あらすじ
【第42回すばる文学賞受賞作】――純子ちゃんもあるやろ、お父さんに有罪だしたこと。硝子職人の父はいつの間にか「箕島家」から取り除かれてしまった。工場(こうば)で汗を流して働く以外は縁側から動かず、家族を見なかった父はどこへ行ったのだろう。笑顔が増えた母、家には寄り付かない姉の鏡子と祐子。ときどき現れる「ミシマ」さんという男性。純子だけが母の視線を受けながらずっと家にいる。大好きなレーズン、日課の身長測定、ビーカーで飲む麦茶、変わらない毎日の中、あるときから純子は父の「コンセキ」を辿り始める。日本のどこかで営まれる家族の愉快でちょっと歪んだ物語。
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Posted by ブクログ
4.0/5.0
おそらく知的障害を持っているであろう女性、純子にしか見えていない世界、純子しか気づいていない真実があり、それらが純子視点で語られていて面白かった。と、同時に純子がそれを上手く周りに伝えられないのがもどかしい。
母や姉妹がはなから純子をあまり相手にしていない様子なのももどかしい。
固定概念に一石を投じる小説だと感じた。
Posted by ブクログ
おそらく時系列も前後したりしていると思う。最後まで読むと妙な感慨がある。技巧的な小説ではあると思うのだが途中あっちにいったりこっちにいったりする思考や絶妙な掛け合いが素晴らしい。
Posted by ブクログ
第42回すばる文学賞受賞作品。
「箕島家」は硝子職人の父、 母、三人の娘、鏡子・祐子・純子の五人暮らし。
しかし工場で働く以外は縁側から動かず、家族を見ようとしない父はいつの間にか「箕島家」からとり除かれてしまう。
父がいなくなった途端、母に笑顔が増え、腰痛と肩こりが治り、心労が治まった。
物語は知的障害を持つ純子の目線で繰り広げられて行く。
純子の目に映る父や母の描写は独特だが、時に真理をついていてドキッとさせられる。
全体的に淡々と落ち着いた空気感の中で描かれたある家族の物語。
独特な雰囲気なので好みは分かれそう。
Posted by ブクログ
春が来て、雪を溶かした。白くてきれいだった雪化粧は、泥砂混じりの黒ずんだ景色に変わった。
雪の下から荒れ果てた庭が出てきた。箕島家そのものが押し入れになってしまったようだった。
春が来たというのに、庭の花は一輪も咲かなかった。
(P.134)