あらすじ
中学生の山浦大志は、“完璧”でなければいけなかった。
家にも学校にも居場所を作らず、世界に絶望していた彼は、ある日、夕陽の落ちる公園で少女と出会う。
古びたカメラを提げ、青い瞳をしたその少女は、写真を撮りながら旅をしていると語った。
誰よりも自由に羽ばたく彼女に、大志は自然と心惹かれていく。
だが、出会いから1ヶ月がたった頃、名前も知らぬその少女に大志がついに想いを伝えようとすると、
彼女は思いがけない言葉を残し、それっきり姿を消してしまった――。
彼女はなぜ、どこへ、消えてしまったのか?
それから7年、“完璧”な大学生になった大志は、写真共有アプリで偶然見つけた1枚の画像から、またしても奇妙な出会いを果たすことになる。
時を越え、場所を越え、人々の前に姿を現す不思議な少女と、その軌跡を追いかけ続けた一人の不器用な少年。
時と、場所と、人。
全ての点が繋がるとき、少女が胸に秘めていた“ある後悔”が、二人の運命の歯車を大きく動かしていく。
イラストレーターとしてデビューし、装画担当作品の累計発行部数は400万部以上を記録。
さらに、近年ではアニメーション、マンガ、音楽などの分野でも活躍するなど、いま、その才能に注目が集まるloundraw。
“イラストレーションの表現の壁を越える” ために言葉で創られる物語は、
ダイナミックな世界観と、鮮やかな描写力で紡がれたラブストーリー。
雑誌『ダ・ヴィンチ』での連載を大幅に改稿し、カバーイラスト&挿絵を全て自ら描き下ろした、渾身の初小説。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
『君の膵臓をたべたい』や『君は月夜に光り輝く』などの表紙カバーイラストが代表作の新進気鋭のクリエーター・loundrawの初小説。
丁寧な文体・文章、考え抜かれたストーリー構成、登場する各キャラクターの生き生きとした描写、絶妙に張り巡らされた伏線、文中に挿入されている素敵なイラスト、そして想像の斜め上を行く壮大なラストへの物語の展開。
感動しました。
小説のジャンルとしては、大きく分ければやっぱりラブストーリーになるのかな。
「旅するカメラマン」を自称する謎の美少女・伊藤チナミと主人公・山浦大志の成長物語でもあり、命のはかなさや人間関係を描くヒューマンドラマでもあり、伊藤チナミとは誰なのかという謎を解明するミステリーでもあり、そしてSFでもあり・・・と盛りだくさんです。
それぞれの登場人物をテーマに、時系列を無視したオムニバス方式のストーリーがラストに向かって鮮やかに、そして見事に紡がれ、読者は知らず知らずのうち、著者の描くイラストと同じような、美しく、そして透明感のある独特な世界観に引き込まれていきます。
『伊藤チナミ』の名前の真の意味を知り、この本の題名の意味を理解した時に僕の心に訪れた感動は、言い表しがたいですね。読み終わって、すぐにもう一度最初から読みたくなった本は久しぶりです。
切ないなかにも、何か暖かいものが心に残るこの物語、loundrawのイラストを知らない人でも十分に楽しめる小説です。
P.S.
こういう終わり方なので続編は難しいのかも。でも、個人的にはチナミの「おじさん」を主人公にした本書の前日譚をぜひ読みたいですね。この「おじさん」もチナミに負けず劣らずのドラマチックな人生を歩んできたようですから。
Posted by ブクログ
ボリュームが多すぎず少なすぎず、かつ、読んで癒されそうなものを…と探してたまたま目についた本でした。
作者のお名前も存じ上げなかったのですが、とっても面白い本に出会えて運が良かったです。
表紙を見て気になった方は、レビューとか見る前にとりあえず読んでほしいです。
個人的にはこの本もっと評価されてもいいのにな、と思います。
時系列順に書かれておらず、時間を行ったり来たりする形式で、始めこそ読みづらさを感じましたが中盤あたりから面白さが読みづらさを上回り、一気読みしてしまいました。
マジックアワーの空を現実で見た時のような、不思議な高揚感を味わえて、またひとつ本の面白さを知ることができました。
Posted by ブクログ
イラストレーターloundrawさんの小説。短編集かと思いきやラストで繋がって、ただのラブストーリーではありませんでした。
時間軸が何でバラバラなのかもSF的な要素です。
Posted by ブクログ
繊細な光描写が印象的なloundrawさんの小説ということで読んでみました。あぁ、こういう小説を書かれるんだなと、絵から受けるイメージが、そのまま腑に落ちる内容でした。帯はいつもの角川らしく過剰ですが、空気感と光の印象が残る小説でした。
Posted by ブクログ
久しぶりに本が読めた。
最初は青春小説?かなと思ったが、それだけではなく気になってしまい一気に読んだ。
表紙に惹かれて手に取った。綺麗な本だった。
Posted by ブクログ
人と一緒にいても、どれだけ相手を理解できているのか自信がない。
変なことを言っていないか心配になるし、嫌われるのが怖いし、余計なことばっかり考えちゃう。
相手を知りたいはずなのに、自分の心配だけなんだ。
僕たちの現在は限りない偶然の積み重ねだ。
逆に言えばその偶然こそが、僕たちをここに立たせている理由でもあるのだろう。
歳を取らない、実は人間じゃない、そんなことより目を背けたくなる自分の弱さなんていくらでもある。
それでも、僕たちはきたいをするのだ。
まだなにか、変われるんじゃないかと。
理想と現実をさまよいながら、いつか本当に納得できる自分に出会えるのだと、儚い未来を信じて生きる。