あらすじ
本書での発達障害は、外来に訪れる人で圧倒的に多い、自閉スペクトラム症を念頭においています。彼らの中心的課題は「生きづらさ」。子どもの頃には気づかなかったけれど、社会に出てなぜかうまくいかない。そんな自閉スペクトラム症の特性を「コミュニケーションの障害」「同一性保持の傾向」「イマジネーションの障害」の3つととらえ、その現れ方と対処法をできるだけわかりやすく解説。本人だけでなく周囲の人に役立つ一冊です※この商品は紙の書籍のページを画像にした電子書籍です。文字だけを拡大することはできませんので、タブレットサイズの端末での閲読を推奨します。また、文字列のハイライトや検索、辞書の参照、引用などの機能も使用できません。
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Posted by ブクログ
吝嗇家なのはデジタル脳であり不確かなものは信用できないから。感情など当てにならず金銭は確かで裏切らないという安心感からケチになる。逆にいえばそれしか拠り所がないのだ。
演繹的な思考も得意である。経験にとらわれず論理的である。慣習などにとらわれないという良い面もあるが相手を驚かせてしまうだろう。
上記2点は腑に落ちた。新しい発見だった。
自分の見ている世界が全てで正しいと思っていたがこれからは改めたい。図解が多く分かりやすく読みやすかった。
Posted by ブクログ
テーマごとにがイラスト付きの見開き2ページにまとめられているので、非常に見やすく、理解しやすかったです。
こう言った本は、現実とピタリと一致する事はあまりないので、ちょっと参考になれば良いかな程度の熱量で読むのですが、対処法もわかりやすくて参考になりました。
良書ですね。
Posted by ブクログ
イラストが多くて読みやすい。
「産業構造の変化で少数派の脳が生きにくくなった。現代の仕事で求められるのは正確さ/スピード/コミュニケーション力」というところにグサっときた。他にはこんな文も印象に残った。
・自分の特性を知り、自分に合った生きた方や働き方をするとよい
・指示通りにやってみよう
・ニコニコ聞き役に徹し、余計なことは言わない。
・多数派の脳の人達は極論すれば平凡人
Posted by ブクログ
すごくわかりやすかったです。
自閉症スペクトラム症候群について
コミュニケーションの障害とイマジネーションの障害に当てはまる気がしました。
コミュニケーションの障害→話し言葉の理解が困難。言外のメッセージが受け取れない。曖昧な指示を取り違える。指示代名詞が何を指すのかわからない。→文字やフローチャートでのメモをとる。
イマジネーションの障害→展開を予想できない。準備が出来ない。全体の中の位置づけが出来ない。→仕事のフローチャートを図示して確認してもらう。
ADHDについて
不注意は女性に多く、大人になっても治らない。
混沌性も同様。計画が建てれない。優先順位がつけられない。片付けができない。先送り。
対策
ミスなどはパターン化してみる。
Posted by ブクログ
少しうん?と思うこと(それは言い過ぎでは……?)はあったけど、大人の発達障害的性質を持つ人々自身、またその周りの人々全てにとって、理解し、接するために必要なことが全て薄く浅く記載されている本だと感じた。
特に本書の特徴(類書との違い)は、発達障害に対するネガティブな面だけでなく、発達障害のポジティブな面を論理的に記載してくれているところ。障害と聞いてネガティブな印象を持ってしまうのが常なので、これは大きい。是非オススメしたい。
p.10 不当な評価につながってしまう
発達障害のある人は、本来持っている力がうまく発揮できていません。そのため、職場で不当に低く評価されてしまいます。現代は、仕事を自分で作り出せることが有能さの条件です。しかし、自閉スペクトラム症では、特性の1つにイマジネーション(形のないものを思い浮かべる能力)の障害があるので、仕事を指示通りに進めることができても、次に何が必要なのかが想像できません。その結果、「言われたことしかできない」「マニュアル人間」「気が利かない」といった評価につながってしまうのです。
p.17 入力の障害は他にも影響する入力の障害があると出力にも影響します。場にそぐわないことを平気で言ったりします。「学習」と言うフィードバックが得られないためです。失敗したり、誰かを怒らせたりした時、その理由が説明されて、その時はおさまったことがあっても、また同じことをします。周囲の人は、その都度、失敗や怒りの理由を説明しなくてはなりません。
p.30 現代では行きづらい、少数派の脳を持った人たち
狩猟採集時代から有能な能力
発達障害は治療が必要な「精神疾患(病気)」なのでしょうか。自閉スペクトラム症について言えば、病気と言うより、少数派の脳を持った人と言う方が適切です。少数派のノートは、人間が進化してきた過程で生き残ってきた、ある優れた脳のシステムです。自閉スペクトラム症の人は、視覚的な記憶力が極めて優れていることがよくあります。見たものを、そのまま記憶しています。この能力は狩猟採集時代には、非常に有用でした。どこに獲物がいたのか、水のある場所、有用な植物が生えている場所などを鮮明に記憶しているからです。また、 知覚過敏の人も多くいます。この能力も役立ちます。遠くのものが見え、遠くの音が聞こえます。匂いに敏感で、近づいてくる動物や食べられる植物が分かります。湿気や風から天候の変化を感知することもできます。こだわりと言う特性があるとも言われますが、これは1つのことに集中できる能力です。動物の習性を熟知し、植物それぞれの使い方が分かります。出来栄えにこだわり、狩猟のための鋭い武器を作ることもできました。かつては人間は集団で生活し、狩猟採集を行ってきました。集団の中に、こうした能力を持つ人間は必要だったのです。少数派の脳を持つ人間は、その有用性から、進化の過程で生き残ってきました。
多数派の脳が持っている能力は
一方、多数派の人たちは、逃げるものへの対応力、今後の展開を想像するイマジネーション力、情報をうまく処理する能力を持っています。こうした能力を持った人々人は、少数派の脳の人たちから情報得て、それをうまく使うことができます。獲物の獲物や植物のありか、天候の変化等の情報から、この後の展開を予測して、相互にコミュニケーションをとりながら、共同で狩猟採集を行います。少数派の脳の人が作った武器を用いながら、支配力を持つ人間が生まれてきたので生まれてきたでしょう。こうした脳のシステムを持った大多数の人たちも進化の過程で生き残ってきて、現代でも多数派となっていると考えられます。
農業や漁業、手工業にも向く脳
農業や漁業にも少数派の脳は有用です。種まきのタイミングが決まっていて、天候を見て、外れないように合わせなくてはなりません。その後の手順も例年通りにやることが大切です。収穫したらまた次に備えて同じように準備します。漁業も同じで、どこにいつ魚の群れが来るかをきっちり覚えている必要があり、漁の手順も決まっています。日本でも近代まで、国民の多くが農業や漁業に従事していました。その中で少数派の脳の人たちは働いてきたのです。
同様に長く続いたのは職人の時代です。鍛冶、建具師、大工、陶工、刀工など、 現代では匠と呼ばれるような名工の中にも少数派の脳の人は多かったはずです。1つの技に技を鍛えあげるには、10年以上も同じことを飽きずに、こだわり続けていかなければなりません。少数派の脳の人が活躍できるジャンルです。現代ではサービス業にあたる職業に忠実に従事していた人は、江戸時代にはほんの一握りでした。商業の中でも、決まった顧客に決まったものを売るような小売業なら、少数派の脳の人でも務まりますし、少数派の脳の人が働いていたとしても、従事者の絶対数が少ないので、ほとんど目につく事はなかったでしょう。
産業構造の変化で少数派の脳が生きにくくなった
ところが、産業構造がここ20年ほどの間に大きく変わりました。、職人的な仕事がほとんどなくなりました。一部は研究職などで残っていますが、大部分はなくなっています。農業、漁業、林業、小売業なら、自閉スペクトラム症の人でも問題なく働けますが、現在は多くの人がサラリーマンになります。ADHDの人も、世の中にたくさんいました。落語で登場するような実に親しみ深い人たちですが、今、彼らも生きづらい時代になっています。現在は多数派のを持った人たちが行きやすい時代です。しかし、広い視野に立ってみると、少数派の脳が劣っていて多数派の方が優れているとは言えないことがわかってきます。多数派、少数派と言う言葉には、優劣の価値観はありません。
仕事で求められることが変わってしまった
IT革命を経て何が変わったかと言うと、正確さ、スピード、コミュニケーション力の3つが仕事に求められるようになりました。いずれも、多数派の脳には問題なくできることだけれど、少数派の脳にとっては難しいことです。発達障害にはグレードがあり、重い人、軽い人がいますが、多かれ少なかれ社会に適応しづらいと言う特性があるので、仕事が「できない」と言う評価になりがちです。指示したことをやるが、次にやることがわからないし、言われたことしかやらないので、「気がきかない」などと言われます。「マニュアル人間」とも揶揄されますが、もともとマニュアル通りにやることが得意なのです。
少数派の脳は「事例化」されていなかった
産業革命の変化が、新しい精神疾患を作り出しました。医療の対象ケースとして挙げられることを「事例」といいます。これまで、少数派の脳の人は「事例化」されることがありませんでした。事例になってしまうと、精神科を受診しないといけないことになってしまいます。発達障害は時代が生み出した「事例」であり、病気では無いのです。時代が生み出したという点から「障害」と言うのも違和感があります。いわゆる「障害」とは、身体障害や、精神科なら双極性障害や適応障害のように、何らかの対応や訓練、対症療法が必要なものです。発達障害はそうした障害とは違うからです。いわゆる障害ではないのに、ここでもなぜ発達障害と言うのか と言うと、本人は1人で生きていく上で差し障りを感じているからです。その意味で「障害」と言う事を当てることに異論を唱えるものではありません。しかし、いわゆる「障害」と言う言葉に引きずられると困難の本質が見えなくなるので、ここは理解してほしいところです。繰り返しますが、脳のタイプが多数派が少数派かと言うことです。よく、脳の「癖」と言う言い方もされますが、これも違います。癖なら、「直そう」と言うことになりますが、少数派なのは直す・直さないの問題では無いからです。かつては世界は多様でした。締め付けが緩く、熱い時代だったと思います。そういうときには溶けていたつぶつぶも、世界が冷えてきて流動性がなくなると、結晶化されて表面に出てきます。発達障害は、この析出した決勝に例えることができます。
少数はの脳であることに自信を持って
自分が発達障害ではないかと言って受診してきた人たちに、「あなたは少数派なのを持っている」と話をすると驚きます。子供時代から、自分は少数派だと思っていなかったようです。「こういうことがありませんでしたか」と聞くと、「みんなそうだと思っていた」と言います。ただ、何か自分は周囲と違うと感じていた人は少なくありません。劣等感につながっている人もいます。少数派の脳の人は、自分の特性を知り、その上で、自分に合った仕事の選び方や働き方をすると良いでしょう。かつて性的少数派の人たちは社会の理解が得られず、生きていくのが大変でした。しかし徐々に理解が得られるようになってきました。発達障害のある人たちも、今は生きづらい時代ですが、決して劣っているわけではない、有用な少数派の脳を持っている人間だと自分を信じてほしいと思います。
周囲の人たちは少数派の脳を理解しよう
発達障害には生きづらさの障害があります。ですから、現実の中で、彼らの生きる辛さをサポートするシステムを作っていくことが求められています。まず、多数派の脳の人たちは、少数派の脳のことを知りましょう。多数派の脳の持ち主たちが当たり前だと思っていることが、少数派の脳の人達には当たり前では無いのです。どのような特性があるのかを知りましょう。少数派の脳の人にある特性に合った仕事を用意するなど、職場では何らかの配慮をしないといけない時代になっています。それは「我慢」ではありません。 お互いの脳の違いを知り、お互いの価値を認め合えば、共存していくことができるでしょう。
p.48 最も理解できないのは「人間」
職場では通っても家庭では通らない
デジタル脳には仕事の向き・不向きがあり、大まかに言えばスペシャリスト向きです。また、演繹的な論理思考には有利で、職場では、ある程度理屈が通ります。ただし、家庭は理屈では通らないので、パートナーが苦労することが少なくありません。※演繹的な思考とは…物事を経験に頼らず一般的な論理から考えて結論を導き出す思考。その代表が三段論法で、「A=Bである。C=Aである。だからA=Cである」と考えていく。
p.56 同じことを続けていれば安心できる
ものへの「こだわり」とは少し違う
発達障害があると、見たものに見た上の意味をつけることができません。そこで、見たものに、自分なりのわかりやすいやり方で関わろうとします。(e.g. おもちゃと実際に走っている車とが結び付けられず、遊び方が想像できない。目に見えるもの、つまり車輪を回し続けることで安心する。)自分が知っていること、慣れていることをやり続けるほうが、安心できるのです。これを「同一性保持」と言い、「固執性」の中心となる特性です。固執性は「こだわり」と言われることが多いのですが、一般的な意味とは少々違います。「こだわり」には、趣味的な要素があります。しかし、 達障害では、思考の切り替えや視点を変えるなどの「心の移動」ができないのです。
変化のない環境で深く追求したい
「同一性の保持」とは、「変化に対する抵抗」と言い換えることもできます。同じことをやるにも慣れた環境の方が安心ですから、環境の変化に抵抗するのです。日常の場面では、臨機応変な対応が苦手です。予定外の出来事が起こっても、応用したやり方をイメージすることもできないので、いつもと同じやり方で対応しようとします。
強迫性に見られることもある
頑なに確認作業や手洗いなどをやり続ける場合は、強迫症と見誤られることがあります。強迫性との違いは、その行為を行っている時、本人が苦痛を感じてないことです。強迫症の場合は、手洗いなどを「やめたい」だけれど止められずに苦しんでいます。発達障害の場合は、やめたいと思っていません。
p.58 ひとつのことを深く掘り下げていく
発達障害のある人は、変化に対応できず、同じことをやり続けていると安心できます。わかりやすく得意な分野に耽溺し、深く掘り下げていく様子は、「穴を掘る人のようです。
得意な分野でスペシャリストになれる発達障害のある人は、1つの分野にする傾向があります。その分野とは、本人にとって「わかりやすい世界」です。関心のあるテーマを居続けたり特定の知識を身に付けたりして、そのジャンルのスペシャリストになることもあります。仕事上では、職人や専門家に向く特性です。狭い領域の知識は豊富になりますが、特定の領域のことしか知らず、興味のあることが限定的なので、ムラができます。 こうした特性から、例えば恋人ができにくいかもしれません。自分の得意な分野の話題ばかりでは、パートナーは作りにくいでしょう。
「穴を掘る人」と表現できる
1つのことを掘り下げていく様子は「穴を掘る人」です。掘った穴の中は見慣れた世界。思い通りにコントロールすることができる、安心できる世界です。穴を掘り続け、やがて壁しか見えなくなると、物事を俯瞰的に見る事は困難になります。
p.64 「同一性保持の傾向」は長所にもなる
できないことや叱責されることばかりに目が行き、自己評価は下がっている人がいます。しかし、発達障害の特性は、長所にもなり得るのです。自己否定に陥る人もいるが職場でのミスや叱責が続くと、自信をなくしたり、自己否定に陥ったりするのは無理ないでしょう。しかし、人間誰にでも苦手な事はあるもの。自分だけがだめなわけではありません。発達障害の特性は、見方を変えれば長所でもあります。同一性保持の傾向は、常に自分のやり方をパターン化してやっていけると言うこと。決まったパターンで処理できるような仕事であれば、長く続けることができます。この特性はスペシャリストに向いていると言えるでしょう。
飽きずに同じことを続けられる
臨機応変に対応できなくても、マニュアルさえあれば、ルーティンワークができます。多数派の脳では飽きてしまうようなことも、多数派の脳は飽きません。ほとんどの人が真面目で、嘘をつかずに働きます。たとえ仕事が覚えるのは遅くても、いちど覚えて慣れてしまえば、人並みかそれ以上に働くことができます。
p.76 文化を作る人と文化を広げる
アインシュタインがいなかったら、人類はどうなっていたでしょう。少数派の脳の人たちは文化を作る人でした。一方、多数派の脳の1つは、極論すれば平凡人です。文化を保持して広げる人、と言っても良いでしょう。文化を作る人、文化を広げる人がいて現代の文化があるのです。
(自閉スペクトラム症を持つ人の特徴)
・同一性保持の傾向(同じことをやり続けられる)
・デジタル的思考(0か1か)
・穴を掘る人(ひとつのことをつきつめる)
↓
(職業選択時に考えるポイント)
・専門的な仕事か
・その仕事に没頭していてよいか
・同じパターンで行うことができるか
・マニュアルがあるか
・IT関連、科学関係などは、コミュニケーション能力より技術的な力が求められる
・司法書士や教員、医師などは免許によって保証される
↓
(向く仕事)
・ひとりでできる業務
・論理的業務:経理、研究職、統計など
・定型業務:マニュアルが有る
・職人的業務
・IT関連:Web制作を含む
・美術、デザイン、音楽
・司法書士
・教員、医師
・技巧的な仕事
(向かない仕事)
・環境が目まぐるしく変わる職場で働くこと
・臨機応変や応用力が必要な仕事
・対人関係のスキルを求められる仕事
・チームワークを前提とする仕事
・気配りを必要とする仕事