪な人格形成をしてしまったからということなのか?テントウムシをライターだと信頼してアゲハのことを話したショコラが可哀想だなとちょっと思った。
とても面白かった。けれど事件の首謀者であるはずの現代のミツバチの視点がないのが物足りなかった。

0
2024年10月10日

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