【感想・ネタバレ】もの忘れの脳科学 最新の認知心理学が解き明かす記憶のふしぎのレビュー

あらすじ

買い忘れをする、知人の名前が思い出せない、電話をしたのに、肝心の用件を忘れてしまう……。多くの人が一度は経験したことのあるだろう「もの忘れ」。これは、けっして老化や認知症のサインだとは限りません。日常によくあるもの忘れの多くは「ワーキングメモリ」という、記憶システムをうまく使いこなせないことが原因だと考えられています。ワーキングメモリとは、目的を達成するまでの間、必要な情報を必要な間だけ、脳にとどめておくシステムです。認知症におけるもの忘れは、ワーキングメモリがうまく使いこなせないというレベルにとどまるものではありません。また、認知症には原因となる疾患があり、アルツハイマー型にみられる神経細胞での異常タンパク質の蓄積などの病変があり脳の病気といえます。では、たとえば買い忘れはなぜ起きるのでしょうか。買い忘れをする場合、買い物に行く途中で友人と出会って話に夢中になったり、買い物をしている間に新たに欲しいものを見つけたり、といったことがあるからではないでしょうか? ワーキングメモリの容量には限界があります。私たちは無限にものを記憶することはできません。ところが、憶えなければいけないことは絶え間なく出てくるので、不必要な情報を正しく判断して適宜消去していくことが必要です。どの情報を活性化させようか、どれを消去しようかと、ワーキングメモリが働いている時に他のことが起きると、注意がそれてしまいうまく働かず、必要な情報を記憶から引き出せないという事態が起きます。著者達が開発した記憶容量を測るテストを用いた調査によると、成績のよい人はたくさんのことを憶えているのではなく、必要な情報にだけうまく焦点を合わせていたことや、語呂合わせなどの工夫をしてワーキングメモリの負担を軽減していることが分かりました。もの忘れは、決して記憶力そのものが低下したからではなく、自分の記憶システムをうまく使いこなせないために起こるといえます。日々の生活を支えるワーキングメモリの機能を健やかに保つ方法は、私達の生活の中にこそあります。ワーキングメモリの仕組み、またうまく使いこなし健やかな脳の活動を保つにはどうすればよいのかを、最新の脳科学、神経心理学をもとに第一人者がくわしく解説します。(ブルーバックス・2014年7月刊)

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Posted by ブクログ

記憶を中心とした認知についての一冊。

「中央実行系」の働きを中心にして、ワーキングメモリについて自分のような初心者には十分に詳しい解説があってためになった。

自身の行動を「自分自身で振り返る」仕組みとしての「自己モニタリング」機能について、その重要性と衰えの過程などの詳しい解説があり、とくに脳はどのように(何に)注意を払い、その注意をどのように切り替えているのか、注意がうまく切り替えられないと何が起きるのかがわかりやすい。

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2020年01月15日

Posted by ブクログ

何となくそこにあった頭について、それがどう動いているのか何となくわかった気がする
ワーキングメモリの優れた人は、情報を圧縮したり別の補助システムを使ったり、戦略を使っているってのが面白かった

使えそうな知識
ワーキングメモリについて
短期記憶と長期記憶どちらかが欠損しても支障がない例から、ワーキングメモリがあるとされた

国語の成績が高い人とは
・読解の成績と単語的記憶力は関係ない。ワードを覚えている人は成績上位者も下位者も同じ。重要な内容を記憶することが大事
・侵入エラー(必要ない情報の介入)を統制する能力が必要 成績下位は関係ない単語を凝視
・意味をイメージとして覚える

高齢者
・前頭前野の萎縮が特徴
・単語記憶は衰えない、思い出せないのはワーキングメモリが衰えて妨害が入るから
・丸暗記の方略をよく使う

どうすればいい?
・日常生活がワーメモを鍛える
・ワーキングメモリには限界があるので戦略をつかう視覚・空間的サブシステムを活性化させる
・ポジティブな文のほうががワーメモが活性化する

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2024年10月26日

Posted by ブクログ

ワーキングメモリについてのコンパクトな解説書。「抑制」が重要な機能だというのが、意外というかなるほどというか。

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2014年07月31日

Posted by ブクログ

脳内には短期記憶のためのワーキングメモリが存在する.このメモリをどの程度活用できるかが重要である.このような脳の働きを知るために,被験者におこなう試験(文中の単語を覚えさせるようなもの)が行われ統計的に評価されている.

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2014年10月16日

Posted by ブクログ

ワーキングメモリという仕組みが人間の記憶のカラクリを説明する方法として最適であるという学説の解説だが、難しい! Blue Backsだからもう少し分かりやすく解説してほしい.ただ、この仕組み自体、人の脳の働きを完全にカバーするものでないことは明白であり、まだまだ分からない部分が多いことは事実だろう.Internetの時代だから、記憶することの意味がかなり変わってきた.脳の使い方も時代に合わせて変える必要があると思っている.

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2014年09月19日

Posted by ブクログ

短期記憶は、音韻ループ・視覚空間系・制御系で構成される。高齢化による容量低下は、イメージに配分を変えることで補おう。ポジティブな情動で脳を活性化しよう。

読み終えた印象としては、テーマを絞った論文のようでした。テレビのような断言もありません。

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2015年05月23日

Posted by ブクログ

もの忘れとワーキングメモリについて、各種実験の話も交えて解説し、ワーキングメモリの強化についても触れられている。
生活の中で実感できる話もたくさんあるが、実験などの用語は一読しただけでは定着せずに、読み戻ることも多かった。これをワーキングメモリに当てはめて考えると…

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2014年08月23日

Posted by ブクログ

もの忘れの脳科学という題名だが、内容な著者の専門分野であるワーキングメモリの話である。認知症の本や売れるので、それに乗っかろうとしている感がある気がする。確かに認知症患者の物忘れのエピソード記憶障害とワーキングメモリの障害は重なる部分もあるだろうし、もの忘れの方の症状がワーキングメモリの問題であることもあるであろうが・・・
ワーキングメモリは心理学の分野で研究が進んでいて、認知症などの臨牀方面では、あまり研究されていないと思うので、心理学の分野の研究を参考に、患者さんの状態に関しての研究が進むといいと思う。
内容は、ワーキングメモリに関して、平易に書かれた本で読みやすい。その分表面的にもなっているので、詳しく知りたい方は、著者のほかの本も読んだ方がいいのかもしれない。

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2014年07月25日

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