あらすじ
現代社会は利己主義がはびこっているように見える。しかし人は、しばしば自分の身を危険にさらしても他人を助けようとし、困っている人を助けたいと願う。この利他的な感情はどこから生まれてきたのだろうか。ヒトを利他行動に駆り立てるものは、本能なのか学習なのか。共感、信頼、情愛はどうすれば育てられるのか――。脳科学、遺伝学、分子生物学の最新知見を交え、ヒトという生物、ヒト社会の本質に迫る。
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Posted by ブクログ
筑波大学の遺伝学の権威である著者が、自己犠牲的な行動がどのようなメカニズムでなされるのかを、生物学の見地からアプローチしている、ユニークな本。
一昔前に、『利己的な遺伝子』という本がありました。
その本では、生物は根本的には、遺伝子の乗り物に過ぎず、遺伝子が後世に引き継がれていくために有利な行動をとるようにプログラムされている、と説明されていました。
なんだか、生きている意味を全否定されたみたいな気がして、薄ら怖い印象を受けた記憶があります。
それはさておき。
本書では、脳の構造、神経細胞の働き、ホルモンの役割、本能と学習の違いなどを、順々に解説して行きながら、最後に『利他的な遺伝子』の解明に進んでいきます。
結論的には、利他性は、社会的な生き物としてのヒトが、その社会によりよく適合していくことが、結果として生存可能性を高めたこと、それと、発達した脳が他者の感情を理解したり、共感したりする能力に長けていたことから、利他性を身につけたということらしいです。
うーん、最後はちょっと弱い感じですが、でも全体としては、久しぶりにサイエンスジャンルの読み物で、いつもと違う脳ミソが刺激されている感覚を楽しめました。