あらすじ
第1逆理「二分割」――動くものは、終点に達する前にその半分の地点に達しなければならないので、動かないとする。第2逆理「アキレス」――走ることの最も遅い者ですら最も速い者によって追いつかれない。第3逆理「矢」――動くものはつねに、今、等しいものに即してあるとすれば、動く矢は不動である。第4逆理「競技場」――半分の時間がその2倍に等しい。
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Posted by ブクログ
有名な「アキレスと亀」を始めとするゼノンのパラドクスを通して、時間とは?存在とは?という哲学の根本に迫っていく名著。ゼノンのパラドクスの解明をするのではなく、なぜゼノンがそのようなパラドクスを発案したかを考えることにより哲学を探求していく。読み応えがある。しかしながら、ゼノンのパラドクスのような明らかな詭弁としか思えないものが、未だに論理的に説明ができていないということを知って驚いた。あのバートランド・ラッセルでさえ説明ができないとは(正確には説明をしているが、説明になっていないとは)。。。。なかなか奥が深い。
Posted by ブクログ
ゼノンのパラドクスが投げかけている哲学的問題をていねいに分析し、その考察をおこなっている本です。
著者は、ゼノンのパラドクスを紹介しているアリストテレスのテクストに分析を加え、そこからゼノンの問題がなにであったのかを慎重にとり出します。その結果、ゼノンが師のパルメニデスの哲学を擁護するために、その批判者たちの議論を論駁する目的でパラドクスを考案したということであり、そこで彼が念頭に置いていたパルメニデスの批判者たちの意見とは「多」の理論であったことが明らかにされます。
また著者は、数学における連続についての議論にもとづいてパラドクスの解決を図ろうとするラッセルに代表される見解を批判し、一と多の概念をめぐる形而上学的次元に問題の場面を設定しています。他方、ベルクソンの解釈については、彼がゼノンの意図を誤解していたことを指摘するとともに、ゼノンの真意が意外にもベルクソンの立場に近いものであったと論じられます。
「あとがき」には、難解な本書の議論を読みやすいものにするべく著者が格闘した経緯が語られていますが、そうした著者の苦心のあとは本文のそこかしこにたしかめられます。それでもある程度の根気を必要とされる内容ではありますが、ゼノンのパラドクスに多少とも関心のある読者であれば読み通せるのではないかと思います。