あらすじ
世界から取り残されてしまった日本のアートシーン。芸術は今、美術館の壁を埋めるインテリアとなり、若手アーティストは、地域おこしの中で楽しく過ごす刹那的な存在となった。この状況に苛立つ当代随一のアーティストが自らの奥義をすべて開陳。行動せよ! 外に出よ! 世界で闘い続けてきた芸術家が、現状を変革したいすべての人へ贈る実践の書。
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Posted by ブクログ
・人間があるフォーマットの中でプレイする時に出てくる表現域が期待値を超えた時、それは芸術的な表現だと言える。
つまり、あらゆるジャンルにおいて芸術は成り立つ。
・鑑賞の4要素
「構図」「圧力」「コンテクスト」「個性」
・視線誘導の凄さ
・作品に天才性がなくても、歴史の重層性さえあれば現代美術は可能だという発明が現代美術だ。
・圧力とは人生がかかっているか。
・個性すらハイコンテクストに作り上げていくもの。
・玄人の絵を見る人は作品が最低限絵画になっているのかを見る。
絵画とは、画面四方に作者の支配力、画面を支配する力がきちんと及ぼされているか。
・ルールを知り、それに従いながら、使いこなすことで初めて得られる自由がある。
・1番高度な作品は、何もしないで構築されるもの。
・コンテクストというのは、その作品が歴史、状況の中でどういう意味を重層的に持っているかを指す。
・アーティストの目的は人の心の救済。芸術の世界で取引されているのは人の心。
ここは、圧力を指す。
・自分が生まれてきていずれ死ぬ、自分が生まれてきた事が無意味であるということに気がつく瞬間に、それでも無意味ではないのかもしれないと自分を納得させるためにお話を作らないと生きていけない。
ほとんどの宗教はそういう構造を持っている。
・めちゃくちゃな冒険をしなければ未来は作れない。
・前例のないコンテンツを作るには、コンテンツ全体の位置づけ、歴史を知る必要があるのではないか?
・西洋における現代美術のコンテクスト
「自画像」「エロス」「死」「フォーマリズム(歴史)」「時事」
・作品鑑賞の舞台を作るのも立派な作品制作。
・A級かB級かの勝負の分かれ目になるのは
①文脈の説明
②理解者の創造
③ネットワーク
・芸術というのは生き残った結果そのもの。
生存確率の低い、しかし奇跡的に生き残ったものが芸術作品であり、芸術家。
・
Posted by ブクログ
芸術は自由なんかではなく、究極にマーケティングを考えられた上で作られているものだと知った。現代アートの見方がわかった。目から鱗でとても勉強になりました。以下はメモ。
- [ ] 現代アートとは「歴史の重層化」、単なる自由を現代は求めていない
- [ ] 芸術で大事なのか「構図」「圧力」「コンテクスト」「個性」、コンテクストというのはその作品が歴史、状況の中でどういう意味を重層的に持っているのかということ。そしてそれが串刺しになっているほど良い
- [ ] 西欧における現代美術のコンテクスト(好まれる≒評価される要素)「自画像」「エロス」「死」「フォーマリズム(歴史)」「時事」
- [ ] ダミアンハーストは死をモチーフにあらゆるものをホルマリン漬けにした
- [ ] しかし、それでも、ぼくは「美」のために生きたい。命の時間よ、追いついて。
Posted by ブクログ
14年ぶりに再読。当時の読みがいかに浅かったのか思い知らされた。ARTの話を超えて、「仕事にどう打ち込むか?」「クリエイティブにおける個性とは何か?」の秘密を、暴いてくれている。
本書で解かれる「ルールを知り、それに則ることから始めた上で、壊して、新たにルールをつくっていく」という創作プロセス。ARTに限らず、あらゆる商業クリエイティブ、もっと言えばあらゆる企画仕事に、深く通じる真理。
そして本書の魅力は、そんなルールの村上隆流の読み解き例として、刮目できること。決して教科書的な論点整理だけではでない切り口が目鱗すぎて、それ自体もまた、企画仕事の大いなるヒントになっている。
門外漢で存じ上げぬですが、本書を含めた村上隆の一連の美術家育成の取り組みは、ご本人が大失敗だったとよくメディアで言っているが、本当にそうだったのだろうか?だとしたらなぜそうだったのか?きちんと研究されてほしい。
誰かやっている機関やプロジェクト、ないんだろうか?村上隆さん御本人じゃなくても、誰かに意志は継がれていないのか?勉強したい、知りたい。
Posted by ブクログ
正直、村上隆という人には良いイメージがなかった。「オタクの表象の上澄みのいいとこ取りで商売しているエセ芸術家」だとオタクのひとりとして軽蔑すらしていた。しかし、私がアートシーンに興味を持っていることを知った知人から薦められ、興味本位でこの本と「芸術起業論」の二冊を購入してみた。起業論のほうは今読んでいるのでこちらから。
一読して、かなり引き込まれた。なんだか私、村上さんを誤解していたみたい。村上さんはルックスも独特なので(すみません)誤解されることが多いんだろうな…と気の毒にすらなった。この本は、それくらい真摯に現代アートシーンを解き明かしたわかりやすい名著だ。村上さん自身が買われる作品というのが「オタクのようでオタクほどもクオリティが高くない…ちょっと下手な作品。そんな作品を見るとシンパシーで癒される」と書いてあり、意外なほどのピュアな魂に驚いてしまった。
正直、もっと傲慢で俺様テイストの鼻持ちならない文章なんだろーなーとあまり期待していなかったのだか、村上さんが先人(特にアニメーターの金田伊功氏)に払う敬意とリスペクトは素晴らしいじゃないか!と思った。あと、かなり努力家で苦労人のようで、パブリックイメージとのズレにいろいろ目からウロコの一冊だった。
現代アートの仕組みと仕掛けについて、絶好の教科書だと思うので興味ある方にはぜひ読んでいただきたいです。
Posted by ブクログ
日本人芸術家への指南書。同氏の「芸術起業論」の続編だが、未読でも問題ない。日本人が全く分かっていないARTを構想→鑑賞→作成→発表の4ステップそれぞれで説明。
私は芸術家でもなければ、ちゃんと芸術を見たことがない人間で(ウォーホールについても聞いたことがあるな程度)、芸術というものを理解する入門書として読んでみた。
イギリスやアメリカから始まった現代美術ではルールが存在しそれに則ってハイブロウカルチャーとして作品が作られていること、それが構図・圧力・コンテクスト・個性の4つであること、それを持った作品をキュレーター・ギャラリー・画商が作家の物語をさらに付加して売ること。
また、読んだ後に調べたら、氏は最近はYoutuberとのコラボも行っているそうだ。氏のアンテナの鋭さは率直に素晴らしい。氏の作品も鑑賞できるようになっていきたいと思った。
そのために、まず素人としては現代美術までの美術史を勉強しようと思う。芸術という日本人がてんでオンチな世界へのガイドブックとして、読んでよかった。
Posted by ブクログ
戦略、戦術を開示して妬むヤツはやってみろと
美術史を研究し、自分を見つめて文脈を変える
十分評価されているが、死後どれだけ長く評価されるかがホントウの価値
企業を創業してトップに上り詰めた人が後継者候補に読ませたくなる著書だと思う
Posted by ブクログ
芸術家や創造活動で生きている人に響く良書である。個人的には、コレクターにおいても必読書と言えよう。
さて、本著では、芸術活動で日本から世界まで生き残るために必要な村上隆氏の思考と実験の軌跡を学べることができる内容である。
現代アートには必ず作品には固有の文脈が存在し、欧米(世界基準)で戦うために生き残るために学習し続けることを示唆している。これは全ての創作活動に通づることである。あらゆる芸術家の作品には何かしらの影響を受けた作品は必ず存在していることを自覚し深く学び、哲学を養い、説明ができること。そして、作品を単体でもその言葉(説明)を内包し表現していることであろう。
現在(2025)では、村上隆氏の作品だけの側の模倣をした二番煎じの作家が多く見られる。ストリートアート、ポップアートでも日本市場では海外芸術家の模倣をする日本人作家・芸術家もいて過去に幾度も炎上していることを知らなければならない。
必ず、文脈が必要であり、独自性があり、マーケティングが必要である。
無名有名問わず、世界は広い。売れっ子だろうが天狗になってはいけない。多様な芸術家や歴史、背景、時代を常に学び続けることが重要である。