【感想・ネタバレ】進化の法則は北極のサメが知っていたのレビュー

あらすじ

サメもヒトもアザラシも、生物はなぜこんなにも多様に進化したのか――その謎を解く鍵は「体温」にあった。気鋭の生物学者が世界各地でのフィールドワークを通し、壮大なメカニズムに迫る!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

過酷さ云々はそれぞれ分野ごとにあるとして、フィールドワークとは時の運であるというのが切に感じられる。5つの成功例を支えたのは、計画、計画、そして作者の人脈があったのだろうなと想像に難くない。
 
↑3章目まで読んでの感想メモでした。そう簡単には行かないね。

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2023年01月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

生物学はある種の生物の生態を深く研究する方向に行きがち。そんな中で生物全体を統一する法則はないのか?という目線でいろいろな生物を見るのが著者の目線。

1883年、動物の表面積当たりの代謝量は一定、というルプナーの法則が発表された。しかしいろいろな生物の数値をとってみると整合しない。(体重と表面積は3分の2乗の割合で増加するはずだが実際の計測値はそうならない)

1932年、クライバーは各種の動物の体重と代謝量を計算し並べてみると4分の3乗に比例することを発見した。(クライバーの法則)

1997年、ジェームズ・ブラウンは生物の形に着目した。血管の構造はどの生物でもほとんど同じで、大きな動物ほど心臓から出る最初の血管が太いため血管の分岐が多くなるだけである。血管を通る血液の量により代謝が決まってくることから体重と血液の量の関係を計算していくと4分の3乗という値にたどりついた。

次に温度計数という概念がある。温度の上下で代謝量が変わる、というものである。多くの動物が冬に動きが鈍くなり夏に活発に動くことでもわかる。

2001年、ジェームズ・ブラウンは化学の公式であるボルツマン・アレニウス公式を使い、いろいろな生物の体温を補正して計算する道を開いた。20度、という同一の体温で各種の動物を見た場合、「すべての」動物の代謝量は体重に比例することがわかった。

代謝により体温が維持され、体が大きくなることを考えれば、同じ大きさであれば体温の高い方が早く成長し、体温が同じであれば体の小さい方が早く成長する。

本のタイトルにある、北極の海にすむニシオンデンザメの体温は海水温と同じ0度。最終的には5-6メートルまで成長する。大きくて体温が低いことから成長はゆっくりで性的に成熟するまで150年かかる。

これをもとに各種の生物が成熟するまでの時間と代謝量をもとにそれぞれの生物の「時間」を計算することができる。この「世代時間」は体重の4分の1乗に比例する。ニシオンデンザメの時間は人間の47倍ゆっくりと進む。

人間でも子供の頃は時間がゆっくり進むイメージがあるがこれも子供と大人の体の大きさの違いから時間間隔の差がでてくることを導ける。

これらの論点を背景に著者が行うのはいろいろな生物の代謝量を測ることである。それはニシオンデンザメやホオジロザメやペンギンやバイカルアザラシに発信機を取り付けどのような活動を行っているのかを計測すること。

計測器をとりつけ自動切り離しを行い、信号を衛星経由キャッチすることでデータの入った計測器を回収する、という気の遠くなる作業。

それぞれの生物に計測器をつける作業だけでもスリリング。最後のバイカルアザラシの謎、「陸地に上がって眠る習性がないバイカルアザラシはいつどうやって眠っているのか」について、夜、水中で眠っているというをことつきとめる。水中で動きを止め、自然に沈んでいくときに睡眠をとりまた浮上して息継ぎをする、という行動を繰り返すことが判明した。

本書に収められている情報の豊富さ、体験の稀有さ、はすばらしい。

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2019年05月12日

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