あらすじ
「パンのための学問」と揶揄されることもある法律学を、その出自から掘り起こすと同時に、他の人文=社会諸学との関連のなかで捉え直すことを通じ、単なる資格取得や実用のための手段にとどまらない「制度的想像力の学」として提示する。グローバル化やリスク社会における新たな法秩序、社会改革の可能性を考える。
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Posted by ブクログ
法学に関して実践的なアプローチではなく、俯瞰的な視野がほしかったため、ちょうどいい本だった。
法哲学/法社会学というものの存在は知っていたが、こういったことを考えているんだなと思えたことはなにより。規範や平等性に関わる単語としての「正義」を意識することがなかったため、法に抱いているイメージと実際のずれを感じていたが、原因の一端が分かってすっきりした。こういう風な法学の授業を大学の前期で受ける、もしくはこの本に出会っていたら、と少し思ってしまった。
経済政策のような合理性ではなく、社会政策とか平等とか今の私の規範に近い基準で、社会を生きるためのルールとして法が成立しているとも感じられたこともよかった。
Posted by ブクログ
大阪大学大学院法学研究科教授の中山竜一(1964-)による岩波の「ヒューマニティーズ」シリーズ(全11冊)の法学編。
【構成】
1.法学はどのようにして生まれたか
(1)なぜ法の歴史について学ぶ必要があるのか
(2)西洋法の歴史
2.生きられる空間を創る
-法学はどんな意味で社会の役に立つのか
3.制度知の担い手となる
-法学を学ぶ意味とは何か
4.法学はいかにして新たな現実を創り出すのか
-法学と未来
5.法学を学ぶために何を読むべきか
ふつう法学入門と言えば大学の基礎科目であるような法体系や成文法と不文法の違いからはじまり、憲法、民法、刑法などの実定法などの内容を紹介したりするようなイメージがあるが、本書は著者が法思想史が専門であるということもあり趣の異なるアプローチとなっている。
すなわち、「法学」という学問が何故存在するのかという疑問に答えようとしているのである。古代ローマ法と12世紀ルネサンスによるそのドグマ化と解釈学の成立から始まる法学の歴史過程を通じて、法の機能の説明を試みている。後半は社会秩序維持に果たす法律の役割等が内容となっている。
著者の意図するところではないが、評者の個人的な見解では本書が高校生か大学1・2回生向けに書かれたものと考えれば、法学の主流となっている保守的で前時代的な法解釈学に対して批判的な姿勢を持つ必要があるということを示しているという点では評価できる。