【感想・ネタバレ】よろこびのうたのレビュー

あらすじ

北陸の勝野市、田園地帯の集落で火葬場から老夫婦の焼死体が見つかる。警察は老老介護の末の心中と結論付ける。事件から半年後、東京で週刊誌記者をしている伊能は取材ため勝野市を訪れる。近隣住民の口は重く難航する取材のなか伊能は、地域の雑貨屋の駐車場に残る濃いタイヤ痕、焼死した夫婦が事件の半年前に車を買い替えたこと、挙動不審な小学生という三つの『不自然』に気付く。それは事件の深淵へ至る第一歩であった。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

ネット広告が気になって電子書籍で珍しく購入。

夫婦が火葬場で音楽を流しながら心中していたという実際に起きた事件をもとに、筆者がバックストーリーを膨らませていったという作品。
夫婦が心中へと向かっていく過程が丁寧に描かれている。独特のコントラストの濃いイラスト、夫婦の優しい表情などの描かれ方が温かい

子供を守るためとは言え、人を殺してしまった妻の、「私のせいでこの人を地獄に道連れにしてしまう」という思いと、妻が一人で罪を背負って苦しんでいるのを放っておけず、「一緒に死んで、代々受け継がれてきた田に帰ろう」と思う夫。お互いがひたすらに相手を思い合っていて、悲劇的なのに温かい。切ないのに、羨ましい。苦しくて優しい。

私には結婚の予定なんて当分ないのだけれど、するかどうかもわからないけれど、お互いにここまで思い合える夫婦に少し憧れてしまう。

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2016年10月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

老夫婦が焼身自殺をする話なんだが、夫婦がずっと穏やかに思い合って、死ぬ瞬間まで、互いを思いやっているのが深い。これはこれで幸せな最期だった、と真相を追いかける記者が呟くが、確かにそう。
 老老介護の果てに、と世間は言うのだが、繰り広げられる光景に、奥さんは確かに認知症と糖尿病と、足が悪くなって歩けない三重苦で、旦那は高血圧でそれでも家事一切やりながら奥さんのことも面倒見ていて、限界集落で若い人も少ないから町内会の集まりとかも中心人物的に参加しなきゃならないのだが(この夫婦には子供がいない)、旦那さんはそんなに苦しそうではない。もともと働き者で「家事が少しきつくなった」というのだけれど、奥さんに当たるでもなく、奥さんも病気で心がすさむわけでもなく、ただただ、穏やかな日が前半、繰り広げられる。。

1
2016年07月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

アイディアは悪くないけれど、結局人を殺めた罪悪感の果てに、ふたりだけの世界に閉じこもって自死を選ぶ、という感じがちょっと好きじゃないな、と思った。裁かれていないんですよね。善人と悪人、という恣意的な概念がある物語だと思う。地獄の業火をモチーフにしているのは、その中でいえば、すこし救いだ。/なので満足度も低いしちょっとこういう倫理観キライだな、とも思ったのですが、中盤の展開がやはり面白かったのと、こういう手触りの作品は少ないと思うので、おまけで星を上げておきます。宇仁田ゆみ的な絵も物語によく合っていた。

1
2017年07月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 ある村で夫婦が自死を選んだらしい。老々介護の果て、焼身自殺、などなどニュースでバッと放映され、世間的には焼身自殺と言うことで話題にはなれど、それらはすぐに風化する。
 しかしある一人の記者が、上司の命令ということもあるけれどその自死について踏み込まなければならなくなった。
 そこでその自死について奇妙な点があらわになり、一歩また一歩と記者はある事実に近づいていく。
 誰が正しいと言うわけでも、誰が正しくないと言うわけでもない。
 ただ哀しく、ただ良くないことが重なった、とも言えるし、死んで当たり前の父といえるくらい虐待なんぞする父親とは言えども、そこに至るバックグラウンドが少し弱めなのと、周りがもっと気にかけていれば、一歩間違えれば『誰も知らない』みたいた哀しい結末になっていた可能性もある。
 今回はたまたまアクセル踏んで殺したわけだが、それまでは心配だねえ、で放置していたわけで。近所付き合いもあるないとかあったわけだけど、年配同士はよく話やらしてたみたいだしなあ。

 あるニュース報道を元に膨らませた物語(結果のみ利用させて頂き過程はまったく別)とのことで、絵は物凄く上手、とは言わないけれど安定はしており、老老介護、死ぬと言うこと、生きると言うことをじんわり考えさせられる作品。
 マイナーな内容でもあるので是非とも。

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2017年04月25日

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