【感想・ネタバレ】P+D BOOKS ばれてもともとのレビュー

あらすじ

人や生き方を独自の視点で描いたエッセイ集。

“昭和最後の無頼派”といわれた色川武大が人生のさまざまな局面で得た人生訓の数々を縦横無尽に綴った最後のエッセイ集。

川上宗薫や深沢七郎、フランシス・ベーコンから井上陽水までもが採り上げられ、ほかに、戦争が残した痛ましい傷痕からあぶり出された人生観や犯罪者に同化する複雑怪奇な心情などが精緻に綴られる。

既成の文学通念に縛られることのなかった著者ならではの直感や洞察、そして卓抜した表現で読む者を色川ワールドに引き込む珠玉の47編!

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Posted by ブクログ

「色川武大の文章」の魅力について考えた時、ふと分野は異なるが「桑田佳祐の歌」と近い点がいくつか思い浮かんだ。

どちらも、その魅力の要がtone(色川さんの場合は文体、桑田さんの場合は正に声そのもの)であり、大げさに言うなら「作品が何について語っているか(書評の対象が何かとか、歌詞がどうとか)以前に、その声だったり文に触れるだけで受け手を惹きつけてしまうような圧倒的な強度」である。

あとは「才能や感性でさっと作っているように見えて、かなり冷静な自己批評の視点を持ち合わせている感じ。また、それを作品に落とし込むバランス感覚」だ。
また、どんなに人間のロクでもない部分を描いても、根っこの部分の品性は決して逸脱しない様に感じるところも、共通点と言えるかもしれない。

改めて色川さんの文章をまとめて読むと、語彙の豊かさと、その豊かな語彙を文の流れの中にあくまで自然に配置するスキルの高さに驚かされる。

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2019年03月30日

Posted by ブクログ

作品紹介・あらすじ

“昭和最後の無頼派”といわれた色川武大が人生のさまざまな局面で得た人生訓の数々を縦横無尽に綴った最後のエッセイ集。

川上宗薫や深沢七郎、フランシス・ベーコンから井上陽水までもが採り上げられ、ほかに、戦争が残した痛ましい傷痕からあぶり出された人生観や犯罪者に同化する複雑怪奇な心情などが精緻に綴られる。

既成の文学通念に縛られることのなかった著者ならではの直感や洞察、そして卓抜した表現で読む者を色川ワールドに引き込む珠玉の47編!
*****

久しぶりに読む色川武大。

「作品紹介・あらすじ」にあるように、まさに「昭和」といった印象。令和7年の現在からすると、受け入れ難い一冊だろうと思う。コンプライアンスだ、コスパだ、タイパだ、多様性だ、といった今の状況では槍玉にあげられそうな内容。でもそんな内容が僕にはとても響いてきた。僕も同じ昭和生まれだし。

とはいっても、僕と著者では30歳以上離れており、僕の両親よりも年上になる。だからこそ「とても響いてきた」中にも「あれあれ、これはどうなのだろう」と感じざるを得ない瞬間も正直いってあった。でもそんな瞬間もなんとなく「でもまあ、そうなのだろうな」と許せてしまうのも、きっと著者の人間性なのかもしれない。

読んでいて感じたのは、僭越ながらあの第二次世界大戦が色川武大に与えた影響は計り知れなかったのだろうな、ということ。戦争そのものもそうだけれど、それ以上に「戦後」が著者に与えた影響が大きかったように思えた。著者がちょうど16歳の時に終戦を迎え、闇屋やかつぎ屋、博徒など著者の「アウトロー的生活」はここから始まり、それらの体験やそこで養った人との付き合い、人生哲学などが後の作品に色濃く反映されているようにも思えた。僭越な言い方になってしまったけれど、そう感じざるを得なかった。

以前、色川武大作品を何冊か読んだ時と、今回こうして本書を読んだ時とでは、面白さの感じ方に少し違いがあったように思う。多分10年以上前のことなので(つまり10年以上ぶりに著者の作品を読んだことになる)それからかなり歳を積み上げてきたし、僕を取り巻く状況も変わってきているので、それはきっと当たり前のことなのだろうと思う。ただ以前から全く変わらなかった思い、これまた僭越ながらの思いというのは、一度でもいいから色川武大という人と話をしてみたかった、できればお酒を酌み交わしながら、という変わらぬ思いだった。

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2025年11月27日

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