【感想・ネタバレ】九鬼周造 理知と情熱のはざまに立つ〈ことば〉の哲学のレビュー

あらすじ

独自の思索を展開した哲学者・九鬼周造(1888-1941年)。その波乱に満ちた生涯をたどりながら、「〈ことば〉の哲学」をキーワードにして、全主要著作を読み解く。『「いき」の構造』(1930年)、『偶然性の問題』(1935年)、『文芸論』(1941年)といった多彩な著作を貫くものとは? 日本哲学研究の第一人者である著者が、若き日から耽溺してきた不世出の哲学者に抱く深い想いを今ついに解き放つ。

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Posted by ブクログ

「「いき」の構造」を昔読んで、がなんとも面白くて、興味をもっていたのだけど、なかなかそれ以外の作品には触れないまま、忘れていたのだけど、ふと気になって、読んでみた。

なるほど、「「いき」の構造」を読んだ時に感じた、日本文化のクオリティを探求していこうという感覚の繊細さと西欧的な明晰な構造分析の統合みたいなのが、九鬼周造の読みどころなんだなと思え、うれしかった。

そして、九鬼の他の主な著作も全体が見晴らすことができて、今後、なにを読めばいいかわかったのもよかった。

なんか、この人、わたしが問題としているところと近いところで考えているんだなと妙なしたしみを感じた。少しづつ読んでいこうと思う。

ちなみん、九鬼は当時としてはかなり長い8年間ヨーロッパに留学して、ハイデッガーやフッサールなどの講義を聞いたり、若き日のサルトルと交流があったりしたみたいで、その辺を想像するとすごく面白い。

九鬼とハイデッガーが交流していたころは、もしかするとハンナ・アーレントがハイデッガーと恋愛関係にあったりしたかもな時期で、九鬼とアーレントとの遭遇なんかもあったりしたかもとか想像するのも楽しい。

もっとも、アーレントが有名になったのは、第2次世界大戦後で、九鬼は1941年になくなっているので、もし出会っていたとしても、当時のアーレントは全くの無名時代なので、気づかなかったかもな〜。

それにしても、20世紀の哲学におけるハイデガーとフッサールの影響の大きさを改めて感じるな〜。

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2020年06月29日

Posted by ブクログ

日本独自の美意識である「いき」について哲学的な考察をおこなったことで知られる九鬼周造の生涯と思想を、わかりやすく解説している本です。

主著とされる『「いき」の構造』や『偶然性の問題』のほか、九鬼の回帰的時間論、日本文化論、文芸論などが扱われています。とくに『「いき」の構造』と『偶然性の問題』がとりあげられている章では、単行本にまとめられる以前の九鬼の思索の過程をたどることで、彼が何を問題にしていたのかがていねいに解き明かされています。比較的平明に書かれた本ではありますが、この点では研究書というべき内容をそなえているように思います。

本書と同じような趣旨で書かれた九鬼哲学の解説書としては、ほかに田中久文の『九鬼周造―偶然と自然』(ぺりかん社)があります。田中の本では、九鬼の日本文化論が「自然」の一元論に回帰していったことについて批判的な態度がとられていますが、本書はこれとはやや異なる立場から九鬼の日本文化論の評価がおこなわれています。著者は、九鬼の議論に当時の国家主義的な潮流の影響が見られることを認めつつも、日本文化を世界に開かれたものにしていくような可能性をもっていたことに注目し、その積極的な意義を見ようとしています。

両方の著作を併せて読むことで、九鬼の思想を読み解くための機軸を得ることができるのではないかと思います。

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2017年11月30日

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