あらすじ
91歳の誕生日を前にして、長年付き添ってくれた寂庵のスタッフたちが一斉に辞めることになった。最年少、24歳のモナを除いて。好きな仕事に専念してほしいとの心遣いからだった。出家以来40年ぶりの革命で、モナと二人の新しい生活に入る。「毎日が死に支度」と思い定めて、この小説の連載も開始した。
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Posted by ブクログ
満九十一歳の革命とその一年、或いは人生の物語。ほほえましい死に様というのがこの世には有るのだな、と思わず舌を巻く。
齢八十三にして夫を亡くした独居の我が祖母は、日々何を思い今を生き、その老い先に何を思うのか、そんなことが知りたくなった。
話題の芥川賞作品でも読もうかしらと本屋に寄ったものの、何か漠とした不安がよぎって躊躇して、手にしたのはこの本だった。
薄気味悪くてイヤらしいカバーイラストだな、と思った。作者の顔は存じているが、一冊も読んだことはない。知っていることといえば、男に溺れて出家した流行作家、というくらいの偏見に満ちた情報だけで、人柄も知らないので特に好きでも嫌いでもない。
読み始めるとそのアクロバティックな構成、時に飄々としながら時に繊細な眼、流麗な筆使いに乗せられて、ついつい読む手が止まらない。ネットで検索してみると、さぞ女ウケが悪そうな(男ウケしそうな)風貌の美人秘書がヒットして、虚実想像を織り交ぜながら読み進めるとなんとも言えず面白い。
はたして「死に支度」を前に読むべき本ではないけれど、いつ訪れるやもしれない「死に様」について思い巡らすには参考になるところは多い。私のような寂聴ヴァージンの方はこの本を読むことで、身近になるし、きっと好きになる。そして読後には、あの珍妙なカバーイラストもなるほど納得の感がある事を付け加えておく。
Posted by ブクログ
瀬戸内さんの本は晴美さん時代のものがいいとわたしは思っている
だから最近のものは読まないことにしている
でも本好きの友人がドサッと貸してくれた中にあって
パラパラとしていたら、つい引き込まれた
91歳(現在は96歳)の時に書かれた『死に支度』って、
ああた、充分お支度が出来ているのじゃございません?
と言いたくなるような賑やかな身辺雑記風小説
相変わらず達者、筆運び、文、構成、ボケてはおりません
ま、晴美名義最後の作品『いずこより』の後編のような気もしないではない
その作品をわたしが読んだのは1974年、
その前年1973年に51歳で得度され寂聴尼になった
華々しい記事などで随分喧伝されていた
もうすこしひっそりとなさればよいのにとも思ったが
興味を惹かれたのもほんと、わたしも若かった(33歳)
そんな気持ちになるのはなぜゆえに・・・と
さっそく自伝的小説『いずこより』を読んでしまったのだから
その、週刊誌の記事のような人生遍歴は
その後何度もあちらこちらで話されていて、もう珍しくもなんともないけど
「子供を捨てて恋愛に走った」という
その時はその率直な書きぶりに驚いた!
『いずこより』わたしは来たのでだろうか?より「いずこへ」いくのだろうか?
と思えるほどエネルギ溢れた小説だと感じた
51歳の寂聴さんが91歳で『死に支度』へ来たのだろうかね
でも、でも、この著書でもまだまだお元気なんだけど・・・