あらすじ
独自の社会主義論と国家論を展開し、二・二六事件の蹶起将校たちの思想的指導者だった北一輝。国体論を批判し、当時の名だたる憲法学者たちとことごとく対決した彼の思想とは、いかなるものか。伊藤博文、有賀長雄、美濃部達吉、井上毅、穂積八束などなど、近代日本の礎となった思想との対抗のなかに北を位置づける快著!
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Posted by ブクログ
本書を読んだ理由は、2・26関連で必ず北が触れられ、その思想を確認したかったからなのだが、、、意外にも自身で漠然と謎と思っていたことの一つの解を本書で得た。
国民総動員体制時代に愛国心の醸成等の必要性は理解できなくもないが、建国時、古事記にしても、国体論にしても国を興すときになぜこんなにまで正当性、拠り所を古今東西求めるのが謎であった。その一つの解として、著者が示したのはヴァレリーの「神話」は一つの考えとしては納得できた。
「神話」
・人が何かを創造する際にそれに意味を与え、それを理解するための公理。
・自然における創造がそうであるように原因を要求し、自ら出現した後で
原因や合理性を求めて過去に遡行する
・事後的に原因を生み出す
・虚偽であっても「神話」がなければ、人間は(中略)無意味の錯乱に陥る
マルクスから始まり、ニーチェ、ヘーゲル、プラトンまで用いて語られる北自身の思想には「神類」、「(天皇と国民)一体化」あたりから論理の飛躍が大きすぎて共感はできない。
また、青年将校たちが北の思想に何を見出したのだろうか?天皇と国民の間の「君側の奸」が彼らにとって統制派でそれを打倒するのに北のロジックは必要だったのか?そもそも彼らに事件その後の明確なイメージがあったようには今時点では感じていない。
著者は北の思想に一貫性を見出すが、他の思想家だと矛盾だが、北だとなぜか「妥協」後に「妥協」ですらなく、理想と現実の中でたどり着いた「境地」となるのは甘くないか?