【感想・ネタバレ】狂人日記のレビュー

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Posted by ブクログ 2023年11月08日

タイトルが『狂人日記』ですが、「狂人」という言葉と裏腹に、精神病院に入院している主人公の語り口はいたって冷静です。現実と虚構を繰り返す中、自己の状況を細やかに分析して内省しています。ただ、その冷静に語る心の内が、ところどころ読み手の胸を刺す言葉がいくつもあり、どんどん話しに引き込まれました。

主人...続きを読む公は幻覚や幻聴はあれど、病気で働くことが叶わず、一緒に暮らしている女に対して申し訳なく思っているところは、まったく健常者と同様です。それだけに、余計に気に病んでいます。逆に、当人が病気であることに甘えて、周りの人たちに依存できれば、少しは気分も楽にもなるのにと、気の毒なところも感じました(それができないから苦しいのですが)。

そんな主人公は、この先どうなってしまうのだろうと読み進めていくと、予想もつかない衝撃的なラストで驚きました。素直に周りに依存出来なかった主人公が、生きるために最後に吐露した言葉が、正にタイトルを表しているようで、とても印象的でした。

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Posted by ブクログ 2023年09月29日


思い浮かべるのは島尾敏雄の『死の棘』、武田泰淳の『富士』。
一人の人間が作品に執着出来る範囲を遥かに超えており、純粋に屈服させられてしまう。
とりわけこの作者のひたむきと言える作品へのエネルギーと凄みの加え方は読後も後年印象に残る。
読書体力は要すが名作。

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Posted by ブクログ 2023年01月15日

もう読みたくない!ってくらい落ち込む。それくらいリアリティがあった。「自分も将来こうなっちゃうのかなあ…」って気分にさせられました。

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Posted by ブクログ 2022年09月11日

幻覚と現実が区別なく淡々と記される。それでも根底にあるのは誰しもがかかえる孤絶で、主人公のあこがれる健常者という在り方自体がなによりもの幻想なのだと思える。その幻想を支えるのが病だ。「いつか病気が治ったとき、空には何もないだろう」という一文が胸を打つ。

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Posted by ブクログ 2022年03月16日

正気を失うという言葉を体感できる
主人公の脳内と現実が混じり合い、精神が崩壊していく様子の表現が素晴らしい。
所々生々しいのも良い。
1回読むだけで十分。

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Posted by ブクログ 2018年01月06日

 小説を読んでいて「これ、俺のことじゃないか?」と思えることってあると思う。
 ちょっとおかしな人だったら「断りもなく俺のことを書きやがって」と著者にクレームを入れる、なんてこともあるだろう(実際にあった訳だし)。
 僕はそこまで頭がおかしく……って書くとまずければ……純情無垢じゃないから、そん...続きを読むなことはしないけれど、読んでいる間「これ、この狂人、俺にそっくりだよな」とずっと思っていた。
 生き方が似ている、というか、他人への接し方、外の世界への接し方、社会との折り合いのつけ方、要するに己自身への接し方、それらがまるで自分を客観的に見ているように描かれている。
 そりゃそうだよ、こんな生き方してたら精神が疲れちゃうよ。
 実際、僕自身が今、職を探してあえいでいるのは、数年前に精神を壊して、仕事が続けられなくなったから。
 この本の主人公みたいに幻影を見ることはなかったけど、幻聴はあった。
 入院するまで重くはなかったけど、そこで人生、かなり狂わされた。
 そんなこんなの自分の影が本の主人公に重なりあって、読んでいる間、ずっとずっと得体の知れないプレッシャーがのしかかっていたように思う。
 そして、とてつもなく「生々しい」。

 圭子さんだって、これじゃ浮かばれないだろう。
 ずっとずっと彼を助けられなかった、彼を裏切った、そういった自責の念に苛まれながら生き続けなきゃいけないんだから。
 彼女の心中を察すると、そりゃ切ないし悲しいし、何とも言えない。
 彼女だって精神が異常なんだから……。
 つらいよね……つらい。
 それでも圭子さんは許されたんだから、母親よりも良かったのかも知れない。
 そういえば、同じく色川武大の「怪しい来客簿」に書かれていた印象的なフレーズを思い出した。
『私たちはお互いに、助け合うことはできない。許しあうことができるだけだ。そこで生きている以上、お互いにどれほど寛大になってもなりすぎることはないのである』
 まさにそれを地でいったのが主人公なのだろう。
 最後の最後に主人公が発する言葉。
「俺もつれてってくれ。おとなしくしてるから」
 これこそが、この主人公が、心の底から素直に発することが出来た、生まれて初めての、そして最後の言葉だったのではないだろうか。
 最後の最後に、やっと自分に正直に発することが出来たのではないだろうか。
 そう考えると、余計にむなしい。
 本当に本当に、つらい……つらい……たまらなく、つらい。

 この本に巡り合ったことに感謝している。
 ただし、後悔することになる可能性も含まれているだろうな、とあくまでも自分自身を客観的に顧みて、嘘偽りなくそう感じている。

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Posted by ブクログ 2014年06月11日

とても優しい小説だと思った。自分への優しさ、他人へのやさしさ。というより優しくありたいという気持ち。決して甘やかすのではない。この主人公は自分を甘やかそうと思っていないし、甘やかされて喜ぶタイプでもない。ただ現実があって自分がいるだけだが、それを真剣に見つめるということはすなわち対象へのこの上ない配...続きを読む慮であり、つまり優しさなのではないだろうか。
なによりも文章が優しい。主人公や主人公を取り巻く世界を見つめる作者の目が優しく、そして悲しい。ゴーゴリや魯迅の「狂人日記」との違いはこの点だろう。彼らは狂気をアイロニックに扱っているところがあるが、色川の作品にはひとりの男の必死な人生があるだけである。
悪夢というほかない幻覚に絶えず苦しめられながら、主人公はいったいなにを保とうとしていたのか。

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Posted by ブクログ 2013年03月18日

主人公と同棲相手の関係を、自分と今の交際相手に重ねてしまい、とても気が滅入った。自尊心がぶっ壊れているので、負い目を感じつつも人に依存し、そこをちょっとでも突っ込まれるとひどく傷つく。それが苦しいから孤立しようとするくせに、人の温もりを渇望してやまない。何故こんな面倒くさい人間を好いてくれるのかと疑...続きを読む心暗鬼になり、関係もギクシャク。
「身につまされる」というより、半分うなされながら何とか読み終えた。

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Posted by ブクログ 2012年05月14日

福武書店のハードカバーのほうも登録してあるけど最近再読したくてこちらを買って再読した。

いくつも泣きそうになる箇所があるんだけど、圭子の「生活って最高のことをすることよ」っていうせりふがぐっとくる。

あとは主人公の控えめだけど気風がいいやさしさというか。

きっとこれからも何回も読むんだろうな。

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Posted by ブクログ 2012年01月13日

淡々とではあるが、
しとしとと足音をたてて忍び寄ってくる漠然とした不安。
自分が歪んでいくのを自覚しながらも、
それを戻せることも無く、
隣にいてくれる人をただ傷つけ、傷ついていく。
恐ろしい程に徹底した描写である。

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Posted by ブクログ 2011年10月14日

伊集院静 氏の「いねむり先生」を読んで、この本を知った。
淡々と書かれた文章が印象的だった。
『無』の中に、日々の出来事だけが彩られて書かれてある様に感じた。その他の事は病気の事も幻覚も全て『無』の中で起きている様に感じられ、読んでいて著者と同じかどうかは分からないが『孤独感』を感じた。

いねむり...続きを読む先生の中で、先生に発作が起きた時「今度は自分が先生を救う番だ」という事で確か先生を抱きしめるかなにかする場面があったと思うが、そして最後に同じ患者で結婚した圭子も別れると言いながらも面倒は見ると言っている。

孤独感の恐怖...弟の幼い時の事ばかりが目に浮かぶ事...等々
赤裸々な告白....

音の無いシーーーーーーンとした世界を淡々と読み進んだ と言う印象

哀しいとかそう言う事ではなくて....なんと言うか そう言う事を知ったと言うか....

読んで良かったそして他の著書も読んでみたい。

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Posted by ブクログ 2011年07月21日

壊れていく人の頭の中にいるような気持ちになった。読んでいる最中は、真っ白な世界にたった一人いるような心細さを味わった。読後の異常な虚無感はこの本以外に味わえないだろう。つらくて悲しくて泣いた。いつまでも忘れられない一冊。

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Posted by ブクログ 2011年06月09日

病棟生活を綴った色川武大の最後の小説。読売文学賞受賞作。最初は、何だか話が単調で、読む気があまりなかったが、後半からクライマックスにかけて恐ろしいほどの感覚に襲われて、実に素晴らしい作品であった。

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Posted by ブクログ 2012年04月22日

だめだわからんわからんわからん

いやわかるっちゃわかるんだけど
絶対的にわからない壁がある

境界線の上に立って
ずっとあちら側を見ながら手を振ったり、手をつないだりはしているけれど
私はあちら側に体毎ダイブする覚悟はなくて
正直憧れるし正直理解できないし、という相反するものを背負って
ずっと境界...続きを読む線上にいるわけですが
あちらの人間は、あちらこそこちらと思っているわけで
私が理解していると思い込んでいるものは、その人からは理解できない所業なのかもしれません

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2021年09月18日

読んでたときは、主人公の男が感じる幻覚や幻聴、悪夢をどう捉えていいのか探しつづけながら一ページ、また一ページとすすめていった。ここ、いいなととりわけ思った場面はなかった。
でも桂子と対話する最後の場面がおそろしく気持ちを攫っていった。この小説の大半の部分を仕方なく読んでいたような気もするのだけど、仕...続きを読む方なく読みつづけてよかったなとおもう。話に出てくる人たちのことをどうやらちゃんと見ていたみたい。

解説が佐伯一麦でおおお!となった。佐伯一麦が『渡良瀬』のときに読んだ思い出の小説だとおもうととても感慨深い。好き。

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Posted by ブクログ 2021年09月08日

狂人とはどこからなのか。自分は健常者なのか。境目のあやふやなところを綱渡りのようにぐらぐらしながら歩いている主人公の定まらなさがどうにも切ない。痛い、苦しい、おかしい、怖い、それでも共感してしまう。なんのために生きているのか、生かされているのか考えなければいけない小説。

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Posted by ブクログ 2021年03月14日

浅田作品はいくつか読んだが、色川名義の小説は初。少し前の読売新聞に関連記事があり、読んでみた。

読み始めは幻想や夢の話が多く、途中で投げ出そうかと思ったが、次第に引き込まれてしまった。

殆どの場合、狂人も常人も見ただけでは分からない。自分に見えているものと他人が見ているものが同じとは限らないし、...続きを読む自分が狂人でないという確証も持てなくなってくる。

(110)

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Posted by ブクログ 2017年12月31日

支離滅裂な譫妄は狂人が常人を装って叙述しているようでそのしっかりした文章は彼が常人であることをはっきり意識させる。退院まではそう思っていた。しかし『狂人日記』の真価は圭子と同棲を始めた以降から発揮される。自身の狂気が自分の意識外で起こる恐怖と、親密なる者を喪失もしくは緊密に成れぬ恐怖が巧みに描写され...続きを読むている。時々真理めいたことを独白しながら、常人が欠陥者であることを体感せぬまま実感させられる件は哀しみと孤独を伴い読んでいてなかなかきつい。

本作品は心疾抱えた者が書いた自伝や私小説かと思っていたが、解説で色川氏は『麻雀放浪記』の作者だと知る。「狂人」を推察しながら本書を仕上げるは作者の力量に恐れ入る。

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Posted by ブクログ 2016年12月07日

読み終わるのが惜しいのに、あっという間に読み終えてしまいました。
精神科にかかったことのある私には共感するところも多く、すっぽりと作品に浸かってしまいました。

私はいま色川武大さんにハマっています。すごく読みやすくて、ずんずんと読めてしまいます。面白いのかというと、よく分かりません。作家本人の非凡...続きを読むな人生と神経病による幻視幻覚がベースになっているので類を見ない作品なことは確かですが、果たしてそれが面白いと呼んで良いものか。

『明日泣く』『百』『狂人日記』と読んで、今の時点で感じたことは、色川武大さんは現代の作家さんだなぁということ。昭和四年生まれだから戦争を経験しているにも関わらず、そこはするっと後ろへ流して、でも旧い匂いは残っていて、その匙加減が私は好きです。

そして小説を書くのが本当に巧いと思います。作家の個性を主張しない文章の巧さがあります。言葉がキザじゃないのです。小賢しくないというか、まっすぐな文章というか、正直な文章というか、そういう感じがします。そんなところは大好きな北村太郎さんに通ずるところがあります。

それから、言葉が生きているとでも言うのでしょうか、ほぼ心象描写だけなのにそこに景色が見え、生々しい現実世界が広がります。

主人公が語っていくという形はどことなく太宰治っぽい感じがあります。

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Posted by ブクログ 2013年08月10日

今までの人生の中で恐らく一番精神的に病んで辛かった時期に読み、自分の将来をこの小説の中に見たような気がして読みながらボロボロ泣いた。今読んだら、何を感じるのか凄く気になるけれど、怖くて再読できず。いつか読み返したい。

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Posted by ブクログ 2012年05月19日

魯迅作の同名の短編があるが、このような直截的なタイトルを掲げる作品は今後出版されないのだろうか。そんな過剰な言葉狩りの心配はさておき、精神を病んだ主人公の一人称で日々の生活を綴った本書では、彼の独白が非常に現実的な響きを持って読み手に訴えかけてくる。物語は病院内で幻影や幻聴に悩まされる様子を記した前...続きを読む半から、そこで知り合った女性との同居生活を描いた後半へと展開し、救い難い陰鬱な主題でありながらドライで魅力的な余韻を残す。巻末の著者の年譜と著書目録も嬉しい。

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Posted by ブクログ 2010年07月23日

「俺はこんなに弱い!」
「俺はこんなに辛いんだ!」ということが書かれている。

「ああ、辛かったでしょうね」と思える記述が続く。
でも他人はどうすることもできないよ。
こんな人を、誰が助けられるのだろう?

理由も告げずに去った圭子に期待を残しながら、彼は生きられるだけ生きる。

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Posted by ブクログ 2010年01月16日

俺も誰かの役に立ちたかったな。せっかく生まれてきたんだから

この言葉に一番共感した。
孤独とか許す許さないとか愛とか様々なものが混じりまって複雑で私には理解しきれていない。ただただ最後は寂しい…。

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Posted by ブクログ 2023年11月25日

現実と狂気の世界とが混在し、どんな状況にあるのか混乱する。こんな世界を生きているのは辛すぎる。そんな世界を、書き記すことが凄い。

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Posted by ブクログ 2020年10月09日

こういう、ああでもないこうでもないとぐずぐず言う人は嫌いだ。繊細なのかどうなのか知らないが些細なことで傷つきやすい。なのに人を傷つけることには敏感ではない。どうしろというのかと言いたくなる。私自身の鏡だと言えないことはない。しかし少なくとも私は諦めている。

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Posted by ブクログ 2016年04月19日

確かに狂人の日記。読んでると段々しんどくなる。誰しも程度の度合いとは思うものの、やはり、ここまで違うと本人も回りも大変だ。この手の話は基本誰も救われないので、あまり好みではないかな。

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Posted by ブクログ 2015年02月14日

どこか人間的な回路の一部が壊れていたり、制御出来ないと言う事を知っていて、「自分は普通じゃない」と自覚もある。
それは一時的なものであったり、あるキッカケで発露するものであったりする。常に壊れた状態である訳ではない。仕事もしていた。人とも触れ合っていた。
ただ働いて食って寝る…そう言った普通の生活を...続きを読む続けていくことが出来なくなったり、出来なくしてしまうそんな自分が好きになれなかったり排他的になってしまったり…
普通に生きようと変わる努力を続ける二人のやり取りを見ていて、普通とは一体なんなのであろうかと考えさせられてしまいました。
普通じゃない。
マトモじゃない。
気が狂ってる。
普通に見えてもみんな何処か狂っていたり普通じゃなかったりする筈…
要するにどんな風に出てしまうかが問題何だろうな。
人の脳裏を駆け巡る思考。それを活字で読んでいるからか本書に異常な印象はあまり受けませんでした。どっちかと言うと遣る瀬無さや諦観を感じた。
頭に中がどうであれ、生きるとは苦しむと言うことか…

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Posted by ブクログ 2012年09月12日

「時代を切り取る」というのはこういうことなのか、と今まで知らなかった感覚を知る。(私は感覚が弱いので、こういう風に分からせてもらえないと分からない)情景や、男女の結びつきよう、人付き合いのあり方など全てが古く、色あせてよめるのに気持ちの部分だけが普遍的にリアル。読んでいる中でのこの実感が何よりすごい...続きを読む

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2011年09月28日

ふわふわと夢の中を歩いているような感覚。
脱力感と、不安とを抱えながら、
夢か現実かわからなくなる霧の中を
分け入って、物語をたどっていく。
そして、たどりついた失望と絶望。
どうしようもなくつらい世界なのだけれど、
これを描ききった作者は、この病気で
亡くなった人のことを想い、書いたのだと
あとが...続きを読むきで知り、底知れぬやさしさを感じた。
やさしい、やさしい、繊細な人だったのだろうな。

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Posted by ブクログ 2011年07月06日

通勤で読むと気が滅入る。現実と幻覚が交差してどっちがどっちだか分からない。ふと思うと、現実も幻覚も自分が生み出しているのだから全て真実か、それとも現実も幻覚も全てユメのようなものか。どんなに理解しようとしても他人の境涯は決して理解することもできないし、言葉でも説明できない。しばらく寝かせてからいつか...続きを読むまた読んでみる。

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