あらすじ
結婚なんて私には縁がない……。愛も夢も、あの日に封印したから。
きっちり結った髪に、灰色のさえないドレスの住み込み家庭教師――そんなソフィにも、人生でただひとり、心から愛した人がいた。8年前、愛するピーターの父に、住んでいた屋敷を出ていくよう迫られ、ソフィはやむにやまれず彼と別れて、自活する道を選んだ。彼と別の女性の結婚予告が出されたのを知り、あまりにつらかったから。以来、名前を変え、結婚もあきらめて、ひっそり暮らしてきたが、雇い主から、母のいない娘のためにと名ばかりの結婚を提案された。愛なんて無縁の私が結婚? でも、かわいい教え子のためなら……。一歩踏み出すべきか迷いつつ迎えたクリスマスイブの前夜、吹雪のなか屋敷へと向かってくる人影に気づき、ソフィは声を失った。ピーターことシルボーン伯爵の冷たい瞳が、そこにあったのだ!
■物心ついたときに母は亡く、父とも死に別れたソフィの人生は孤独でした。唯一愛したピーターとの恋からも泣く泣く身を引いた彼女に幸あれと願うばかりですが、彼との再会は穏やかではなく……。エリザベス・ビーコンが描く、出色のシンデレラ・リージェンシー!
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
素敵なお話だったと思います。
この物語りをひと口で言うなら、「恋人たちの愛の再生」の物語りです。
若き日、賭け事で多の額借金を拵えた伯爵である父親に引き裂かれた若い恋人たち、それが主人公のソフィであり、現シルボーン伯爵でした。
伯爵はソフィが自分を捨てたのだと思いこんでいたのに、真実は彼の父親がソフィに息子は別の女性と結婚する-と、伝えたからこそ、ソフィは出ていったのです。
8年もの間、ソフィを憎みつつも憎みきれず求めていた伯爵、身分を隠して准男爵の屋敷で三人の娘たちの家庭教師として過ごしていたソフィ。
クリスマスを控えた雪の日、伯爵の乗った馬車が激しい雪に立ち往生したことで、二人の交わるはずがない人生が再び交わります。
予期せぬ再会、二人の間に燃え上がる愛憎の混じり合った恋の炎。
クリスマスの魔法は、二人の間に降り積もった複雑な感情から二人を解き放つという素敵な魔法をかけてくれました。
結局のところ、二人ともに表面には憎しみという氷があったとしても、心の奥底ではずっと互いを激しく求め合っていたからではないでしょうか。
ソフィが亡国の王女だったという設定には、いささか驚いたし、かなり突拍子もなく明らかになったので、その辺りはストーリー展開としては不自然な気もしますが、、
また、タイトルの「シンデレラ」はソフィが王女様なら、ちょっとふさわしくないようにも思います。
ですが、それは些末なことかもしれません。
長編ですが、語られるのは伯爵が雪でソフィの元に迷い込んでからクリスマス過ぎまでのわずかな期間の出来事です。
二人が表面は憎しみ合って居る風に見えながら、その実、惹かれ合っている様子が切なく滲み出るように伝わってきました。
最後はめでたく長年の誤解も解け、晴れて結婚式のシーンで終わります。
クリスマス間近のこの季節にふさわしい、素敵なハッピーエンドの物語りでした。