【感想・ネタバレ】神の名前 王国記 VIIIのレビュー

あらすじ

朧の息子・太郎がついに外界へ!
太郎に続いて、次郎、花子と次々に〈神の子〉が生まれ、膨らみつづける「悠久寮」。やがて16歳になった太郎は、ジャンとともに京都を旅するが、ここでも出逢う人びとを次々と魅了してゆく――興奮のシリーズ第八弾!

※この電子書籍は単行本『神の名前 王国記VII』を底本としていますが、電子書籍版の通し巻数は「VIII」になります。

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Posted by ブクログ

太郎。
この市役所の記入例みたいな名前をつけることによって巧妙に獲得した普遍性。
シンプルが故に強固な記号。
朧が命名したことになっているが、実は太郎自身が付けさせたんじゃなかろうか。

絶妙のタイミングで見せる奇跡。
大文字山での垂訓。
視覚と言葉を駆使してゆっくり周到に包囲網は拡がる
恣意的なのか否なのか。

キリスト教を挑発するかような、近親相姦、そして(非)処女懐妊で産まれた普通の子。
花子の役割は。
神は血統。
ならば、次郎はなぜ産み落とされたのか。

王国は着実に動きだした。
またまた先が楽しみ。

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

芥川賞受賞の「ゲルマニウムの夜」からつづく王国記シリーズの第8作です(王国記というタイトルは2作目からなので、8作目だけど王国記7になります。文庫版は1作目から王国記となっているので作数と番号が一致してます。ややこしい。)

原始教団が成立した前作あたりから主人公の世代交代がゆるやかにはじまったかな、とおもわせるものがありましたが、ここにきて急激に初期の人物たちがフェードアウトしています。
初期の人物たちの行動原理は、神という存在に対する疑念や対抗心といったものを軸に動いてきたように思います。そういう対抗すべき存在が明確にいるから、彼らがとるべき行動も、暴力や権力といった明確な”カタイ”方向へと流れていっていました。神への対抗という原理は、本来はより個人的な嗜好や信念をより大きな概念へと転嫁することで正当化するということなんでしょう。そうした変換を経ないことには正当化が困難で、だからこそ非常に思弁的で理屈っぽい。しかし、神という対抗軸を設定してしまったことで、かえって神の存在から抜け出られなくなっていた世代のように思います。

一方で、新世代の主人公たちは、個人的な嗜好や信念、悩みを無理に一般かすることはなくて、あくまでパーソナルな問題として捉えている。だから、神への対抗を必要とせず、したがって神の存在を前提としなくともやっていけている。だから、そこで行使される力は、非常に不安定な神秘的な力であり、コミュニティーとしての緩やかなつながりであったりと、より”やわらか”な方向性をもっている。

というような感じで、だいぶ全体の雰囲気も変わってきたのですが、個人的にはやはり初期の人物たちがこのまま簡単にフェードアウトするようには思えないし、新しい世代の人物たちの紐帯もこのまま順調にはいかずやがてはほころびだしそうな印象をうけます。

いよいよ本格的に新しい話が動き出した感じですが、これからどういう方向にいくのかまだまだ見えてきません.次回作がどのようになるのか楽しみです。

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2010年09月12日

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