あらすじ
「旧仏教」を読み直し鎌倉新仏教のルーツを探る。鎌倉新仏教はゼロから生まれたのではなかった。偉大な祖師たちの思想が生まれる背景には、先行する有名無名の宗教者たちによる、さまざまな試みがあった。山林修行、戒律の問題、経典への信仰など「実践」をキーワードに、これまで見過ごされてきた、新仏教を準備したさまざまな運動に光を当てる。(講談社選書メチエ)
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Posted by ブクログ
鎌倉仏教のピークを形成する思想の内実にせまるのではなく、それにいたるいくつもの尾根筋をたどり、とりわけ平安仏教から鎌倉仏教へとつづく信仰形態の実践的側面について実証的な立場から考察をおこなっている本です。
本書が最初にテーマにとりあげているのが、優婆塞や聖にかかわる仏教社会の制度的側面を明らかにすることです。かつては鎌倉仏教をキリスト教のプロテスタンティズムになぞらえるような解釈があり、黒田俊雄のいわゆる「顕密体制論」によって批判されることになりましたが、本書はより微視的な検討を通じて、優婆塞や聖の当時における社会的な位置づけを解明しています。
さらに、装飾経や舎利信仰、慈円の『法華別帖』などにおける夢告の解釈、法然と熊谷直実の交流などについて考察が展開され、鎌倉仏教を準備した信仰の具体的なすがたが明らかにされています。
歴史学的なアプローチにもとづく手堅い議論がなされていて、興味深く読みました。