あらすじ
「認知症になって記憶が失われても、心が失われるわけではない」とはよく聞くフレーズだが、その「心」とは一体どのようなものなのか。本書ではそれをできる限り具体的に示したいと考える。心の内を知り、その人の内なる世界を尊重することが、認知症の本質である「生活の障がい」と「孤独」の軽減につながるからである。最新の研究成果に基づく、会話を増やすためのツール「CANDy」とは。認知症の人の心の読み解き方を解説。
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Posted by ブクログ
久しぶりに実用書として手元に置いておきたい本に出合えました。
ここまで深く認知症の人のことを考えたことはなかったので、頭をガーンと殴られたような感覚でした。
認知症にも種類があり、また、同じ種類であっても人によって出現の仕方、行動パターンも違い、10人いたら10通りの認知症があるとは知っていましたが、当人たちの孤独、不安がとても伝わってくるようでした。
私たちは、一般的に、認知症の症状を目にしても「困った行動だ」「何度も言ってるのに」という自分目線で見てしまいがちになりますが、反対に当人にとっては、どのような状況に置かれてそのような行動をとっているのか、ということが例を挙げながら詳しく解説されており、読めば読むほど、症状を抱えた人たちの気持ちに成り代わって自分の身を置いてみると、「こんな行動とっても仕方ない」「自分でもそうなるかも」と、相手目線に立つことができました。
私たちが良かれと思ってやっていることも、実は混乱を引き起こす可能性があること、認知症があるためにあらゆる機能低下を引き起こしていると思うのは間違いで、関わり方によって、使っていなかった能力を引き出すことができるということも分かりました。
周囲に認知症の人がいて、関わる必要のある人には是非一読していただきたい1冊です。
私も、もしいつか家族が認知症になったら、読むよう勧めるため、そして自らが認知症になったら私にかかわる人たちにこの本に気づいて読んでもらえると嬉しいかな、と手元に置こうと思いました。
何より必要とするのは、コミュニケーション。
たとえ簡単な内容でも、会話をする、相手の話を聞くというのは、楽しく生き、心を許せる人が周りにいる、という安心感を与えることができるのですね。
Posted by ブクログ
そうか、こんな風なのか。そりゃ大変だ。うーん。付き合うというよりそちらに合わせるという提案に、ほとほと同意するがかなわない。
また読もう。感想はその時。今は無理。
Posted by ブクログ
認知症の祖母の心の中を知りたく読んだ。
認知症が進むと今まで無かった様々な変化が現れるが、その要因を知る・考える上でヒントになる。
勉強になったのは、認知症からくる行動の理由を予想し(例えば徘徊する場合どこに向かうか?等)対応策を取る手法がビジネスの問題解決5w1hに似ていること
行動が、どの場面、時間帯、状況で起こるか把握し、
仮説を立てて、対応を考える。介護者には大変な対応だが、それが出来ると無用な怒りや苦労が減ると感じた。
Posted by ブクログ
読めば、優しくなれる本ではないか。認知症の人に対してだけでなく、すべての人に対して、である。
本書においては、認知症とはどういうものか、認知症の人には世界がどのように見えていて、何が起きているのか?ということから、我々の目には奇異に映ったり、つい突き放してしまう、所謂「問題行動」の背景や、その行動に至る心の内、どのように接したら良いか?を解説する。
読み通して、認知症とは、とにかく、孤独に追い込まれてしまいがちな、怖く、また、気の毒な病気なのだなと感じた。自分だけが違う世界に放り込まれてしまったような怖さである。
特効薬もない現状では、本書のように、介護者や周りの人たちが認知症を理解し、相手の状況を考慮し、心情を想像し、工夫してコミュニケーションに取り組み、共に生きていくことが一番の支えなのであろう。
冒頭に、認知症の人に対してだけでなく、と書いたが、様々のことを知ったうえで、相手の心情を想像しながら、共に生きていくこと。これは例えば障害を持つ人、子供を持つ人、老若男女、どの人に対しても重要なことである。過度で悪い意味の「個人主義」(自分さえ良ければオールオッケー)とでもいうべきものが蔓延している現代においては、相手に対する想像力、また、その想像力を働かせるためのバックグラウンド(教養)が特に重要な意味を持ってくると感じる。
読書体験というのは、そういう、自分の知らない世界に生きる相手に対する想像力、そして教養を培ってくれるものである。
本書を読んで、実にいい読書体験ができたと感じる。
Posted by ブクログ
2022.6
4章の認知症の人の苦しみを知るは、何度も読み返したい。
以下は抜粋したもの。
脳機能が上がることで、認知機能の低下をある程度防げるが、計算ドリル等に認められる効果は「認知機能の低下予防」であって、「認知症予防」ではない。
また、「意欲障がい」が軽度認知障がいや、アルツハイマー型認知症の初期に典型的に起きる。
…今まで楽しんでやっていたことも上手く出来なくなる苦しみは想像するだけで悲しいな。
認知症の人は、自由が奪われた腹立たしさ、自己決定できないつらさが日常のすべてにわたって起こっている。
介護者はどこまで、認知症の人の身になって、相手の気持ちを和ませながら、何度も同じことを告げたり、時間をかけて落ち着くのを待ったりすることが大切。
Posted by ブクログ
本文より抜粋。
認知症になれば、運転に適さなくなります。しかし、長年運転してきた人にとって、車は単なる移動手段ではありません。社会人になって、初めて買った車。その車に恋人を乗せて行ったドライブ。失意の中、一人車を走らせた夜の道。子どもができて、家族で遠出をしたときのこと。さまざまな思い出が、車には詰まっています。(中略)車を運転できなくなるとは、自由を失うことであり、幸せの象徴を失うことでもある。
老いとは、プライドとの闘いです。老いて弱っていく情けない自分と、人生の荒波を乗り越えて生き抜いてきた誇り高い自分。2つの自分の間で揺れ動き、引き裂かれそうになって、必死に闘っているのです。
認知症の人と介護する人は、一緒にいるのに違う世界、違う現実を生きています。認知の違いがズレを生むのですが、このズレが、認知症の人のアイデンティティを崩壊させ、孤独にしていきます。
(・物忘れなんてしない!あんたが財布を盗った!
・ここは私の家!私が責任を持って回してきた!
・こんな人たちと一緒に住むなんて!
→周囲から批判されたり、指図されたりする。多勢に無勢でそのズレによる溝は埋まらず、患者の描くアイデンティティが崩れてしまう)
かんそー。
認知症の人の世界を尊重すること。
そして彼らが何も自発的にできないと思うのではなく、まずは笑顔で接することから始めよう。それに同調して楽しくなってくれるから。そうすれば「認知症になった。これから私はどうなるの?」「上手く会話が出来ない」「この人は誰?」「ここはどこ?」という底知れない不安が少し、溶けてくれる。喜びの顔だけは、表情から心がわかりにくくなった脳にもちゃんと伝わるから。不安を取り除く、それが寄り添いの前提になるとわかった。
とても不安なんだよな、孤独なんだよな。
ちゃんと認知症の人たちが何をされたら嫌なのか、どうされたら嬉しいのかを学ぶ。「周囲」がそれを理解しようと努力する。まずは笑うこと。これならすぐにできる。でも続けることは難しいかもしれない。それでも、楽しいと感じる心を、人間は受け継いできたし、彼らが私たちにプレゼントくれたのだから、今度はこちらが笑って、彼らが笑ってくれるのなら、素敵だと私は思う。
本文はもっと具体的な、事例に基づく説得力のある文章です。私のかんそーのような思想を爆発させたものではない(悪しからずご了承)。認知症に寄り添うための、温かく的確な知識が載せられています。是非、読んでみてください。
Posted by ブクログ
察して適切に行動したり自分の行動を修正したりできない
・オレオレ詐欺に引っかかる一因
・MMSEのように左脳を使うテストは正常でも脳全体を使用する社会的認知が低下しているケースがある
アイデンティティとは、「自分とはこういう人間だ」と表明しそれを他者も認めること。認知症患者と介護者は、この関係性が成り立たず、一緒にいるのに違う世界を生きている。それが認知症患者のアイデンティティを崩壊させ、孤独にしていく。
Posted by ブクログ
私は高齢者の方が多く住む町で接客業をしていますが、たまに認知症の方が何度も来店し何度も同じことを尋ねてくるので仕事が進まないことがありました。しかし、この本を読んで認知症の人とそうでない人の見る世界が違うことが分かってよかったです。
私たちから見ると何度も来店しているのでイライラしてしまい突き放すような言葉を言ってしまいますが、認知症の方から見れば何度も来店したことも尋ねていることも全て忘れてしまっているので店員にキツイ言葉をかけられていることを理解できず混乱し怒ってしまったのかなと思いました。
私たちができることは認知症の方と店員の間だけで解決するのではなく、地域のサポートセンターなど専門知識のある方たちと連携して助け合わないといけないのかな思います。
Posted by ブクログ
認知症の方の中で何が起きているのかを知りたくて読みました。
医学的な角度から、脳の中で何が起きていて、ご本人はどんなふうに状況を受け止めているのか、まわりにはどう見えているのかが紹介されています。
高齢者に限らず、誰かの認知機能が気になったときに手に取ると助けになりそうです。評価の仕方、着眼点が紹介されているので「使える」内容だと思いました。
Posted by ブクログ
心理学者の著書です。
二冊目でしたが読み応えはあり認知症を予防する事は不可能。また二人に一人は発症するだろうとも…
主に患者に対する対応が丁寧な事例を挙げて書かれているが前回のものもかなり分かり易かったと思う。
情報は日々変化しているようであり知識として学んでおく事は自分にとっても(自分がいつ発症するか分からないし…)必要な事と感じている。
介護する人の助けになる本も書いて欲しい。
Posted by ブクログ
認知症の原因や治療方法についてだけではなく、「認知症の患者の立場」からの感じ方を改めて知らせてくれた。書かれている内容についてというよりは、その新たな視点を与えてくれたという意味で、非常にためになった。
Posted by ブクログ
前半の認知症の指標の評価はあまり関心がなかったが、後半の実例はわかりやすくて良かった。介護される人の負担感やその解消方法等、自分では気付けないことがたくさんあり、勉強になりました。
Posted by ブクログ
認知症の人が見ている世界が少しだけ見えた気がします。実際に寄り添って暮らすのは大変なことだと思いますが、少しでも理解できたら、接し方も変わると思います。
Posted by ブクログ
認知症の人のもどかしさを知ることが、円滑なコミュニケーションを図る第一歩になる。
認知症になると、怒りや失望、恐怖の感情は伝わりにくい。
が、喜びや笑顔などのポジティブな感情は8割以上伝わる。
認知症のコミュニケーションの特徴は、他者の心理を察して適切な行動をとることかできなくなる。(社会的認知の低下により)
自己決定が次第にできなくなり、主観的な自己決定感も失われる。(自己決定できること=自律、主観的な自己決定感=自律性)
認知症になると、自分だけで楽しい気持ちになることができにくくなる。
テレビを見て楽しんだり、趣味や会話から喜びを拾い、自分で自分を楽しませられなくなる。
まずは、笑ってみる!
楽しいから笑うのではない。情動伝染を利用してみんな笑顔に、楽しい気持ちに!
Posted by ブクログ
認知症の特性や見ているもの、苦しみなどの心の中を知ることにより、自宅でどのようにかかわり暮らしていくかを考える。いつもそばにいるとわかっていてもなかなか上手にできないが・・・。
Posted by ブクログ
もう少し認知症の人が見える世界の感覚や
心の中の世界が分かるかなと思いましたが
少し期待よりは違った。
でも、どういう風に感じるのかなどは詳しく理解する事ができた。