あらすじ
「バックパッカーの神様」ともいわれる旅行作家の下川裕治氏が20年来温めてきた企画、玄奘三蔵の歩いた道を辿る旅を綴った書き下ろし新作。
数千円で行けるルートをあえて使わず、数万円をかけて越えた国境。
富士山頂なみの高所で氷点下に震えたかと思えば、灼熱のパキスタン・インドで狭いベッドに2人して寝る寝台列車。
「風の谷のナウシカ」の舞台とも言われる絶景を眺め、今夜の寝床もわからぬまま突き進むタクラマカン砂漠……。
7世紀に行われた玄奘の旅路を可能な限り再現するため、
普通の人なら絶対行かないルートを辿ったバックパッカーが、
21世紀に決行した旅路の果てに見たものとはいったい!?
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Posted by ブクログ
下川裕治が仏教に関心があるとは知らなかったが、三蔵法師こと玄奘がたどったとされる行路を鉄道、バス、乗合タクシーなどを使って、相変わらずの貧乏旅行をした旅行記。
玄奘の時代も旅のリスクは大きかっただろうが、現代も国境問題があってアフガニスタンに入れず一部行程を断念したり、中国のウイグル地区では中国政府によるやたらと厳しい検問や外国人のホテル利用制限に苦労したりした。特に、新疆ウイグル自治区におけるウイグル族への監視は、最近も世界各国から批判されているが、相当厳しく抑圧的であったようで、著者も「魔王がいる」かのようだと言っている。
それに比べると、キルギスやウズベクあたりはかなり自由な感じらしい。そもそも、キルギスもウズベクも縁遠いので、どんなところかあまりイメージもないが、豊富に挿入されている写真を見ると、そのエキゾチックな感じに興味が湧き、よい季節に訪れてみたいと思う。
道中、様々なトラブルが押し寄せるが、必死の努力と幸運で乗り切っていく。中国語のできるカメラマンの同行という要素も大きいが、やはり、著者のバイタリティと世界各地を自力で廻った旅の経験値の賜物なのだろう。簡単そうに見えて、ちょっと真似ができそうもない。