あらすじ
工場排水の水銀が引き起こした“文明の病”「水俣病」について、患者とその家族の苦しみを、同じ土地に生きる著者が記録した『苦海浄土』。「水俣病」という固有名にとどまらず、人間の尊厳について普遍的な問いを発し続ける一冊として、ジャンルに縛られない新たな「文学」として読み解いていく。
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Posted by ブクログ
「苦海浄土」を読み終えたので、こちらを読みました。すでにNHK放送「100分で名著」視聴済。今までも若松さんの本は何冊も読んでいますが、心に染み入ります。そして100分名著の紹介指南役ではとてもわかりやすく理解を深めることができます。印象に残った一文を一つ(沢山ありますが)
”知性が、感情や道徳との関係を振り切って暴走するとき、どれほど悲劇的な出来事がそこに生まれ得るのか、このことを私たちは今日の問題として考えてみる必要があるのではないでしょうか。”
Posted by ブクログ
『苦海浄土』はまだ読んだことがない。まだそこまで手が出ない。熊本という場所に生まれ育ち、小さいころからその病の名前を聞いていて、石牟礼さんの名前もどこそこで聞いてきたのに、ようやくそちらに意識が向くようになったのは最近のことだ。
このあいだ、高群逸枝さんについて書かれた(というか厳密にはそのご主人との交流の部分が大きかったが)本を読んで、石牟礼さんにも最初の一歩というものがあったのだという「親しみ」のようなものを感じ、ようやくすこしだけ近づくことができてきたような気がする。でも、まだ全集を手に取るには畏れ多い。そんな私みたいな人間が入門書としてこの本を手に取るのは非常に有益だと思った。
そして、水俣のことは過去のことでなく、現在のことでもある。これは石牟礼さんの文章からの引用ではないが、30ページ中村桂子さんの文章からの引用として、なぜ水俣病が発生したのかの指摘は、今問題になっている福島の廃水を海に流すかという問題とそのまま言葉を入れ替えれば同じことなのだ。