【感想・ネタバレ】消えたフェルメール(インターナショナル新書)のレビュー

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Posted by ブクログ 2019年03月01日

「合奏」盗難を中心に据えながら、フェルメール絵画の流転、フェルメール研究の歴史にもコンパクトに触れてある。
入り口で読んでも、ある程度フェルメールについての知識を持った段階で読んでも、いずれも充実感の得られる好著。
2018.10.10 第1刷 帯付き

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Posted by ブクログ 2019年03月20日

フェルメールの〈合奏〉は1990年3月にガードナー美術館から盗まれて以来行方不明だ。今でこそ有名な画家の一人だが、その当時、フェルメールは一部の人しか知らない画家だったというのは驚いた。盗難の事例紹介や、戻ってきた時に損傷があった作品を修復した際、新たな発見があったことなど、読めば美術がもっと面白く...続きを読むなる話ばかりだった。今、大阪ではフェルメール展の開催期間中だ。本書に登場した、1971年に盗まれた〈恋文〉と1974年と86年の2度盗まれた〈手紙を書く女と召使い〉も出品されているので見てみたい。〈合奏〉も早く見つかるといいな。

p12
ガードナー美術館で盗難事件が起こった一九九〇年、盗まれた一三点の美術品の中の"トップスター"はレンブラント(一六〇六〜六九年)だった。新聞でも、まず一番にレンブラントの〈ガリラヤの海の嵐〉(一六三三年)が画家唯一の海景で、いかに素晴らしい作品かということが書かれた。この時点ではフェルメール(一六三二〜七五年)は限られた人のみに知られたカルト的存在で、レンブラントよりずっと知名度が低かった。
その状況は、一九九五年一一月一二日から翌一九九六年二月一一日まで、ワシントンのナショナル・ギャラリーで行われた「ヨハネス・フェルメール」展によって一変した。フェルメール作品二一枚が一堂に会したこの伝説的な展覧会は世界中で"フェルメール・マニア"を生み出し、〈真珠の耳飾りの少女〉(一六六五〜六七年頃/マウリッツハイス美術館、ハーグ)は、「九〇年代のモナリザ」と称賛された。

p47
FBIによれば、美術品盗難の年間推定被害額は約六○億〜八〇億ドルで、被害額は増大の傾向にある。年間平均五〜一〇万点が盗まれているというが、その中で大きな割合を占めるのはイラク、シリア、アフガニスタンなどの戦闘地域から持ち出される文化財や遺跡からの盗掘品だ。

p62
競売企業は、競売に出す作品とロンドンに本社があるALRの盗難品データベースとを付き合わせる作業を常時行なっている。クリスティーズやサザビーズといった世界的な競売企業にとって、盗品を売るのは不名誉であり、また訴訟の対象になる可能性があるからだ。しかし、これは作品が盗まれた時に持ち主がALRのデータベースに登録していることが前提となる。

p108
フェルメールの作品には、〈恋文〉を含めて手紙をテーマにした絵が六枚ある。年代順に並べると、〈窓辺で手紙を読む女〉(一六五七年頃/アルテマイスター絵画館、ドレスデン)、〈青衣の女〉(一六六三〜六四年頃/アムステルダム国立美術館)、〈手紙を書く女〉(一六六五〜六七年頃/ワシントン・ナショナル・ギャラリー)、〈女と召使い〉(一六六六〜六七年頃、フリック・コレクション、ニューヨーク)、〈恋文〉〈手紙を書く女と召使い〉となるが、〈恋文〉は後期の作品で、一六六九〜七〇年頃に描かれたと推定されている。六枚のうち、最初のほうの作品はシンプルな構図で、主人公の女性の表情もニュートラル、背景に掛かっている地図や絵、室内の小道具も最小限だ。オランダの風俗画が、様々なモティーフの選択や小道具による寓意で、当時の理念や教訓を伝えようとする媒体だったことを考えると、これらのフェルメールの絵には不思議にそうした要素が少ない。それが一七世紀に生きたにもかかわらず、フェルメールが二一世紀の今でも愛されている理由の一つといえるだろう。
ところが、その傾向は〈女と召使い〉あたりから変わる。〈女と召使い〉〈恋文〉〈手紙を書く女と召使い〉の三枚は、いずれも女主人公と召使いが登場する絵柄だが、召使いのもの言いたいげな表情、それに答えるかのような女主人の上目遣い、背景の地図や絵、そして楽器、箒、スリッパ、封蝋などの小道具にも、すべて恋の寓意画としてのほのめかしが満載だ。オランダの一七世紀の風俗画という典型的ジャンルに回帰してしまっているのだ。

p142加筆された箇所は、手紙を書く女の机の前の部分だった。床の上にはクシャクシャに丸められたと思われる紙と小さな本のようなものが落ちている。その左側の濃紺のタイルの部分がオリジナルではない絵の具で上塗りされていた。絵の具を取り除くと、下から小さな赤い円と灰色のチョークのような小さな棒が現れた(現在流通している画集に載っているのは、この修復後の画像だ)。
(中略チョークのように見えるのは封印に使う棒蠟で、赤い円は手紙を封印していた蠟だった。

p144
召使いが女性に宛てた手紙を持ってきた。その手紙は折りたたまれて赤い封蠟で封印されていた。彼女はその円形の封蠟をはずし、手紙を読む。そしてその内容に気分を害し、丸めて捨てた。それだけではない。机の上に乗っていたものすべて(赤い円形の封蠟、恋文の例文集、そして返事に使われる棒蠟)も払い落とした。そして、すぐに返事を出したいと思って、召使いを待たせて一心不乱に返事を書いている……。
見た目は静かな〈手紙を書く女と召使い〉だが、赤い円が出現したことによってフェルメールの絵としては珍しい感情の起伏が隠されている可能性が出てきた。

p186
この時、絵の状態を一緒に点検したマウリッツハイス美術館のユルゲン・ウェイドム修復技術が、手紙を書いている女の左目に針でつついたような小さな穴を発見した。そしてこの鍵穴の発見が、フェルメールの絵における透視図法技術に関するウェイドムの仮説へと発展していく。

p187
ウェイドムは〈手紙を書く女と召使い〉で発見した針穴と同じような穴が、フェルメールの他の一二枚の作品、〈絵画芸術〉〈牛乳を注ぐ女〉〈兵士と笑う女〉〈音楽の稽古〉(一六六二〜六三年頃/英国王室コレクション、ロンドン)などにも存在していることに気がついた。そして彼は、それが実際に針を突き刺した跡であると仮定したのである。

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Posted by ブクログ 2019年08月20日

フェルメールにはミステリーがよく似合う。過去の盗難事件を考察することで、改めてフェルメールの魅力を知ることのできる一冊。

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