【感想・ネタバレ】権力の空間/空間の権力 個人と国家の〈あいだ〉を設計せよのレビュー

あらすじ

古代ギリシア都市に見られる領域「ノー・マンズ・ランド」とは何か? ハンナ・アレントが重視したこの領域は、現代の都市から完全に失われた。世界的建築家がアレントの主著を読み解きながら、われわれが暮らす住居と都市が抱える問題を浮かび上がらせ、未来を生き抜くための都市計画を展望する。人が幸せに生きるためには、来たるべき建築家が、公的なものと私的なものの〈あいだ〉を設計しなければならない。(講談社選書メチエ)

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Posted by ブクログ

ハーバーマス「公共性の構造転換」を建築の視点から探る名著。ややイデオロギー的な前のめり(偏向?)を感じないでもないが、人と人とがつながる、真の意味で豊かな地域づくりを考える上で、有効な指摘だと思う。

公的領域と私的領域の境界となる「閾」(しきい)という空間概念を導入することで、1住宅=1家族とする近代の労働者住宅を批判的にとらえる。プライバシーの保たれた空間とは、実は世界を共有している感覚の喪失、他者を招き入れない空間である。これは「官僚制的支配の空間化」(p164)というわけだ。

宮台真司氏の「システム化と空洞化」につうじる視点だ。じゃあどうすれば?

著者が推奨するのが「地域社会圏」という考え方。経済行為やインフラと共にあり、協働する空間だ。昔の商店街の復活というのが近いイメージだろうか? もちろん万能の処方箋ではないだろう。とはいえ、「人と人とが孤立したままシステムに回収される事態をどう回避するか」を考える点では、重要な視点だろう。

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2024年06月21日

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