【感想・ネタバレ】カシオペアの丘で(下)のレビュー

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Posted by ブクログ

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ゆるす、ということが大きなテーマになっていると感じた。

「倉田」という鉱山を仕切る家に生まれたシュンは、鉱山の事故とトシの事故、ミッチョとの新しい生活に踏み切れなかった、三重の苦しみに悩まされながら生きてきた。

ガンになり、治すのが困難になったことで、過去と向き合い、今まで避けてきた、苦しみの元となった北都市に帰っていく。

徐々に体が弱っていく中でも、ゆるし、ゆるされるとは何かを考え、悩みながら、自分なりの回答が得られたのではないか。

この本を読みながら、自分もよく、ゆるす、ゆるされることについて考えているが、最後の川原さんとトシのやり取りの中でのトシの考え方に共感した。

また、ゆるしについては、考えることがあると思うが、深く悩んだときは、この本を読み返したいと思う。

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2020年10月29日

Posted by ブクログ

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重たい話だけど暖かい話です。
下巻の最後の方は電車では読めないと思い家で読みました。
元気な頃は拒んでいたことも徐々に受け入れていく、死に近づくにつれて変わっていく心模様も自然で悲しい。

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2019年06月29日

Posted by ブクログ

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最初に言うておく。この小説スゲー!このテーマに対してここまでがっぷり四つで向き合える重松さんの、小説家としての強さもスゲー!

ただ、安易にレビューを書けない小説でもある。書かれている内容の一つ一つが重くてツラくて美しくて。読む人それぞれに色んな思いが湧きたつ小説なんだろうけど、その思いが湧くまでの哀しさや切なさ優しさがツラい。

こいつら俺と同学年で、今の俺より10歳若いねんで。自分がガンになるのか、親友がガンになるのか、それは分からんけど、これはいつ俺自身に起こっても全くおかしくないドラマ。他人事として読めないから、余計にテーマが重い。

色んな場面が印象的だけど、俺が一番印象的だったのは、唯一エッチのラブシーン。股間に手を当ておっぱい触るシーンで泣きそうになったのは初めてだった。ムッサ良いシーンだった。

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2017年11月25日

Posted by ブクログ

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北海道の謎の巨大宗教建造物の物語下巻。許されるために、生きる。しかし、死ぬことによる「許し」には敵わない。ものすごいカタルシスだな。そう思った。人間失うものがなくなると何でもできるっていう背水の陣の便利さ。
 人は負い目を背負って生きていくことがある。他人の命を代償に自分が生きていくとき、その重い「思い」を身にまとって生きていくことになる。それは振り払おうと思っても振り払えない。なぜなら自分からにじみ出ている邪念だから。
 人は虚勢を張っても、弱みを持っている。だから、邪念に打ち勝とうと思っても、弱さゆえに力尽きる。

 最後に人は怯える。孤独に怯える。自分から噴き出す黒い感情で包まれて孤独になることに恐怖する。
 その時、人は寄り添う存在を求める。渇望する。渇愛する。そして神にすがる。なにより強い存在に泣きつく。神なら、自分を見捨てずにいてくれる。だから、ボクを見ていて、神様。

 クラセンは観音像を北都に建てた。ミウさんは忘れないために、許され続けるために観音像を建てたんじゃないかと言っていたが、どうだろう。
 クラセンは北都のみんなが事件を忘れないためにシンボルを建てたのか。そんなのわからない。そこに言及しなかったから、良作。

 人って、人を傷つけたり、人の命を奪ったとき、それは相手に申し訳ないから、悲しみ続けるのかというと、そうではないと思う。もっと自己中心的であると思う。
 人を傷つけてしまった自分も、傷ついているのである。自分のアイデンティティに「犯罪者」「人殺し」そういう傷跡が深く刻み込まれるのである。
 その不名誉が、苦しいのである。二度ときれいな状態には戻れない、喪失感、怒り、焦燥感、そういう自己愛のために苦しむのだと思う。けっこう、他人のことは大事じゃない。やはり自分が大事なのである。

 ひどい言い方ではあるが、そんなもんじゃろうと思う。人はそれほど他人を思いやれない。人を思いやれる、自分をスゴイと思いやっているのである。
 だから、この物語に出てくる「許されたい人」も、それぞれの相手から許されたいのではないと思う。自分に自分を許してほしいのである。「もう自分を自分で攻めなくていいよ。」そう自分に言ってほしいのである。
 だから、自分にできることを全部やってる。償えることをすべてやった達成感のその先に、自分への許しが待っているのである。
 川原さんはまさにそうだろう。いろんな土地をめぐって、いろんな人に会って、行動の末に自分を許したかったのである。娘が死んだ原因は、妻の不倫、それはつまり夫である自分の不出来だから、自分を許せない。それを許したい。

 クラセンとシュンは死ぬ前に、自分を許して、解放されることができた。死ぬ間際だから、思い切って行動ができたんだろう。そしてさらに良いことに、死ぬという最高のカタルシス、解放を迎えることもできる。
 死は、さわやかである。現世の執着から解放されるその様はすがすがしい。だからこの物語の死にはさわやかさがあるのだろう。


 シュンの死に際して印象的なシーンがある。
 奥さんにアソコを触ってもらうシーン。そして奥さんの恵理はおっぱいを触らせるシーン。
 こういうシーンだよな、非常に説得力がある。

 生き物なんだから、やはり最後に精力がほとばしるんだな。そして、夫婦なんだからそこに恥じらいなんてなくて、素直につがいとして触れ合う情景が、愛おしい。


 しっかし、北の大地というのは、どうしてこうも許されたい者たちが集まるんだろう。許されざる者もそうだし、レヴェナントもそうだし、試される大地ってのは、許しを試してくれるとでも思ってんのかね。

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2018年05月31日

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2008年(第5回)。10位。
北都で再開した幼馴染+その家族と、ミウさん、川原さん。
許し、許されるがテーマの小説。
ガン進行はほんとこわい。昼間の空に星は見えないけれど、いるんだよ。

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2023年03月30日

Posted by ブクログ

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「いままで誰にも語られなかった命を、夜空に置いてあげたい。わたしとシュンの、生まれなかった命を、忘れずにいてあげたい。」なくなってしまった命も、誰かが覚えていたり、懐かしんだりしているうちは消滅してからも星空に瞬く星のようにその命が消えることはないとこに気づいたミッチョ。誰にも語ることのできなかった命について、ミッチョが語ることができてよかった。その命が存在していたことについて愛おしく思うことができてよかった。

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2018年06月24日

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