あらすじ
人類の歴史は、選択の連続だった。一方は、絶滅し、一方は生き残る。一方は、定住し、一方は安全な地を離れ世界に進出する。なぜ、その違いが生まれたのか…。その重要な分岐点を軸に、ホモ・サピエンスから日本人になるまでの「謎」と「ドラマ」をひも解く。◎森林を離れることで得た「直立二足歩行」◎移動方向と経路はどうやって選んだか◎「脳の発達」と「世界進出」を遂げた原人はなぜ滅んだか◎環境に身体を変化させるか、環境をやわらげる知恵を使うか◎なぜ「大陸に残る」のではなく「海を渡る」を選んだか◎自然への「調和」から「挑戦」を選んだ弥生時代…など。本書を読むと日本の人類史が面白いほどサクサクわかる!
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Posted by ブクログ
島崎晋(1963年~)は、歴史関連の一般書を多数書いている歴史作家。
本書は、700万年前にアフリカで誕生した人類(猿人)が、現生人類(ホモ・サピエンス)となり、日本列島に定住して日本人になるまでを概説したものである。
人類進化の700万年の歴史について書かれた本は決して少なくないし、(私もこれまでいくつかの本を読んできて)本書の内容に特段新しい材料があったわけではないが、ある程度の推測を含みつつも、アフリカの猿人は大きな「5つの選択」を経て日本人になった、と思い切って整理し、説明したところに本書の面白みがある。
本書で示されている5つの選択は、①氷河期の時代に、アフリカから「今、出る」か「まだ残るか」、②生き残るのは「大きな脳」(ネアンデルタール人)か「コンパクトな脳」(ホモ・サピエンス)か、③「大陸に残る」か「海を渡る」か、④インドシナから先は「南」に行くか「北」に行くか、➄縄文人は渡来系弥生人と「戦う」か「同化する」か、である。
しかし、実際の人類の進化の歴史(+日本人となった歴史)は、その5つに限らず選択の連続であり、そして、その選択は当人たちには(選択をしているという)自覚がなかったはずであるし、その無意識の選択の結果も後になってみないとわからないものだったのであり、極論すれば、「選択の連続」は「偶然の連続」だったとすら言えるのかも知れない。
事実、10万年前の世界では、ホモ・サピエンスに加えて、原人の一部や旧人の一部から進化したと思われる、ネアンデルタール人、インドネシア(フローレス島)のホモ・フロレシエンシス、シベリアのホモ・デニソワ、台湾の澎湖人など、少なくとも6種の人類が確認されているにもかかわらず、現在生き残っているのは我々ホモ・サピエンスだけであり、これは人類学上最大の謎の一つとも言われている。
我々ホモ・サピエンスは、なぜ現在、地球の生態系の頂点に立っているのか、また、我々は、なぜ現在、(相対的にみれば)食住に恵まれた日本列島にいるのか。。。それは、あとから見れば「必然」であったと言えるのだろうが、そのときどきにおいては、間違いなく「偶然」であり、その積み重ねの結果なのだ。
しかし、進化したホモ・サピエンスは(日本人としても)、いまや自らの進む道を“能動的に”選択する能力を持つに至ったと言えることを考えると、人類(及び世界)は何処へ行くべきなのか、人類なりに責任をもって考えていかなければないと思うのである。(地球規模の自然現象については、人類の能力が及ばないことは言うまでもないが)
ホモ・サピエンス、日本人の進化の歴史を考えつつ、人類の行き方へも思いが及ぶ一冊である。
(2019年3月了)