【感想・ネタバレ】連歌とは何かのレビュー

あらすじ

中世人がもっとも愛した文芸の全貌。創作しつつ味わい、味わいつつ創作する、機知と友愛のアート。二条良基・一条兼良・宗祗ら天才の仕事を軸に、能・茶・花をしのぐほどの人気を誇りながら、近代とともに忘れられた文芸の全歴史をたどる。[本書の内容]●長連歌の世界●連歌会の空間●式目の世界●「水無瀬三吟百韻」を読む●連歌七賢●天才宗祗とその弟子たち●安定と停滞 (講談社選書メチエ)

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Posted by ブクログ

連歌についての入門的解説書です。

タイトルから、連歌の本質についての著者自身の考えがエッセイのようなスタイルで展開されているような内容かと思いましたが、連歌の基本的な規範と歴史を概観している、手堅い入門書といえるように感じました。

連歌の歴史については、やはり盛期である中世が中心的にとりあげられており、とりわけ二条良基と宗祇については、その人物像にまで立ち入って紹介がなされています。また、近世以降の連歌についても、その担い手たちが果たした社会的な役割が解説されています。

著者は、和歌と連歌のちがいについて、「一言でいってしまえばコミュニケーションの濃さ、もしくは「遊戯性」」を指摘することができると述べています。むろん和歌も、ひとに贈るために詠まれたり、人びとの前で披露することはありますが、作品としては完結したものだと考えられます。これに対して連歌では、他者の歌を鑑賞し理解したうえで、そこにあらたな趣向をくわえるというしかたで創造性を発揮することがめざされており、作品は完結したものとして示されるのではなく、次々にその内実を転じつつ生成するものということができるのかもしれません。そして、このような連歌の性格が、その担い手たちの社会的な役割にまで通じていると考えることができるのではないかと思います。

本書の文章は平明で、入門書としての役割はじゅうぶんに果たしているように思います。ただし、その歴史的な側面の解説が中心となっており、作品の鑑賞という面ではすこしもの足りなく感じてしまいました。

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2023年12月08日

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