あらすじ
入社10年の風間京太は、気難しい社長の出張に随行を命じられた。お眼鏡に適えば、大出世。機嫌を損ねたら、お先真っ暗。社長は現地にいる元愛人との逢瀬を企んでいるが、夫人からは二人の密会を阻止せよ、と厳命されており…。風間の選択は!?(「随行さん」)ほか、サラリーマンの哀歓を描く全10編。不条理な職場や理不尽な上司に喘ぐ、若い読者こそ必読。働き方のヒントは、昭和の名作にあった!
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流暢な英語で通訳ができるのに嘱託で職員になれない茂木さんの話が『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で取り上げられており、興味深く『英語屋さん』を手に取ってみた。
実際には『英語屋さん』だけではなく、戦中戦後の昭和を生きる主人公・風間京太のサラリーマン生活が10編にまとめられている。入社10年目で命じられた上司の出張随行から始まり、出世していく風間京太の身の周りで起こる、職場ならではのトラブルやサラリーマンの哀歓を面白おかしく描いている。
とても読みやすく現代との働き方を比較したい人、昭和の風潮を追想したい人にはぴったりの一冊です。
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富山市石倉町を散歩中、川辺の案内看板に、この地域出身の作家として、源氏鶏太さんが紹介されていたのをきっかけに読んだ。
昭和25年頃、大阪、風間京太氏のサラリーマン生活。社員は皆それぞれの仕方で戦争を経験し、またそれぞれの仕方で会社勤めに戻っている、そのような時代背景。
収録作品のうち、「もう手遅れ会」が大好き。
京太氏が、書庫で探し物をする中で、過去の起案文書に押された先輩社員のハンコから、その先輩の生き様などなどを思い返すシーンに、じんわり涙が出てきた。私はこの主人公の、同じ会社で働く、時に面倒な、時に癖のある人々への対し方が、とても好きだ。
自分は職場の人々に、「かかわらない」という気の遣い方をよくしがちだ。でも京太氏は、しょうがない先輩だなーと思いつつも、がっつりかかわる。仲間と協力して、激励の品を先輩社員に届けたり、「目録さん」をお嫁さんと引き合わせたり。そういう、人とのかかわり方も、とってもいいなと思った。
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戦後日本を舞台に、サラリーマンの悲哀を描いた短編集。
本屋で見かけて購入。もちろん現代から見れば時代錯誤な内容もあるが、戦後直後のサラリーマン風情が思いのほか共通項があることに驚く。
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源氏鶏太の連作短篇集『英語屋さん』を読みました。
1950年代に「サラリーマン小説の第一人者」と呼ばれた源氏鶏太の作品を初めて読みました……子どもの頃、父親の書棚で背表紙を見た記憶がありますね。
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自分だけがつらいんじゃない! と思えることで、なんとか頑張れています。
僕と同じ30代にオススメ! 担当者K
入社10年の風間京太は、気難しい社長の出張に随行を命じられた。
お眼鏡に適えば、大出世。
機嫌を損ねたら、お先真っ暗。
社長は現地にいる元愛人との逢瀬を企んでいるが、夫人からは二人の密会を阻止せよ、と厳命されており……。
風間の選択は!?(「随行さん」)ほか、サラリーマンの哀歓を描く全10編。
不条理な職場や理不尽な上司に喘ぐ、若い読者こそ必読。
働き方のヒントは、昭和の名作にあった!
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文藝春秋が発行する月刊娯楽小説誌『オール讀物』等に1950年(昭和25年)から1969年(昭和44年)に1950年(昭和25年)に掲載された作品を収録したサラリーマン小説……1951年(昭和26年)上半期の直木賞受賞作『英語屋さん』を収録した短篇集です。
■随行さん
■威風堂堂
■目録さん
■一寸の虫
■英語屋さん
■颱風さん
■もう手遅れ
■鏡の中の顔
■流氷
■料亭嵯峨
■解説 北上次郎
戦後間もない昭和20年代から30年代の日本の会社を舞台に、主人公のサラリーマン・風間京太の日常と、彼を取り巻く個性豊かな人々の悲喜こもごもを描いた連作短篇集……物語は、入社10年目の風間京太が、気難しい社長の海外出張に随行を命じられる「随行さん」から始まります、、、
この出張が風間の運命を大きく変えることになる一方、シリーズ全体を通して、風間が同僚や上司、取引先、そして家族との間で繰り広げる、時にユーモラスで、時に心温まる、そして時にほろ苦いエピソードが描かれます。
表題作「英語屋さん」では、卓越した英語力を持つものの、不器用で人間関係をうまく築けない嘱託社員・茂木祖一郎が、リストラの危機に直面する姿が描かれます……彼の専門的なスキルと、世渡りの下手さの対比が鮮やかで、彼の運命がどうなるのかが物語の大きな焦点となります。
サラリーマン・風間京太の日常と、彼を取り巻く個性豊かな人々の悲喜こもごもをユーモラスに描いた連作短篇……本作で描かれているのは、戦後間もない昭和のサラリーマン社会なので、現代の企業での働き方とは大きく異なる部分が多いのですが、そこで繰り広げられる人間模様や不条理な上司、理不尽な組織の中で奮闘する姿には共通する部分があるんじゃないかと思いましたね、、、
特に昭和生まれの私たちの世代には、懐かしさとともに共感する部分が多かったように思います……戦後の混乱期における会社の様子やお金の価値、当時の人々の暮らしぶりが生き生きと描かれていることも特徴で愉しめましたね。
本作でユーモアを交えて描かれている、厳しさの中に温かさがある人間模様は、現代の企業社会に必要な要素なのかも……愉しみながら考えさせられました。
Posted by ブクログ
タイトルと表紙絵に、シュールな面白さを感じて、BOOKOFFでネット注文し、入手しました。
内容は、「ザ・昭和のサラリーマン」といった感じで、現代の働き方とは、全く異なった仕事への姿勢を読み取ることができて、とても新鮮でした。
現代であれば、女性蔑視としか捉えられない言動もいくつかでてくるのですが、当時であれば、違和感がなかったのだろうと思いました。70年ほどで大きく世の中の価値観が変わったのがよくわかり、興味深かったです。
一方で、サラリーマンとして普遍的な大事な考え方も随所に描かれており、処世術の勉強にもなったと思います。
短編集で、サザエさんの話を何話か見たような感覚なので、ライトな小説を探している方にはおすすめの一冊です。
Posted by ブクログ
昭和初期のサラリーマンたちの悲哀を描いた作品であるが現代風な文言で物語を進めているので大変読みやすい。
短編集であるので良い意味で時間潰しにもってこいの作品だと思う。
Posted by ブクログ
入社10年目の風間京太の会社での日々や、会社で出会った人たちのことを綴った短編集。現代なら通用しないであろう理不尽な慣習も含め、昭和のサラリーマンの姿が描かれている。
本のタイトルにもなっている"英語屋さん"は、通訳として採用され、その実力は認められながらも、癖が強く、嘱託職員のまま定年を迎える予定の茂木さんのことを描いた話。
茂木さん同様、嘱託職員として入社しても、要領よく正社員になっている人もいる中で、内心面白くないと思うが、自分の仕事には責任と自信をもって取り組み、重役とも互角にやり合う。世渡りは下手でも、こういう人が社会人としてカッコいいと思う。