あらすじ
大学の探偵助手学部に通う君橋と月々は、志望のゼミに落ち、悪ふざけで出した第3希望の猫柳ゼミ行きが決定してしまう。指導教官は、功績不明かつ頼りなさげな女探偵・猫柳十一弦(25歳)。ショックを受ける二人だったが、名門ゼミとの合同合宿が決まり、勇んで向かった孤島で、本物の殺人事件に遭遇する!
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Posted by ブクログ
本書はインターネット上でいろいろと調べて見つけた。いかにも安易だが、コーデリア・グレイの物語は私にとってとても印象的だったので、何かほかに類似の作品がないかを調べようとした。女性が探偵(もしくは刑事等)のシリーズはほかにも多数あるようだったが、たまたま目に留まった本書を選んだ。
冒頭から、探偵助手になるために「大東亜帝国大学探偵助手学部」で勉強するところから始まるので、いきなり非現実感もあるが、探偵助手学なる学問についてその後もあまり紙片を割いて詳しい説明もなかったように思う。しかし、それでもこの設定そのものにそれほど違和感なくすらすらと読み進めることができる。むしろ、ここで変に詳しく設定を説明しない方が、話に入り込みやすかったように感じた。
物語では、孤島で殺人事件が発生してしまうが、猫柳探偵だけは推論によって犯人の意図を予測し、先回りして被害者を出さないようにふるまう。自ら孤島に閉じ込められ、何度も危険にさらされながら、正しいことをしようとする姿勢は、まさにコーデリア・グレイだった。…というと、もちろんおおげさかもしれないけれど、私は個人的に、自信過剰で危なげのない探偵も好きだが、どこか不完全なところもあるがひたむきに行動する探偵が好きなのだ。それをあらためて感じた。猫柳ゼミのキャラクターも好きだし、次に狙われるのは誰か、猫柳はそれを防げるのかと思いながら読み進めるのはとても楽しかった。意図されたものかはわからないが、読んでいる途中、少し「語り手」が信頼できるのかをミスリードさせるような記述もあったような気がする。
ただ、謎解きも探偵にもとても好感を持ったが、最後に明らかになるミッシング・リンクの正体と、動機にはやや自然さを書くようにも感じられてしまった。ここでの動機は本作での特殊な世界観ゆえのものではないかと思うので、そうであれば、もう少し事前に掘り下げておいても良かったのかもしれなかった。「不可能犯罪定数」についても、それ自体想像の産物だとしても、面白い概念だとも感じたのに、具体的なイメージがややしづらかったように思った。
しかし、犯人を妨害するために推理を進めながらその場でできる対応をしていく、そのストーリー自体も引き込まれたし、そういう物語の展開は探偵のキャラクターをも浮き彫りにして、より魅力的にしているように思った。
著者の作品はもしかすると10年ぶりくらいに手に取ったかもしれない。「城」シリーズもいくつか読んだはずだが、どちらかというと、ダークで凄惨な内容だった印象がある。本作もところどころ残酷さとか犯人の異常さを垣間見せる要素もあったけれど、明るい調子で進行する場面も多く、楽しく読み進めることができた。
Posted by ブクログ
面白かったー!
この作者さんは探偵音野の二冊しかまだ読んでなかったのですが、何となくひかれて読み始め。
猫柳先生のひたむきな感じが凄く好き。
探偵とはこうあってほしいという理想が詰まってました。
音野といい猫柳といい、すごく好き。
ラスト、語り手であるクンクンとの会話がまた良かった。
続くシリーズでは違った二人の活躍が見られるのが楽しみです
Posted by ブクログ
クローズドサークルもの。「探偵助手学部」という学部がある「探偵」というものの存在価値が高い世界が舞台。探偵助手学部の合宿で,千年館孤島研修で孤島に行くことになる。お約束どおり嵐になり,閉ざされた空間になるが,通信装置は生きており,登場人物の1人,五十嵐は,外部に島で起こっていることを伝えている。また,携帯電話でバンバン外に連絡を取っている。
そんな中で,7人もの人を殺害しようとする連続殺人を企てるのであり,リアリティは全くない。それでも,この閉ざされた環境での連続殺人という設定はワクワクしてしまった。
世界を測る単位を見立てて殺人をするというミッシングリングがあり,猫柳はミッシングリングに気付いて,ほとんど存在しない手掛かりを使って,反抗を阻止する。実際,犯人が殺害できたのは2人。探偵は,事件が起こるまで手をこまねいているという設定の裏を書いており,この点は面白い。
とはいえ,おそらく読者がミッシングリングに気付くことはないだろう。この本のヒントで,この抽象的な見立てに気付くのは無理だと思う。猫柳のキャラクターは可愛いが,超能力者でもない限り,これだけのヒントで犯行を阻止するのは超人的
設定は面白く,ワクワク出来たが,意外性に驚くことはできなかった。名探偵,雪ノ下が実は探偵ではなく探偵助手で,犯人の中野の父の探偵としての業績を横取りし,中野はその復讐をしようとしていた。また,雪ノ下は,不可能犯罪定数を,世界を測る単位にし,その提唱者として歴史に名を残そうとしていたが,その単位すら,中野の父が編み出したもので,雪ノ下の野望を阻止するために,中野が連続殺人をしようとした。そもそも,6人を殺害し,雪ノ下に自分を殺害させようとした…というプロットは,面白くなくはないが,サプライズはなかった。「ふーん」という感じ。クローズドサークルの設定を使えば,途中,熱中して読める作品にするのは容易い。最後に意外性があるオチをつけれてこそ名作。そういった意味では,名作,傑作とは言えないか。
〇 サプライズ ★★☆☆☆
クローズドサークルもので,ミッシングリングもの。設定は面白いが,真犯人が分かっても意外性はない。というか,誰が犯人であっても「ふーん」としか思えなかったと思う。意外性がウリという作品ではない。ミッシングリングは,世界を測る7つの単位。モルだとかメートルだとかを見立てて殺人をしていたという。これも,「ふーん」としか思えなかった。まぁ,これだけミスミステリを読んでいると,クローズドサークルに意外性を求めるのは難しいということか。
〇 値中度 ★★★★☆
クローズドサークルものは,読んでいるときのドキドキ感,サスペンスがたまらない。こういう設定のミステリは,読んでいるときが一番幸せであり,一気に読み進めてしまう。反面,ラストに近づくにつれて喪失感があるというか…。これ,誰が犯人でも,そんなに意外性はないなぁ…と思いながら読んでしまった。それでも,読んでいるときは楽しいし,熱中して読めた。やっぱりこういう設定,ザ・本格ミステリという設定は楽しい。
〇 キャラクター ★★☆☆☆
人間が描けているというわけではないのだが,猫柳十一弦という探偵は素直にかわいいと思えた。しかし,探偵助手役の君橋君人,月々守の両方はさっぱり魅力的でないし,雪ノ下探偵とそのゼミ生も,魅力的なキャラクターとは言えない。犯人もステレオタイプのザ・犯人という感じ。
〇 読後感 ★★★☆☆
最後のシーンで,猫柳が,君橋が言った「命を掛けて探偵を守ります。探偵を失うわけにはいきませんから」というセリフに対し,「さっきのって……助手としての答えですか?」と確認して「そうですと」という回答に,口を尖らせたという描写は,猫柳の可愛さを引き立てているし,ちょっとほっこりする。とはいえ,そもそも人間が描けているわけではないし,ゲーム小説的な要素を払拭しようとはしているが,所詮はクローズドサークルものということで,さほど読後感がいいというわけではない。
〇 インパクト ★★★☆☆
探偵役の猫柳が,事件を未然に防ぐ,被害者を出さないようにすることに執心しているという設定はインパクトがある。「女探偵が,被害者を出さないように,体当たりするミステリ」という感じでインパクトには残りそう。ただし,犯人の名前とか,トリックとか,何人死んだとかは忘れそう。あと,世界を測る不変的な単位の見立てという部分も忘れそうにない。2点だけインパクトに残る小説という感じか。
〇 希少価値 ★★☆☆☆
電子小説もあるようだが,本としてのこの作品は手に入りにくくなるような気がする。売れそうにないし。
Posted by ブクログ
探偵助手学部(楽しそう!)で学ぶ大学生たちと教諭の探偵が、閉ざされた孤島で殺人事件に遭遇。
孤島、殺人、探偵といかにもな状況ですが、犯人を捜すことよりも人命第一を信条とする探偵・猫柳十一弦のキャラクターがユニークです。
その信条ゆえ、よくある舞台設定ながらありきたりな展開にはなりません。
犯人当てというよりは、犯行を未然に防ぐ為の犯人との頭脳ゲームといったかんじでした。
探偵というものが信頼の置ける髙い地位の職業として成り立っているという、この世界の設定を存分に生かした事件と登場人物たち。斬新な1冊だったと思います。
読者側からの犯人当ては相当困難だと思いますし、いろいろと無理やりな印象も受けます。
しかし、猫柳教授が狙われている被害者たちを捨て身で守り、ボロボロになっていく姿にはなんだか胸を打たれてしまいました。
他人の為に命を張る探偵に助手がかける言葉にはニヤリ。この世界で探偵と助手がどのように事件に向き合っていくのか今後が楽しみです。
ネタバレ・・・・・・・・・・・・・・・・・
見立て殺人とミッシングリンクはこの作品ならではで新鮮さがありましたが、やっぱり強引な気はします。
それと、動機はやっぱり無理があると思います。