【感想・ネタバレ】井伊直虎 女領主・山の民・悪党のレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ 2017年05月14日

NHK大河ドラマの主人公に抜擢されながら、その名を直接確認できる公の史料がたった二点のみという、恐らくは同番組の歴史物史上最もマイナーな存在といえる井伊直虎。本書は同女の負った宿命に纏わる3つの謎を呈示し、序章で直虎の活躍した時代とその生涯を紹介しながら、終章でそれを解き明かすかたちで論が進められて...続きを読む行く。

著者の論を牽強付会と咎めることなかれ。本書を読めば理解できるが、何せ直虎に関しては客観的資料が極めて少ないのだ。しかし著者のようなプロの歴史家は、少ないながらも現存する史料の中から何がしかの考証を導き出さねばならない。そのような制約下、入手可能な史料をコンパイルし、直虎という異色の存在意義を何とか明らかにしようとする著者の試みはすぐれて知的興奮に富むものだし、読み物としても多分に面白い(ジョセフィン・テイ「時の娘」を想起させる)。そもそも、史学とは無数の歴史家の弛まぬ探索と推論から紡がれているものだということを改めて想起させてくれる良書。推測が多いと批判する向きは、何でもかんでも記録される現代とは異なり、過去の出来事の多くは客観的証拠を持たないということを今一度認識すべきと思う。

しかしそれにつけても本書の著者名である。「琢史」。「史」を「琢(みが)」く、とは良くも名付けたものだ。そしてその名の通り、乏しい史料を多面的な考証により磨き上げ、新たな歴史観を呈示しようとする著者の意気込みに敬意を表したい。無駄のないストイックな文体にも好感が持てた。

0

Posted by ブクログ 2017年01月09日

御多分に洩れず、今年の大河ドラマの主人公ということで読む。正直どんな人なのか知らなかった。何せ、読み方も女性という事なので「なおこ」と読むのかと思っていたくらい。

筆者は地元出身の若い歴史学者らしいが、中々スリリングな論考で楽しい読者ができた。所々で、強引な論考も見られ、筆者の歴史観が押し付けられ...続きを読むる部分もあるが、概ね納得できる物になっている。

それにしても、古文書の原文が自力ではほとんど理解できない自らの学の無さに、ほとほと情けなくなる。

0

Posted by ブクログ 2022年01月11日

今さらながら井伊直虎のことをあまり知らないなと思い、手に取った1冊。
前半で直虎の人生を概要し、後半で作者なりの直虎に対する見解を述べている。
個人的見解で申し訳ない+大河ドラマの方を見ていないので恐縮なのですが、よくぞ大河に出来たなというのが率直な感想でした。これで大河??いや、もちろん作者の「山...続きを読むの民」統率としての直虎には納得なんですが、
大河にするにはなかなか要素難しかっただろうなと…。この本によれば、領主をやってたのってほんの僅かな時期だけだしね。それもなかなか意外。

井伊がその後徳川方になったばかりに井伊家がよく描かれがちな中、最初のうちは井伊家も家督争いやらでドタバタで、それに巻き込まれつつ、今川家に揉まれつつであったという見解は良かったと思う。
そりゃどこの家もそんな最初から上手くいくはずないと私も思ってるので(笑)

0

Posted by ブクログ 2017年12月04日

今更ながら2017年の大河ドラマ(といっても12月現在、もうすぐ終わってしまうけど)井伊直虎について現実世界ではどんな感じの人だったのか気になったので読んでみた。この本は1、2章立てになっていて、1章では井伊直虎の生涯、2章ではタイトルにもある山の民や悪党などを絡めた著者の持論が展開されていた。
...続きを読む想としては、そもそも井伊直虎についてはほとんど資料が残っていないという事を知って、そんな中1年間のスパンの大河ドラマになっていたことに驚いた。1章では現実世界での直虎の生涯や井伊家について知る事が出来て大河ドラマよりかなり残酷というかこれが戦国時代なんだなって改めて思わせる事ばかりだった。特に但馬関連は全然違うからけっこうショックを受ける人も多そう。2章では資料がほとんど無い中でも、著者の持論が展開されていて直虎は山の民だったり悪党だったという考えはなるほどと思った。大河を観ていても確かに山の中に隠し里があったり、木を切る仕事を井伊家関係者が頼まれたりで、山の民感はちょっと納得できた。著者の持論に対する熱意が思ったよりすごくて何でかなと思ったら、出身地が浜松だから井伊家についての思いも強いのかと納得した。あと、文章の中で例えとしてもののけ姫が出てきて、井伊直虎=エボシ御前や、井伊谷=たたら場みたいな感じでもののけ姫の世界感に当時の井伊家周辺を当てはめてたのが面白かったし、そのおかげで映像も想像出来て話がちょっとだけ理解しやすくはなった。

0

Posted by ブクログ 2017年04月09日

大河ドラマにあわせて、「井伊直虎」という人物を学ぶ。筆者は地元出身の若手の研究者。

史料をもとに直虎の生涯を追ったあと、井伊氏は「山の民」「悪党」であるとの論を展開している。大きな視点で「直虎」を、歴史の中でどう位置付けようかとする試みであり、ただの人物伝になっていないところがおもしろい。

筆者...続きを読むも言うように「仮説」が多く「実証的でない」と思われる部分も確かにあるが、持っていき方の視点は興味深く、ここからまた、遠江井伊氏の歴史が明らかになっていくと良いと思う。

0

Posted by ブクログ 2017年02月01日

個人的に井伊谷や気賀に縁があり、高殿円の「剣と紅」も以前読んだ。

本書に書かれた次郎法師=直虎の曽祖父の井伊直平から始まりその4代後の直政までの井伊一族の盛衰は、大大名に翻弄される地方豪族としては典型的なものだろうし、直虎が大河ドラマの主人公にならなければ本書は書かれなかったかもしれない(少なくと...続きを読むも書名は違っただろう)。

著者が書きたかったのはむしろ後半部分の、山の民だった井伊一族が都会民である今川家や徳川家と交わることにより都会民に同化していった、という仮説だろう。
確かに井伊谷は少し奥に行けば鬱蒼とした山岳地帯だし、500年前は更にそうだっただろう。
当時の井伊谷にもののけ姫の世界が広がっていたと想像するのも悪くない。

0

「学術・語学」ランキング